050 期末試験
剣術訓練に精を出していたフィリップは、1ヶ月でソードマンの剣術を完璧にマスターした。
「もうこんなもんでいいか~……」
いや、飽きた模様。次の日は、さっそくダンジョン攻略に戻った。
「すげ~! カッチョイイ剣、めっちゃ斬れる~!!」
道中は、モンスターを斬り裂きながらのダッシュ。今まで2軍の剣で訓練していたから、フィリップはカッチョイイ剣の切れ味に感動している。
強そうなリザードマンも、一刀両断。ここまで上手く剣を使えているのは、ここ1ヶ月の頑張りのおかげなのに気付いてないな。
そんなことをしていたけど、いつもより早く10階の中ボス部屋に辿り着いたフィリップ。接近戦という選択肢が増えたから、時間短縮できたみたいだ。
「さあ~て。お前がくれた剣のサビにしてくれるわ!」
変なことを言っていても、アイアンゴーレムは慎重に。氷だるマンを
「スパッと行った! ドンドン行くぞ~~~!!」
訓練の成果とカッチョイイ剣の切れ味のおかげで、少しの抵抗で右足に斬り込みが入ったから、ここを広げるフィリップ。凍らせる手間が省けるので、かなり早くに右足は潰れた。
そのままいつも通りアイアンゴーレムの処理をしやすいように、右手を潰し、左手も潰したら、頭は凍らせて叩き割るのであった。
「フンッ。峰打ちだ」
完全に殺しておいて、カッコつけるフィリップであったとさ。
その足で地下12階のセーブポイントまで辿り着いたフィリップは、しばらくはその周辺でレベル上げ。乙女ゲームでのマックスレベルを超えられるのかと経験値稼ぎを続けていたら、ダグマーから期末試験があると聞かされた。
「あ……学校……」
「忘れていたのですか? 体調が悪いようですけど、せめて試験は受けないと進級もできませんよ」
「留年なんて制度あるの!?」
「中間試験の成績では、かなり厳しいかと……」
どうせ3年生には帝都学院に呼び戻されるからと好き放題していたフィリップでも、留年は恥ずかしい模様。仕方がないので、ダンジョンでの夜遊びはしばらく自重するのであった。
2日ほど掛けて昼型に戻ったフィリップは、久し振りにドアから部屋を出た。
「あれ? おんぶは??」
「模擬試合ではあれほどスタミナがあったではないですか」
「え~! 僕、病み上がりだよ~。抱っこしてよ~」
「子供ですか……」
体力があるのはバレていたのにフィリップは駄々っ子になっているので、ダグマーも冷めた目でフィリップを抱っこして階段を下りるのであったとさ。
フィリップが寮から出て教室に入るとどよめきが起こっていたけど、フィリップはスタスタ歩いて机に着いたらそのまま寝る体勢。
「殿下! やっと体がよくなったのですね!」
すると前の席に座る少年から声を掛けられたので、顔だけ起こす。
「……誰だっけ??」
「ラーシュです! 忘れたのですか!?」
「ラーシュ……あっ! 覚えてるよ~。伯爵家の」
「完全に忘れてるじゃないですか! 公爵家ですよ!!」
フィリップはわざとボケだけ。たぶん……おそらくラーシュをからかってから、少し話をしてみる。
「なんか変わったことあった?」
「殿下が不治の病とか言われていましたね」
「僕のこと以外では?」
「そうですね……特には……」
「なんもないの~? あ、あの子ってどうなったの? リンゴの彼女」
「ウリカは……エヘヘ」
「マジか……」
ラーシュが照れた顔をするので「あんな嘘つきとよく付き合うな」と思うフィリップ。なので、「絶対に避妊しろ」とアドバイスだけはしていた。
「避妊ってなんですか??」
「えっと……どこまで行ったの?」
「たまに町の広場に足を運ぶぐらいですけど……」
「
2人とも、まだ10歳なのだから手を繋ぐ程度だったので、フィリップは深くアドバイスしていいか悩むのであった。ウリカのほうは、まだフィリップを諦めていないから、純真無垢な少女を演じているらしいけど……
期末試験のために学校生活に戻ったフィリップであったが、試験範囲を教えてもらって勉強してみたら余裕だったので、授業では寝てばっかり。
そうして期末試験が始まると、どれぐらいの点を取っていいか考える。前回の平均点を踏まえると、20点ぐらいがいいかとも思ったが、不正が無くなると聞いているのだから生徒も勉強しているはず。
ここは30点前後に調整して、期末試験を終えた。
それから答案用紙が返って来たら、フィリップはラーシュと見せ合っていた。
「殿下、凄い上がってるじゃないですか!」
「ま、僕が本気を出せばこんなもんだよ。でも、ラーシュが下がってるのはなんで??」
「あの……あまり勉強に集中できなかったというか……」
「リンゴちゃんのせいか……」
フィリップは平均20点アップで、ラーシュは平均10点マイナスでは、フィリップも呆れている。この程度の問題では、褒められる成績でもないもん。
ただ、フィリップの目標は進級に足る成績。周りの生徒の答案用紙も見せてもらって、自分の位置を探る。
「なんじゃこりゃ……平均点が前より低いかも……」
「あ、やっぱり難しかったのですね。じゃあ、私の成績が下がっていても仕方ないですね」
「ラーシュ君。こいつらに合わせていたら、帝国に帰った時に痛い目見るよ?」
試験勉強もしない馬鹿ばっかりでは、ラーシュの今後が心配になるフィリップであった。
このテストは自室に帰ったらダグマーに見せてあげたけど、微妙な顔。成績アップしているが、それでも低いから褒めるに褒められなかったみたいだ。
「あ、そうだ。期末試験ってことは、夏休みとかあるの?」
「はい」
「やった! 久し振りにエイラに会える~」
長期休暇があると聞いたフィリップは、エロイ顔で思いを馳せる。たぶん、エイラと最後に会ったあの日のことを思い出してそんな顔をしているのだろう。
「帝国には帰りませんよ?」
「……へ??」
「正確には帰れません」
「な、なんで……」
「移動に何日掛かると思っているのですか。移動だけで、夏休みなんて終わってしまいますよ」
「そんな~~~……」
帝都からカールスタード学院まで、片道20日前後。そのことを忘れていたフィリップは、エイラに会えないと嘆きながら膝を突くのであった。
その夜……
「あ~あ……久し振りにみんなと楽しめると思ったのにな~……」
フィリップは夜の町で働く女性のことを考えて悶々としていた。どうやらあの嘆きは、エイラだけに向けられたモノではなかったようだ。
「こうなったら仕方がない。新規開拓しちゃうぞ~? ムフフ」
今まで真面目かどうかわからないけどダンジョン攻略に精を出していたフィリップは、エロイ顔で決意するのであったとさ……
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