096 フィリップの最強魔法
フィリップが夜の街に出るようになってひと月半。一通りお店を把握したフィリップは、お気に入りがいる店に通うようになっていた。
仮病を使った夜型の場合は、週に2日はクリスティーネの部屋に顔を出し、マッサージをやってから相談を聞く。週に一度は元気なフリをしてダグマーの趣味に付き合い、空いた時間は娼館やナンパした子と楽しむ。
仮病を使っていない昼型の場合は、週に3日はダグマーの趣味に付き合い、2日は夜に少しだけクリスティーネに会いに行く。残り2日は我慢できなくて娼館に行くので、授業は寝てばっかり。
そんなルーティンであったが、2学期の中間試験が終わったら少し変更。
「ダンジョンは久し振りだな~。
そう。フィリップの楽しみは他にもある。夜の街は制覇したから、ダンジョン制覇をしようと地下12階のセーブポイントまでやって来たのだ。
「そういえばレベルいくつだったっけ? ステータスオープン! ……ん??」
夏休みは丸々クリスティーネ関連に費やしていたから、フィリップもレベルのことは忘れていたので確認したら、最後に見た記憶と違っていたようだ。
「あれ? 確か48で、もうすぐ50だと喜んでいたはずなんだけど……なんで58??」
まさかのレベルアップに驚くフィリップ。先に進まずにその場に座ってダンジョンノートを広げた。
「あ、やっぱり僕の記憶は間違ってない。でもなんで??」
筆まめなフィリップは、最後にレベルアップした日にちとレベルを書き記していたのだが、この短期間で10も上がるようなことなんてしていないので、考え込んでしまった。
「もしかして……クーデター? 普通の訓練でも経験値が入るんだから、クーデターを成功させると大量の経験値が貰えるとか? ほとんど僕がやっていたから、かもしれない……クリちゃんも上がっていそうだけど、聞きづらいな~」
フィリップは秘密主義者。クリスティーネにレベルのことを聞いてしまうと、質問されるのは避けられないので諦めるしかない。
「てか、フレドリクの最高レベルを大幅に超えちゃったよ。知らないところで超えたら、喜び半減だ~」
元よりレベル50より上があるのか気になっていたフィリップは、
「仕方ない。次は100レベルを目標にしてみよう。頑張るぞ。お~!」
レベルアップの謎解きを終えたフィリップは、1人寂しく気合いを入れて、久し振りだからと地下12階で戦闘の勘を取り戻すのであった。
「ふぅ~……きっつ。ちょっと早かったか」
1ヶ月ほど掛けて地下16階のセーブポイントまで進んだフィリップであったが、モンスターが大きい上に強くては、何度か被弾したので反省。
MP消費量も多かったから、MP回復水をガブガブ飲んで休んでいる。
「ま、ここでレベリングすれば、早く上がるだろう。最強魔法連発で稼いでやる!」
というわけで、休憩を終えたフィリップは、セーブポイント近くにいた体が燃えているトカゲモンスター、サラマンダーの元へと戻った。
「フィリップが命じる。草木も凍え、世界を凍て付かせ、時をも止める絶対零度……喰らえ! ブリザードクロック!!」
乙女ゲームではお馴染み。フィリップの最強魔法炸裂。その範囲は部屋一面で、全体に吹雪をぶつけてモンスターを一網打尽に凍らせる魔法なのだ。
「あれ? まだ生きてるな……」
なのに、サラマンダーはピンピンしてる。
「グギャアアァァ!!」
「ぎゃああぁぁ~!!」
さらに炎を撒き散らして追いかけて来たからには、フィリップは逃げ回っているよ。
「ブリザードクロック! ブリザードクロック! ブリザードクロック~~~!!」
そして最強魔法連発。さっきの長い詠唱は、ただカッコつけていただけらしい……
「なんで正規の魔法は弱いんだよ~~~!!」
残念ながらブリザードクロックは封印。フィリップは複数の氷だるマンを召喚してサラマンダーを端に押し込み、上から氷マシンガンで蜂の巣にして倒したのであったとさ。
「由々しき事態です……」
セーブポイントに戻ったら、フィリップは1人作戦会議。
「サラマンダーが氷に耐性があったと思う人~?」
1人なのに、誰かに挙手を求める寂しい男なのだ。
「氷の
人には見せられない悲しいことをやってのける凄い男なのだ。ちなみにブタキングとは、鎧を着込んだデカいオークの頭に王冠が乗ってるから、フィリップが勝手に呼んでいる名前だ。
「というか、帝都学院のダンジョンより地下に進んでしまったから、単純に攻撃力不足かも? てことは、オリジナル魔法を作ったほうがよさそうだな~……」
しかし、考えていることは真っ当なこと。
「カッコイイ詠唱を考えるの大変なのに~」
でもないか。フィリップはオリジナル魔法開発に力を注ぐが、なかなか完成しないのであった……
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