034 カールスタード学院に到着


 ダグマーを攻略した翌日は、フィリップもスッキリした顔。ダグマーも恐ろしく機嫌が良さそうな顔をしているので、周りからどよめきが起こっていたけど馬車移動は始まった。


「昨夜は楽しかったね~?」

「も、申し訳ありません……」

「ダグマーもノリノリだったじゃ~ん。謝らないでよ~」

「言わないでください」


 フィリップ絶好調。メイド如きが第二皇子を踏んだり上から乗ったりとしたのだから、セクハラが止まらない。


「まさかダグマーにそんな趣味があったとはね。昔からそうなの?」

「言ってる意味がわかりかねます」

「彼氏とかにいつもそんなことしてたのかってこと」

「していません。私と寝床を一緒にした者は誰1人生きていませんし……」

「へ? 僕が最初の生き残り??」

「はい」

「こわっ!?」


 ダグマーの元の職場は暗部。ハニートラップで誘い込み、油断したところを殺害していた悲しい女なのだ。


「まぁ、そんなことしていたから、こんな趣味になったのかもね」

「それは……一理あるかもしれません。殿方に抱かれても、気持ち良かったことなどありませんでしたので……」

「アハハ。それも僕が初めてだったんだ。嬉しいな~。アハハハハ」


 フィリップは笑いが収まると、急に真面目な顔になった。


「てか、こんなことしでかしたんだから、わかってるよね?」


 ここぞとばかりに、フィリップは脅してるな。


「はい……罰は受けます。任務を放棄するわけにもなりませんので、帰ってからですが陛下に報告させていただきます」


 その脅しに、ダグマーも死を覚悟してる。


「違う違う。次は僕の番って言いたかったの」

「……はい??」

「昨日はダグマーが楽しんだじゃん? 今日は僕が楽しむの」

「えっと……言ってる意味が……」


 でも、その脅しは自分のためだけ。だからダグマーもまだ意味がわからない。


「罰を受けるようなことはしてないって言ってるの。しいて言うなら、お互い楽しむことが罰だね。いっぱい楽しもうね~?」

「そ、そんなことが罰だなんて……」

「ダグマーはもう暗部じゃないし、僕の専属メイドだからいいんだよ。そうだ! ここで僕のことをイジメたら、周りにバレないか心配でゾクゾクすると思わな~い?」


 フィリップはわざとダグマーの耳元で伝えると、ダグマーは舌舐めずりした。


「もう知りませんからね」

「いや~~~ん」


 こうしてフィリップの旅は、エロ鮮やかになったとさ。



 馬車の移動中ではフィリップが変な声を漏らすので、護衛から勘繰られたダグマー。フィリップが声を出さないように我慢している顔は、ダグマーの嗜好に合致するからちょっとやりすぎたみたいだ。

 なので、移動中はお互いちょっとセクハラする程度にして、宿に入ったら大量の汗を流す2人。そんなことをしていたら2人の仲は出発時とは比べられないぐらい良くなっていた。


「顔を踏まれて喜ぶなんて、殿下は相当な変態豚野郎ですね」

「ブヒーッ!」


 見た目はちょっとアレだけど……


 そうこうしていたらボローズ王国内の移動は終了。ついにカールスタード王国に入った。

 ここからはボローズ兵は引き返し、ホーコンたち帝国兵とカールスタード兵がフィリップの護衛を継続。他国だからフィリップを外に出せないことも継続なので、ダグマーとばかりなんかしてた。


 そして2日後、カールスタード王国の首都に到着した第二皇子一行であった……



「やっと着いた~~~!!」


 帝都を出発してから20日。町の中も見せてもらえず、馬車から降りたフィリップはお城の前で万歳している。そこにダグマーが後ろから近付いた。


「長旅お疲れ様でございます」

「いやいや、僕は何もしてないよ。ダグマーのほうこそ疲れたよね? お疲れ様」

「もったいないお言葉です」

「それはそうと、なんでお城? 王様に挨拶とかしないとダメなヤツ??」

「いえ。こちらがカールスタード学院の寮とのことです」

「これが寮?? 立派すぎだね~」

「最上階が殿下の部屋とのことです」

「マジで??」


 カールスタード王国側のスタッフが、馬車から家具や衣装を寮の中に運び入れるなか詳しく聞くと、他国の王族や貴族が滞在する施設なので、先代の国王が国費を注ぎ込みこんなに立派な建物に建て替えたそうだ。

 そんな立ち話をしていたら、ホーコンたちがやって来たので、フィリップはダグマーの後ろに隠れた。


「フィリップ殿下。長旅お疲れ様です。我々はここで帰還となります。存分に学んで、帰りにはさらに立派になった姿を見れることを心より祈っております」


 ホーコンがわりと普通のことを言っているのでフィリップは様子を見ていたら、キラキラした目を向けられた。


「あ……ゴホンッ! みんなありがと~。気を付けて帰ってね~」

「「「「「はっ!!」」」」」


 たぶん「大儀であった!」的なことを期待していると気付いたフィリップであったが、ちょっとふざけてみたら、ホーコンたちはかしこまって返事をしたのであった。


「相変わらずあんなんでいいんだ……」


 やっぱりこの設定には、いささか納得のいかないフィリップであったとさ。

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