今日も食べる
井上基一
第1話 食べる 日清焼きそばUFO爆盛
私は、しがない派遣工場労働者である
いわゆる就職氷河期世代とかロスジェネ世代などと呼ばれる世代のおじさんだ
世間では色々と言われてはいるが、私自身、そんな時代だから不遇なのか?自身で何もしなかった、出来なかったからこうなのかはわからない
高校生ぐらいから、もともと持っていた喘息が度々発作を起こすようになり、そんな状況が二十歳すぎまで続いたからである
その発作も軽度のものから、気がついたら病院のベッドの上だったなどというひどい状態のこともあった
そんな状態でまともに勉強や就職がうまくいくとは思えないし、私自身、かなり無気力で何もしたくない人間だった
それでも、何もしないで過ごせるわけはなく、アルバイトでも派遣でもやって働いて給料をもらわなければいけないのである
そして今日も夜勤だ
私が働いている場所は朝夜の二交替制の工場である。8時半から始まり、休憩を取りながらの8時半までの12時間の拘束時間での労働となる
最も長い休憩時間は11時15分から12時までのいわゆる昼休憩にあたる45分になる
昼の勤務なら平日なら食堂や売店があるのでそれなりに食べられるものがあるが、土日や祝祭日、夜勤にはそういったものはない
パンやカップ麺の自販機もあるのだが、内容はほぼ更新されないのですぐに見飽きる
何か食べたければ自前で準備すると思って間違いない
そして今日は、日清焼きそばUFOの暴盛を食べることにする
少し前から発売していたのは分かっていたし気にはなっていたのだが、なんとなく先延ばしになっていたやつだ
コンビニで一つ300円。物価高騰が始まったこの御時世でそれが高いのか安いのかはわからないが、まぁ、カップラーメンが500円もするのを考えれば、決して悪くはないはずだ
パッケージの中央に大きく爆盛と書いてバーレルと読ませる。面白い
調べてみたらバーレルとは樽の事で約163リットルぐらいの量らしい
さすがにそこまではないが、確かに大きい。コンビニで見たときにはパッケージを見せるために立ててあって気が付かなかったが、カゴに入れようと手にした瞬間、あまりの容器の厚みに驚いた。
まるでバケツだ
そんなことを思い出しながら、パッケージを開けていく
中身は、2つの小袋。ソース用の黄色いのと薬味のあげ玉の茶色い袋
麺は袋に2玉180gとあったけど、中には油で揚げた麺が2枚入っている
なんとなく麺が太くて真っ直ぐに見えるけど、どうなんだろ?実は一平ちゃんの方が好きで、最後にUFOを食べたのは20年以上前で、そこまで意識していなかったからよく覚えてない
底の方の様子は分からないが、具のキャベツは入っているのかな?
パッケージを開けるときにカシャカシャと軽い音がしていたな
大きな容器とソースの小袋を持って、食堂の端にあるポットまで行ってお湯を注ぐ。一人で860mlも使うのにはやや後ろめたい気もするが、気にする必要はないだろう。ほぼ全ての人がテーブルに近いカップ麺の自販機に付いている給湯器を使っているからだ
ともあれ、お湯を注いでその上にソースを置き、そのまま3分待つ
一旦席に戻ってまた湯切りをするのかと思うと、なんとなく手持ち無沙汰ではあるが、そのまま待つ
時折、腕時計を見ながら3分を待つ。こういう時って、意外と長く感じる
そして3分
湯切り用の穴の形が湯気でキレイに見えるようになったら合図……だと思ってる
これ、一平ちゃんの場合だけど、UFOでも当てはまりそう
一通りお湯を切り、最後にチャッチャッとやると、席に戻って蓋の紙を指で弾く。キャベッが蓋についているともったいないから落としておく
そして、紙を剥がしてソースを開く
あたりにソースの強い匂いが漂う
そうそう、確かにUFOはこんな匂いだった。蓋に乗せて温めていたソースはきれいにサラリと流れる
それを割り箸でかき混ぜている間にキャベツも確認!
なんとなく少ない気もするが、まぁこの値段だしいいか
ソースが均等に麺に行き渡り、麺全部がソース色になればかき混ぜOKだ
そして、あげ玉のふくろを開ける。紅白のあげ玉が、焼きそば麺の上に広がる。なんとなく少ない気もするが、まぁこの値段だし仕方ないか
ようやく準備OK
「いただきます」
心で一言。そして一口
甘辛いソースと想像以上の麺の食感が口の中に広がる
「美味しい。懐かしい味がする」
でも、やっぱり麺は太くてモチモチして、まっすぐみたいだ。それに20年前と比べて味の嗜好が変わっているにも関わらずに変わらずに美味しいと感じられるのは、ソースの方も麺と同じように少しずつ改良されているのかな?などと分かりもしないくせに通ぶって考えてみる
正直、モチモチ食感はあまり好きではないのだが、あげ玉のサクサク感が良いアクセントになって美味しくいただける
一気に食べる
あげ玉に隠れてわからなかったのか、下の方に溜まっていたからなのか、半分近く食べて少しキャベツを感じた
うん、あげ玉と違って食感ではなくキャベツが持つ甘みで口の中を楽しませてくる、これはなかなか
グルメではないけど、そんな事を考えながら食べる
そして一気に食べきる
普通なら量が多いとか途中で飽きるとかあるのかも知れないが、私は無芸大食
最後、底の方に残ったキャベツを口の中に流し込み、普通に美味しくいただきました
ごちそうさまでした
最後に眠気防止にというより自身のカフェイン中毒のカフェイン欲を満たすためにモンスターエナジーパイプラインパンチを楽しむ
このフルーツミックスみたいな味が好き
さて、そろそろ休憩時間も終わりだ
自分のお仕事に戻りますか
派遣工場労働者の夜は続く
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