012 中ボス
「おお~。ワイバーンだ~。カッコイイ~」
夜のダンジョン生活を再開させたフィリップは、地下5階の最後にいる中ボスを見て興奮していた。
ワイバーンとは、ドラゴンの亜種。トカゲに翼が生えた程度に見えるが、体長が5メートル以上あるしブレス攻撃も持っているので、ゲーム内ではフレドリクたちも苦戦していた強敵だ。
「と、言ってる場合じゃないか。空飛ぶ敵にはハメ技が使えないんだよな~……そもそも1人で勝てるのかな?」
フィリップの必勝法は、床を凍らせて敵を立たせないこと。だから複数人で挑む敵であったり多少のレベル差があっても戦えていたのだ。
ちなみにワイバーン討伐の推奨レベルは20。フィリップは地道にレベルを上げてそれよりも高い25になったが、仲間がいないから悩んでいるのだ。
「まぁ攻撃魔法が通じなかったら撤退したらいいか。ひとまずやってみよう。氷だるマン召喚!!」
まずは様子見。ワイバーンと同じ大きさの氷で出来た雪だるまを進ませる。
これもフィリップのオリジナル魔法。最初はかっこいいロボットを作ろうとしたけど、イメージに時間が掛かるしMP消費量が多かったからこんな簡単な形になったのだ。
その氷だるマンがジリジリ進むと、ワイバーンはロックオン。奇声を発して空を舞った。
「おっ。炎吐いた。ちょっと溶けたぐらいかな? もうちょっと様子を見てみよう」
フィリップはそれでも様子見継続。ボス部屋にもまだ入らずに氷だるマンを操作して前進させている。徹底的に安全策だ。
「けっこう速いけど、僕のほうが速いかな? 突っ込んで来た……あ、落ちた」
ワイバーンは
「いちおう僕の魔法でもダメージは入るってことだな。防御もなんとかなりそうだ」
攻撃力、防御力も確認できたので、しばらく氷だるマンでワイバーンをおちょくったら、フィリップは次なる一手。
「雪だるマン召喚!!」
何故か防御力の低い大きな雪だるま。氷だるマンが守りを堅めながらワイバーンに迫る。しかしワイバーンは空を舞い、また炎を吐いて攻撃している。
「それじゃないんだ。解けるだろ~……来た!!」
フィリップの狙いは、ワイバーンの突撃。氷だるマンを射線から外し、雪だるマンで体当たりを受け止める。
「逃がすか! 固まれ~~~!!」
ワイバーンが雪だるマンを貫通して頭を出したところで、フィリップは魔力を操作して雪だるマンを固めた。
「氷だるマン! ジャンプ! 行け~~~!!」
そして、背中に氷だるマンを落としてダメージを狙う。
「暴れるな!」
それと同時にフィリップもダッシュ。一気に距離を詰めてワイバーンの左翼を掴んだ。
「よし! 凍った。氷ハンマー!!」
熱魔法で凍らせたら、氷魔法で作った背丈ほどあるハンマーで強打。これで左翼は木っ端微塵。念の為もうひとつの翼も砕いたフィリップであった。
「フフン♪ 飛べないワイバーンはただのトカゲだな。ウワッチ!?」
名ゼリフをパクって気を抜いていたフィリップに、雪だるマンから抜け出したワイバーンからの手痛い攻撃。炎を吐いて攻撃するので、フィリップは逃げるように走り回る。
「これでも喰らえ! アイスランス!!」
走りながらのゲーム内の魔法。氷の槍で貫こうとしたが、氷だるマンよりダメージが入らないみたいだ。
「なんで正規の魔法が弱いんだよ! ズガガガガガガ~!!」
というわけで、走り回りながらのオリジナル魔法連射。両手で指鉄砲を作ってワイバーンを蜂の巣にし、弱ったところで頭に氷だるマンを落としてトドメを刺すフィリップであった。
「ふぅ~。強敵だった。やっぱり僕は魔法特化なのかな? 兄貴と戦う時は剣も使ってたのにな~。剣なんて習ったこともないから仕方ないか。どこで習うんだろ?」
戦闘の反省と軽く愚痴を言っていたら床から宝箱が現れたので、フィリップは初めてのことにウキウキしながら開けた。
「なんだこれ? 猫の手? 手袋?? あっ! ネタ装備……普通の武器でいいんだよ~~~」
さすがは乙女ゲーム。レア装備は女子受けを狙ってかわいらしい作りなので、フィリップは残念に思ってる。
「まぁ、これはこれで強いんだよな……攻撃力55だし……城で手に入れたレイピアなんて8だし……設定おかしくない?」
猫の手グローブを装備してステータスを確認すれば鑑定と同じことができるのだが、それを見てもフィリップは納得できず。
「猫耳マントといい、なんでこんなのばっかり手に入るんだ……作為的なモノすら感じるな。とりあえず、レベル上げだけして帰るか~」
グチグチ言いながらだが、猫の手グローブは接近戦に役立つし氷魔法と相性がいいので、手放せなくなるフィリップであったとさ。
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