1-2


休み時間。後ろの席にはクラスメイトが集まった。

俺と転校生を入れても総勢7名。田舎の過疎化は深刻だ。


「前の学校私立やったん? 金持ちや」


「そんなんじゃないよ」


質問攻めに遭う新参者を、とりあえず気の毒に思う。


「ちょっとー。さっきから圭輔、佐山くんに話しかけすぎ。うちも喋りたいのに」


「はあ? じゃあアイも喋ったらええやん。なんやねん」


こういう争いの種を。


「お前ら、どっちも一方的やねん。なあ、佐山。そっちも聞きたいこととかあるやろ? 転校してきたばっかりやねんから」


静かに拾って、平穏を保つのは俺の役割だった。


「そうですね。質問、いいですか?」


ーー「ですね」?

ーー「ですか」?


控えめに頷く転校生を前に、俺の笑顔は固まった。周りのみんなも、不思議そうに彼を見る。


「……なんで俺にだけ敬語?」


佐山は、きょとんと俺の顔を眺め、「ああ」と納得したらしい声を出した。


「なんか目上っぽい感じがして」


「……そう?」


「老けてるんちゃう」


「は?」


ニヤニヤする圭輔を睨む。


木南町立きなみちょうりつ亀之湖かめのこ中学校。


ここは生徒数が50人にも満たない、ごくごく小さな学校だ。


教師は3人しかいないので、彼らは何科目も掛け持ちすることになっている。


俺たちは、そんな学校の3年F組に在籍していた。


通常サイズのクラス教室に、机がわずか7台。縦に2列、横に3列、と1席。昨日まで長方形を成していたそれは、歪に変形された。


「聞きたいことと言えば、やっぱりこの奇妙なクラス名ですかね」


「ああ、Fね」


当然の疑問だと俺は頷く。

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