第206話 ゼクスとの別れ ①
遂に再会したミリアとゼクス――
「やっぱり…… キースが死んだ時にいきなり現れた巨大な霊圧はあなただったのね」
「ヴァランから聞いたわ…… 随分派手に暴れまわってたみたいじゃない」
「ハッ! ワリ―かよ! これは戦争だ。 んでもって俺は
「一度戦場に出てきたっつー事は覚悟をもって出てきたって事だ! 殺っても殺られてもそいつらの責任! 謝るつもりはねーぜ!」
「やれやれ…… 相も変わらず戦闘狂ね…… それも重度の――」
「クク…… 昔のお前も似た様なモンだったじゃねえか?」
「―― かもね…… 私達が子供の頃の時代は恐らく天界が…… というかこの世界が出来てから最も治安が安定していなかった時代…… それこそ『まともな奴』なんかじゃ次の瞬間、死体になってるなんてザラな時代だったものね」
「ふ~ん。 そんな時代があったんだ? 知ってた? 兄上?」
「ああ。 僕も大王を継ぐ身として天界と下界の歴史…… それも表立って伝わってる歴史と実際に起こった裏側…… 所謂、真の歴史部分も全て教えられたから知っているが母上達の世代…… その幼少期はまだ世界…… そして人が知性と呼べるレベルの知識を持ち始めてそこまでまだ時が経っていなかった時代だ」
「天界もまだ治安部がなく、今みたいに下界では悪事とされていても、それでも様々な事情や経緯を熟考しての死後の判決をまだ下していない頃…… どちらかというと世界を正しい姿で保つ為に魂の循環を重視しての時代だった」
「まだ閻魔一族がいなかった時代だね♪」
「ああ。 従ってその頃は最高神様が判決を下し、当時の限られた天界人が今でいうところの死神の仕事を行っていたんだ」
「その頃は下界の文明レベルや人の思考レベルもまだ低すぎるが故に、だからこそ逆に悪質かつ複雑化した犯罪は実は少なかったからね。 今の時代より下界で犯した罪が悪質か否かその判断自体に難しくはなかったんだよ」
「ただ時代が進むにつれ、罪の悪質さ、巧妙さ、隠蔽工作…… 人がその知識を磨き上げるうちに犯罪もそこに到る経緯も複雑化していき、ここからはちゃんとした制度やそれに見合う組織、それを管理する管理者が一定数必要と判断した時期が訪れた」
「それと同時に単純な悪とはいえない、やむを得ない事情で犯した罪も考慮する必要が出てきた」
「それらの時期を機に、所謂今の天界でいうところの治安を担う為のシステム…… その根源になった部分が作られ始めていったんだ」
「そして最高神様が思考錯誤を重ね、女神殿達を生み、更には最高神様を生み出した世界の母たる聖なる大樹 『天聖樹』に流れる力の一部を引き出し、閻魔の『
「そこから先も当然色々あったみたいだが、長くなるからその辺は省略するが、時代やシステムの転換期…… それも文明がまだ未発達レベルの下界や天界のシステムを一から作る、ある意味では創成期に近い時代での転換期ともなれば当然、天界も相応に荒れていた時代があったそうだ」
「母上や父上いわく…… 裏切りと騙し合い…… 天界人も色々な意味で中々過激な者が多かったとも聞くし、中々シビアな時代だったとの事だよ」
「母上達が生まれた時代は『そういう時代』だったという事だ」
「母上も以前話してくれた時、当時の事を綺麗事の綺の字も生きていくには、ただ邪魔なだけだったと言っていた事があったよ」
「そんな母上達だったが、最高神様や女神殿達と出会い、既に少し前に見出されていた父上とも出会い、一緒に天界を真の意味で構築していく中で自分も救われたと言っていたが――」
「そうだったんだ……」
「へえ。 当代の方はよく勉強してんじゃねえか」
「当たり前でしょ。 王を継ぐ者は世界の歴史も知っとかなきゃ話にならないのよ! リーズの方は武術の方しか興味なかったし、教えようとしても自分の興味のあるとこしか覚えないし極めて上手く脱走するから早々に諦めたけどね」
「うん♪ 正直跡目は兄上に任せてたし、僕も難しい話はいいやって感じだったし♪」
「はあ…… 全く…… 本当は貴方ももっと勉強しなきゃいけないんだからね。 まあ、必要最低限位は抑えてるみたいだから大目に見てはいるけれど――」
「で? 結局二人ってどんな関係なのかな?♪」
「そこなんだよね~ 僕も気になるとこは……」
「あ? 別に大した関係じゃねえよ」
「う~ん、そうね…… なんて言ったらいいのかしら?」
「そう、ユリウス…… タイプこそ全然ちがうし、貴方達みたいに微笑ましい関係じゃあ、決してなかったけれど――」
「少しだけ…… 貴方とエレインちゃんの関係に似てたかもね」
「!」
「!」
「ただの幼馴染であり、腐れ縁……」
「そうだな…… それから昔付き合ってたってのと互いに腕っぷしだけは確かだったから喧嘩売ってくる奴等は一人残らず血祭りにあげて暴れまわってたってのと――」
「ん?」
「ん?」
「
「なんだかウマもあったしその結果、自然と三人でつるむ様にもなってったし――」
「ああ、あいつが大王になる前までは特に三人でいる事が多かったからな」
「といってもあいつが王を『継いで』からもあんま変わらなかった気もするが――」
「! ゼクス!!!」
「! っとまあ、そんな感じだ」
そうか…… こいつらにも『初代』は
「ちと『無駄に喋りすぎたな』 わりーわりー」
「全く…… 『今』はそんな話いいのよ」
「……」
「……」
一応天界でも最重要秘匿事項で閻魔兄妹ですらレティが真の初代閻魔女王である事はまだ伏せてはいるが、薄々彼女が一族の関係者ではないか位は察しているのであった。
だが、それを自分達にすら伏せているのには、それだけ『相応の事情』がある事も察しており、二人はここでそれを追求しない事を選ぶのであった。
というよりもたった今、二人にとってそれ以上に気になるワードがサラッと出てきてしまってそっちの方が気になってしまっていたのであった!
「――っていうか、ちょっと待って――」
「ああ、普通にスルーしているが、なにやら無視できないワードが飛び込んできたんだが……」
「二人付き合ってたの!?」
「二人付き合ってたの!?」
「ああ、なんだ、そっち?」
「え~~~~~~~っ!!!!!!!!」
「え~~~~~~~っ!!!!!!!!」
「え~~~~~~~っ!!!!!!!!」
「え~~~~~~~っ!!!!!!!!」
「え~~~~~~~っ!!!!!!!!」
閻魔兄妹だけでなくこれには霧島、カエラ、セシリア、ケイン、リリィの五人も思わず大声をあげて驚く!
ちなみに黒崎はなんとなく察していたのとグライプスは恋愛ごとには無関心だから然程驚いてはいなかった。
最高神達も全ての事情を知っていたのでそのまま二人の会話に耳を傾ける。
「ま、付き合ってたっていっても半年ももたなかったおままごとみてーなもんだったがな」
「そうね。 我が人生最大の黒歴史だわ!」
「こっちの台詞だ! じゃじゃ馬女!」
「なんですって!?」
「あんだよ!?」
こんな時にも関わらず喧嘩をしだす二人に呆れて声をかけるアルセルシア。
「ったく! 久しぶりの再会だってのにまた喧嘩しおって! そういう所は全く変わらんな! お前ら!」
「こいつの態度が悪いからですよ!」
「こいつの態度が悪いからだよ!」
ハモるミリアとゼクス。
「あ!? なに真似してんのよ!」
「あ!? なに真似してんだよ!」
「ふふ、息ピッタリですねえ…… 仲のよろしいことで♪」
二人を揶揄うアルテミス。
「仲良くないです!」
「仲良くねえよ!」
「!!!っ だから真似しないでよ!」
「!!!っ だから真似すんな!」
「~~~~~~っ!!!」
「~~~~~~っ!!!」
その後、文句を言い合うミリアとゼクス。
少しした後――
「ったく! あんたのせいで大恥かいたじゃない!!!」
「こっちの台詞だ! 馬鹿野郎!!!」
ここで閻魔兄妹にこっそり耳打ちしにくる霧島とカエラ。
「大王様…… いいんですか!? なんか凄い展開になってますけど!」
「リーズレット様も! しかも先代様とも色々あったみたいですし!」
「ああ、それは別に構わないよ♪ 流石にさっきは突然だったから、驚きこそはしたけどね!」
「うん♪ 僕もビックリはしたけど、その辺は理解ある方だし♪ 今更母親の元カレの話を聞かされても別に嫌じゃないしね♪」
「それに天界は一応、互いの合意があれば一夫多妻制だからね! 親の過去の相手が目の前に現れても別に問題ないさ」
「問題ないからね♪ 黒崎君!」
「僕は独り占めしたいけどね~♪」
「ね! 黒崎君! いつでも! ウェルカムだからね! ね! ね!」
「いや、大王様! ここで俺に振らんで下さいよ!」
「俺より向こう! 向こうお願いします! 向こう!」
力押しで話をミリア達にもどす黒崎。
「全く…… 勝手に行方を暗まして千年以上音沙汰なしと思ったら、いきなり敵として現れては
「本当に男って馬鹿ばっかりね! 不器用極まりないというか――」
「まあ、その辺は否定できねーがな……」
「お前には悪いと思ってるよ。 奴の寿命を大幅に削っちまったからな」
「!」
「!」
その言葉に反応する閻魔兄妹!
他の者達も同様であった。
だがミリアは冷静に話を続ける。
「聞いたわ…… けれどもそれはあの人もこうなる事は承知の上でああいう方法をとった…… それにこれは戦争で私達は敵同士になった…… だったら恨みっこはなしよ」
「それに…… あの人も満足そうな
「全く…… あんな表情して帰ってこられたら文句の一つもぶつけられないわよ……」
「はは、そうかよ……」
「ユリウス…… それにリーズも…… 後でちゃんと説明するから今は抑えて――」
「わかってますよ。 母上。 父上の霊圧が感じない上に、これ程の漢を相手に無事ともなると、なんとなく『そんな感じの戦法』をとったんだろうなぁとは思ってましたし――」
「ま、僕の方こそ、さっきはどうしてくれようかとも思ったけど、彼の助力があって『災厄』を倒せたのも事実だしね…… それに父上も納得してしまっているのだったら僕等はもう口を挟まないし、挟めないよ」
「そう。 ありがとね。 二人共……」
「ゼクス…… 貴方もこっちの兵を相応に殺したと思うから別に『災厄』を倒すのに貢献してくれた事に礼を言うつもりはないわ。 それは貴方が勝手にやったことだもの――」
「第一、そんな事言ったら貴方に殺された者達に申し訳ない…… 先代大王夫人ともなれば尚更、軽はずみな事は言えないわ」
「そうだな」
「けれども……」
「それでも…… 貴方が駆け付けてくれたおかげで世界が救われたのもまた事実…… それについては感謝しておくわ」
「―― なんて感じの台詞があった映画があったのだけれど、なんてタイトルだったかしら? アレは……」
「急に観たくなったのだけれど――」
「! あらやだ私ったら! 人と話してる時に『ひとり言』を言ってしまうだなんて!」
「でも目の前にいるのはしょーもない男が一人いるだけだから、イチイチ気をつかう必要もないわね♪」
「! ハハハ! そうくるかよ! ああ! そうだな! 『ひとり言』なら仕方ねーな」
「それにお前なんぞに気をつかわれるなんざ気持ちわりー事この上ねーしな!」
「あぁ!? 誰が気持ち悪いですって!?」
「オメーだ!!! オメー!!!」
「ったく! 口の減らない!」
「お互い様だろーが!!!」
先代夫人としてはそうもいかないかもしれないが、ミリア個人としては例えこの様な形であったとしても彼と再会でき、そして助けてくれた事には感謝しているみたいである。
まあ、それでもやっぱりまた喧嘩が始まったのだが……
そんなこんなしているうちに――
ゼクス、そしてレオンとアルテミスの身体が光に包まれ始める――
「! おっと…… ぼちぼちタイムリミットみてーだな――」
「そろそろ逝くか――」
「!!!っ ゼクス!!!」
「あ?」
突然光に包まれ消えていこうとするゼクスにミリアは呼び止める!
そして…… 彼が零番隊に所属していた頃から、今まで聞き出せなかった『ある質問の本当の答え』を彼に問い始める――
「どうしてあの時…… あなたが零番隊の総長に就任した時…… 私と別れを切り出したの?」
「!!!!!っ」
ここで、ゼクスなりのミリアへの想いが語られ始める……
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