EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)12

クライングフリーマン

人形誘拐

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。通信担当。

 白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。資材・事務担当。

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。


 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

 横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。

 友田知子・・・南部家の家政婦。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からの出向。オスプレイまたはホバーバイクの操縦士。本部と支部の連絡便としてもオスプレイを操縦する。

 志田前総理・・・移民党前総理。

 金森和子二曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 斉藤理事官・・・EITOをまとめる指揮官。


 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 =EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

 =エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO東京本部精鋭部隊である。


 午前11時。EITO大阪支部。司令室。

 ディスプレイの前で、大前が大阪府警の小柳警視正と話している。

 「昨日の、福島の宝石店強盗だが、『次は人形』というメモを残していた。間抜けなことに、拾った警備員がそれを警備室に持ち帰って、捜査員に渡さずに、そのままにしていた、と言うんだ。付箋だから、気に留めなかった、と言い訳してね。」

 「付箋?ああ、すぐに貼れて、すぐに剥がせるタイプの付箋ですか?」

 「その通り。それで、それを知った捜査員が、慌てて連絡してきて、文楽劇場に張り込みに行ったんだよ。ところが、何も起こらない。そして、今朝の『松屋町人形人質事件』になった。」

 「人形やのに、人質、ですか?」「身代金を金の延べ板で持って来い、と府知事室に言って来たんだからね。何で現場だけで処理しようとした?って本部長もカンカンさ。」

 「で、吉本知事は?」「何せ国宝級の五月人形だからね。一応、出すみたいな返事をしたらしい。やりとりはメールだが、後は追えないようだ。すぐに痕跡を消せるアプリとアカウントを使っている、というサイバーセキュリティー班は言っている。セキュリティーと言えば、国宝級なら、もっとしっかり保管してセキュリティー会社と契約すれば良かったのに、と横ヤンは言っている。」

 「そらそうですわなあ。それで、身代金の受け渡しの際に、EITOに『ミッション・インポシブル』ですか?」

 「粋なこと言うね、大前君。」「ちょっと、会議しますわ。」

 午後1時。EITO大阪支部。会議室。

 「コマンダー。グランドキューバ大阪を受け渡し場所にしましょう。テナントには、事件解決まで退去、入館しないように手配するわ。」マルチディスプレイの画面上から芦屋三美は、簡単に言った。

 三美が電話で手配している間、二美が言った。「あのビルは、元々芦屋のモノなの。コロニーが流行った時は、自衛隊に供出したわ。予防接種のためにね。私が上司に進言したの。」

 「大丈夫か、二美。だだっ広いビルの中で、EITOエンジェルズだけで勝てるか?」

 「大丈夫かどうかは分からない。」「ええ?」

 二人の会話に総子が割り込んだ。

 「あそこ、確か二美ネエ達が言ってた『忍者屋敷』と違う?あそこがええわ。あれ、利用しよう。」

 「ビルの方は話をつけたわ。後は、大阪府知事。頑張ってね、コマンダー。」と、三美は言った。

 「え?俺が交渉するの?府知事に。」と言う大前に業を煮やしたか、二美は「ねえ、みんな、ここの責任者って誰だっけ?」と、二美はメンバーに尋ねた。

 皆。迷うこと無く、大前を指さした。

 「兄ちゃん、大丈夫やて。この間、恩売ったやんか。」

 「コマンダーの負けやな。」と、居合わせた花菱が言った。

それから、汗をふきふき、大前は吉本知事に交渉した。金の延べ板を取られた場合は、芦屋コンツェルンが弁済する、と三美が口添えし、本物の延べ板を用意するように願い出た。

 午後2時過ぎ。漸く電話交渉はまとまった。受け渡し役は二美が大阪府職員に化けることで合意した。

 その時、EITO東京本部から通信が入った。

 「コマンダー。東京本部から通信が入りました。会議室に繋ぎます。」と、いずみの声がスピーカーから流れた。新しい支部になって、全体に広くなったが、前の支部同様、作戦司令室と会議室は、部屋が分かれている。パーティションでは無いが、隣室だ。

 マルチディスプレイに斉藤理事官が映った。

 「大前君。大文字君から連絡が入って、明日の志田前総理の応援演説が狙われているようだ。本部から大文字君と、もう一人行く。支部からも人を出して、和歌山に飛んでくれ。宿舎だが・・・どこもホテルが満杯で、しかも少し離れているな。」

 斉藤理事官の言葉に、「セイカソーラー発電所でしたよね。それなら、一美が入院している藤島病院の院長が和歌山県立医科大学の出身だから、院長に頼んで宿舎でも借りますわ。」と、三美は事もなげに言った。

 「芦屋さん、演説場所、知っているんですか?」「ウチは、あそこのスポンサーの1社。気乗りはしなかったけど、勧める人がいたもので。事故ったら、潰せばいいわって思って。」

 「潰す・・・絶句だな。とにかくよろしく。」東京本部の映像が消えると、大阪府警の小柳警視正が画面に出た。

 「大前君。段取りはつきそうかな?」と言う、警視正に大前は明日の『人形誘拐事件』の段取りと、今斉藤理事官から受けた『前総理の応援演説の護衛』について話した。

 「よし、ウチからは真壁を応援に出そう。」と、小柳警視正は言った。

 「兄ちゃん・・・。」「皆まで言うな。行ってこい、総子。ぎんもジュンも大丈夫やな。」

 2人は頷いた。

 「もう、兄ちゃん、感激やわ。キスしてもいいよ、1回500円な。」

大前が財布を出そうとしたので、総子は紀子から渡されたピコピコハンマーで大前を叩いた。「セクハラするな!」

 「いつ見ても、おもしろいな、新喜劇は。」と、花菱が言い、皆は笑った。

 午後7時。和歌山。和歌山県立医科大学。宿舎。

 「何とか間に合ったわね。じゃ、後はよろしく。」と、ランボルギーニで大阪府警の真壁を送って来た三美は言った。そして、すぐに帰った。

 「真壁さん、よろしくな。こちらは、従姉の大文字伝子。」と総子が真壁に伝子を紹介すると、「よろしくお願いします。こちらは、本部の金森と新町だ。」と、伝子は2人を真壁と総子に紹介した。総子には、金森は顔なじみだが、新町あかりは初めてだった。

 「あれ?もう一人いるんじゃあ?」と伝子が言うと、「男子禁制だと言われたから、オスプレイで待機することになりました。」と真壁が返事をした。

 翌日。4月15日。午後1時。大阪。中之島。グランドキューバ大阪。

 9階。取引の場所に指定された、階のオフィスの一角。

 サングラスをかけた男が数十人の男達を連れて、中央に陣取っていた。

 片隅には、奪われた人形が入っていると思われるショーケースが布に覆われている。

 黒いビジネススーツの芦屋二美が入って来る。二美もサングラスをかけている。

 「ここでいいかしら?」二美は、持って来たアタッシュケースの一つを開けた。

金の延べ板が、ぎっしり入っている。「先ずは、確認して下さい。」

 子分と思しき男達が、テーブルに並べて、じっくりと観察を始めた。

 「じゃ、もう一つ。」と、サングラスの男が言った時、二美は長波ホイッスルを吹いた。

 そして、サングラスの男に向けて2つ目のアタッシュケースを開いた。

 アタッシュケースはSPなどが使う、『盾』になるタイプだ。

 2つの方向から隠し扉が開いた。

 二美は、すぐさま、走って逃げて、別の隠し扉に消えた。

 敵が隙を作ったので、『ぎんチーム』のぎん。悦子、祐子、真知子、今日子、真美は西側の隠し扉から、『ジュンチーム』のジュン、真子、みゆき、あゆみ、智子、稽古は東側の隠し扉から飛び出し、EITOエンジェルズは、銃を構えた敵をものともせず、シューターとバトルスティックで立ち向かって行った。

 敵は、受け渡し場所の指定に失敗したのだ。このビルには、集団接種が行われた際、『テロ対策』として、『仕掛け』が幾つも用意され、入り口と出口のエレベーターは複雑な構成になっている。

 一団は50人いたが、10分で制圧され、待機していた警官隊が隠し扉から出て来て逮捕連行した。

 真知子がEITO大阪支部に連絡をしていたが、深刻な顔をして、スマホの画面を皆に見せた。

 大前管理官だった。「インターネットの予告通り、志田前総理が襲われた。伝子さん や総子がいるから、どうにかなるやろうけどな。皆、一旦支部に引き上げてくれ。」

 午後3時。EITO大阪支部。会議室。

 大前達がEITOエンジェルズに「お帰り」と言っていると、スピーカーからいずみの声が流れた。

 遡って、午後1時。JR和歌山駅。

 志田は、駅前の広場で、改めて応援演説を始めた。

 警備を離れて、路地に入った警察官が2人いた。

 真壁とあかりが、2人の前に進み出た。

 「応援で来たんですけど、県警本部に帰るんですか?乗せてって貰えませんか?」と真壁が言った。

 「いいよ。そこに駐車してるから。乗りや。」と、男達の一人が言った。

4人が乗ったパトカーは、県警本部のある方向とは違う方向に向かって行った。

 「あのう。県警本部、こっちでしたっけ?」「ああ、ちょっと寄道するだけやん。」と、男は砕けた調子で言った。

 男は、駅前商店街から少し離れた、バーの前に駐車し、2人を連れて入った。

 男は10人いた。警察官の服を着たまま、前をはだけていた者が大半だった。

 「きゃー、イケメン!写真撮っとこうっと。」あかりは、はしゃいだ風で、スマホでカシャカシャと撮り始めた。そして、すぐに写真をメールで送った。

 「お前、何してる?お前ら、何をさせてる?」奥から大柄の男が出てきた。

 真壁は、あかりが写真を撮っている間に、DDバッジを押していた。

 そして、長波ホイッスルを吹いた。

 DDバッジとは、オスプレイを通じて位置情報を送るバッジであり、長波ホイッスルとは、オスプレイを通じて、『緊急事態』を伝える特殊な音波である。

 金森と伝子は、1分と経たない内に、バーのドアを蹴破って入って来た。

 エマージェンシーガールズ姿の彼女達を見て、男達は驚いた。

 「成程。『死の商人』の残党か。そこの親分風の男に雇われたか。行くぞ!」と、 伝子は金森に合図を送った。複数のブーメランが、まるで大道芸のように部屋のあちこちに飛び交った。男達の腕や肩、頭を打った。

 その隙に、あかりと真壁は外に出た。ホバーバイクで駆けつけたのは、南部総子と馬場だった。

 警察官姿の馬場は、少し離れた所に行き、EITO大阪支部に連絡を入れた。総子は、あかりと真壁に着替えを渡し、連中が出てくるのを待った。

程なく、伝子と金森が飛び出して来ると、EITOエンジェル姿の総子は横からシューターで敵の足下を攻撃した。

 銃や刀で武装した男達の数人は、総子の方に攻撃を仕掛けて来たが、EITOエンジェル姿の真壁とエマージェンシーガール姿のあかりにも、シューターの集中攻撃を受け、銃は全て金森と伝子のブーメランで弾き跳ばされた。

真壁とあかりは、連れて来られた男達に突進し、グーパンチで倒した。

 伝子と総子は、バトルスティックを使って、ハイジャンプして、ボス格の男をキックした。

 金森は、少し離れた所から狙撃しようとしていた男の銃をブーメランで跳ね飛ばし、駆けつけた馬場が一本背負いをした。

 「お見事!剣道だけじゃなかったのね。」と、真壁が褒め讃えた。

警官隊が駆けつけた。和歌山駅の警備をしていた、警察官達だった。倒れている警察官を見て、理解出来ないようなので、馬場が、大阪府警の小柳警視正をスマホで呼び出した。

 「大阪府警の小柳です。エマージェンシーガールズとEITOエンジェルが捕まえた連中は、先ほどのテロリストの共犯です。和歌山県警には連絡済みです。直ちに確保、県警に連行して下さい。」

 「和歌山県警の睦月です。了解しました。」と、睦月警視はスマホに敬礼した。

 午後3時。EITO大阪支部。会議室。

 「コマンダー。チーフからです。」と、いずみの声がスピーカーから流れた。

 会議室のマルチディスプレイに総子の顔が映し出された。

 「兄ちゃん、終ったで。伝子ねえちゃんと、阪和線で帰るわ。」

 「総子。今日は、直帰はアカンで。」と大前が言うと、「分かってるって。皆もご苦労さん。東京はどうやったの?」「大活劇やったらしいで。」

 画面は消えた。

 午後5時。再び、EITO大阪支部。会議室。

 総子と共に伝子と金森、あかりがやって来ていた。

 「大文字君。『残党』って本当かね?」マルチディスプレイのメインに映っている 小柳警視正は伝子に尋ねた。 

 「はい。あの中心にいた警部補と巡査部長は、以前、阿倍野元総理が暗殺された時に警備陣にいました。和歌山を発つ前、ケンが現れ、証言してくれました。ケンが狙撃を、狙撃の振りをしていた時、不審な警察官2名を目撃しています。あの時の犯人は、2人に手引きして貰ったようです。」

 「それで、あの距離だったのか。今回も、10メートル以内だったらしいね。詰まり、初めから仕組まれていた訳か。阿倍野元総理の時も今回も。警察官の中にスパイがいたら、100人体制だろうが、200人体制だろうが、関係ない。くそっ、防げるものも防げない。」

 マルチディスプレイの片隅で、斉藤理事官も「適切な表現かどうか分からないが、忸怩たる(じくじたる)思いだ。」

 「その二人以外にも、いました。新潟県警の松宮警部です。人事異動があったんでしょうね。彼がテラーサンタの幹の頃、怪しい人物だと思って、筒井から公安にマークして欲しい、と頼んだ人物です。彼が、どの立場なのかは分かりませんが、『葉っぱ』では無いと思います。」

 「ちょっと待って、伝子さん。東京の事件とは関係ないんヤな、和歌山の志田前総理暗殺未遂事件とは。」大前は尋ねた。

 「ええ。オマケに、こちらの『人形誘拐事件』とも別です。」

 「伝子ねえちゃん、そしたら、3カ所で3種類の事件を起した組織が3種類あるってこと?」

 「チーフ。EITOに以前言ってきた、『えだは会』がどれかに当てはまるってことかも。」と、ぎんは、言った。

 「うーっむ。でもまあ、3組の事件は全て片付いた。皆の必死の努力の賜物や。馬場君。柔道も出来るんなら、もっと活躍して貰うで。」

 大前の言葉に、馬場はぽかんとしていた。「一本背負い、カッコ良かったで。」

 「馬場君は、今総子の声が聞こえなかったみたいだな。頑張れよ。応援するから。」

 伝子の言葉に馬場は目を白黒させた。

 ディスプレイの中の斉藤理事官は、「私は、反対はせんよ。理解ある上司だから。」と言った。

 今度は、大前がぽかんとした。真壁が大前に耳打ちした。

 頷いた大前は、「総子。俺も理解ある上司やで。」と言った。

 総子は、思わずピコピコハンマーで大前を叩いた。

 「何、すんねん!」「ゴメン、つい習慣で。」と、総子はウインクをして手刀を切った。

 画面の中の小柳警視正も斉藤理事官も笑っていた。

 午後6時。馬場の操縦のオスプレイで、金森とあかりは、EITO大阪支部を後にし、EITO東京本部へと出発した。

 伝子と総子は、二美の操縦のオスプレイで、総子のマンションに向かった。EITO 大阪支部のメンバーは三々五々、解散した。 

 午後7時。総子のマンション。

 「お帰りー。」と、大勢が総子を待っていた。

 夫の南部寅次郎、南部興信所所の幸田所員、花菱所員、倉持所員、横沢所員、それに、大阪府警の横山鞭撻警部補。そして、芦屋三美と家政婦の友田知子。

総子は皆を伝子に紹介した。

 「今日は、お疲れさまだけとチャウで、お嬢。」と、幸田が口火を切った。

 「総子、誕生日おめでとう。住民票も確認したし、伝子さんにも確認したから間違いないよな。」と、デレデレしながら、南部は総子に花束を渡した。

 「江角家でもお祝いするやろうけど、こっちが先や。」知子と三美がケーキを持って来た。

 二美と三美の合図で、皆は『ハッピーバースデイ』を歌った。

 「ありがとう、みんな、ありがとう。」と、総子は泣きながら、ローソクの火を消した。

 途端に、顔中にケーキのクリームが飛んだ。

 「お嬢は肺活量大きすぎるな。」と幸田が言い、皆は爆笑した。

 ―完―


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