049 剣の師匠
「グギギギギギ……氷柱!!」
アイアンゴーレムのデカイ手で押し潰されたように見えたフィリップは、ギリギリ盾での防御は間に合った。そのまま全力でアイアンゴーレムの重みに耐えていたが、目の前に氷の柱を出してつっかえ棒にしたら、一気に脱出した。
「うおっ。盾が一発でぐにゃってなってる」
氷の柱がアイアンゴーレムの左手に潰されるなか、盾を確認したらご臨終。ついでにステータスを開いて自分のことも確認する。
「HPは……2割も持って行かれた。間接的でもこんなに減るなんて、直撃を喰らったらゾッとするね。てか、瀕死の重傷になったらどうなるんだろ? 怖いからやらないけど……ま、先にトドメを刺してやる! 盾の仇だ~~~!!」
分析はあとから。フィリップは右手右足がなくなって立つこともできないアイアンゴーレムの右側から近付き、頭を凍らせて割るので……
「もう! 手が邪魔!!」
いや、アイアンゴーレムが悪足掻きするので、胴体を凍らせて真っ二つに割ったら、アイアンゴーレムはそのまま床に吸い込まれて行くのであったとさ。
「なんか予定とは違う倒し方になったけど……まぁいいや。ドロップは何かな~?」
ちょっと納得のいかないフィリップであったが、床から宝箱が現れたので嬉しそうに開けてみた。
「お~。カッチョイイ剣が出た。強そうだ~」
ドロップアイテムは、大金とカッチョイイ剣。大金はアイテムボックスに入れたら、カッチョイイ剣は鞘から抜いてカッチョよく構えてみたり、ステータス画面を確認してる。
「いや~。やっぱり王道の剣はいいよね~。それに猫の手グローブよりちょっと強い。攻撃力が70もあるよ。これは本格的に剣の訓練してやらないとな~」
こうして中ボスをクリアしたフィリップは上機嫌で階段を下りて行ったけど、アイアンゴーレムとの戦闘に時間を掛けすぎていたので、次のセーブポイントには届かないのであった……
中ボスを倒してから何度も12階のセーブポイントを目指したフィリップであったが、次にダンジョンに潜ったら必ずアイアンゴーレムが復活しているからぜんぜん制限時間までに辿り着けないので、作戦変更。
「やはり、剣の訓練をします!」
レベル上げをすると思っていたけど、フィリップは現実逃避してるな……
「ノンノンノン。そんなわけないだろ~……ん? 僕は誰と喋ってんだ??」
心の声と対話していたフィリップは、とあるモンスターを指差した。
「剣の先生は、ソードマン師匠です。パチパチパチパチ~」
ソードマンとは鎧を着込んだガイコツで、立派なソードを持っているからフィリップが勝手に呼んでいるだけ。しかし剣の腕前は、フィリップが見た中ではトップクラスの実力だから、名称に違わぬモンスターなのだ。
「よろしくお願いします!」
そんなことを言ってもソードマンに通じないどころか、襲い掛かって来たのであった。
フィリップは剣の訓練をするとか言っておきながら、胴体が半分くらい隠れる盾と猫の手グローブで対戦。これはソードマンの剣筋を見ようという作戦みたいだ。
ソードマンは、まずは袈裟斬り。フィリップは左手に持った盾で、刃と直角に受け止めた。
これはフィリップのほうがレベルがかなり高いということもあり、速度でも筋力でも上回っているから余裕で受けられるのだ。
「いいよいいよ。もっと来て」
フィリップにおちょくられたソードマンは怒りもせずに、横切りに縦切り。連続斬りでフィリップに襲い掛かったか、全て盾で受け止められている。
「う~ん……パターンがあるのかな? こうしたらどうだろう?」
何十回と剣を受け止めたフィリップならではの発見。ソードマンの動きを誘導して、同じ動きをさせ続ける。
「おお~。やっぱりパターンがあるな。これならわかりやすい。もうちょっと付き合ってもらおう」
ソードマンのひとつの動作を、足運びから腕の振りまで目に焼き付けたフィリップは、床から数本のツララを出して師匠を串刺しにしたのであった。
「確か……こう。こうだよな?」
ソードマンが床に沈んでアイテムを回収したら、フィリップは壁際に姿鏡を設置して剣の素振り。ゆっくりと振りながら動きを体に染み込ませる。
そんなことをしていたらソードマンがリポップしたけど、フィリップは氷魔法で倒して素振りに戻る。
「よし。次のヤツは剣で相手してやる」
何体も師匠を
ソードマンが近付いて剣を振るとフィリップは一歩下がり、練習した足捌きで踏み込み斜めに斬り付けた。
「おお~。いいんじゃない? 鎧に斬り込みが入った。こんなショボイ剣でも鎧なんて斬れるんだ」
剣捌きが練習通りいったと喜んだフィリップは、同じ動作で二度斬ったら、ソードマンは床に倒れるのであった。
「う~ん……鎧が斬れたというより、ダメージエフェクトという感じなのかな? ドンドン行こう!!」
ここはゲームが現実化した世界。フィリップは分析を挟みつつ、剣術訓練に精を出すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます