第191話 覚悟 ②
「どう? 兄上?」
「ふう……」
「確かに…… 『嘘はついてはいない』様だが…… やはりこの出力ではそれしかわからないな。 もっと深いところまで
そう大王が言いかけた時、黒崎が閻魔兄妹に大声をあげる!
「〜〜っ いい加減にしろ! 二人共!!」
「!」
「!」
「俺を気遣ってくれるのはありがてえが、今は世界の命運をかけた戦いの最中だ! 既に散っていった連中だって山程いる!!!」
「大体、俺に限らずくたばっちまうリスクは誰だって持ってるはずだ!」
「勿論! 皆! ちゃんとこの大戦に勝って各々無事に帰る覚悟も持って戦ってるが、『逆の場合の覚悟』も当然持っている筈だ」
「リーズ! 京子から聞いたがてめえもアラン戦の後の夜、あいつにそう言って発破かけたんじゃねえのかよ!」
「! それは……」
* * *
「――この場にいる僕らも勿論、誰が生き残り、誰が死ぬか本当にわからない状況だ……」
「もちろん、みんな生き残って帰ってくる…… 皆でまた楽しく過ごす為、そしてこれからも天界の平和を共に守っていくために必ず帰ってくる……」
「皆、そうやって『ちゃんと生きて帰ってくる本物の覚悟』をもって戦いに赴く……」
「だけど天界の治安維持に関する立場にいる以上、『厳しい現実』は必ず存在する……」
「彼がシリウスの時から、君もそれをわかってて、覚悟の上で付き合ってたのかと思ったけど?」
* * *
「友人だからって俺だけ特別扱いされるわけにはいかねえんだよ!」
「大王様も! 昔あんたがエレインと出会って大王の座を継ぐ決意をした時! その時、俺はあんたにこう言いましたよね!!!」
「!!!!っ」
* * *
「言っておきますが、大王になるっていうのは相当な覚悟が必要になりますよ」
「時には『非情な判決』を
「ちと性格悪い質問させてもらっていいですか?」
「もし…… そうですね。 かつての大戦規模の戦がまた起こったと仮定します」
「戦況は劣勢、部下も多数死んでいる…… そして戦を終わらすため、敵の大将を潰す為に俺や大王夫妻、それから……」
「
「そうしないと戦の勝利はおろか、天界そのものが滅んでしまうとします……」
「もし…… そんな選択の時が来た時…… 王子…… あなたは決断できますか?」
* * *
「そう! そしてあんたは俺にこう答えた!!」
* * *
「そうだね……」
「勿論、そういった覚悟が必要なのは承知している……」
「僕が散々悩んできた理由はそれこそ沢山あるけれど、それも理由の一つにはあるからね」
「そして…… その上で! 覚悟はできているよ!」
「ただし! 僕はこう見えても、どうやらかなり欲張りな性格らしい」
「もしそういった時が本当に来て、その選択を迫られたら……」
「僕は敵を潰して戦も終わらす! その上で君達も全員助けるよ!」
「全部! 全部手に入れる! それを絶対に諦めない! 最後の最後まで!」
「その為にも強くなる! 父上よりも! シリウス殿! あなたよりもね!」
「大切なもの全てを守れるだけの力を手に入れる為に!」
* * *
「だったら! 仮に! そんな事は絶対にないですが仮に! 今! 俺が嘘ついていたとしたり何か隠していたとしても! それでも!」
「ユリウス! あんたは閻魔大王だろ!!」
「!!!」
「だったら!! 何を犠牲にしてでも!! 天界を!!! そして世界を救う事を優先しろ!!!」
「『そっちの覚悟』も決めろや!!!」
「そしてそれを示す時は今なんだよ!!!」
「まあ何度も言いますが、俺はくたばってやるつもりは毛頭ありませんがね!」
「それでもまあ、今までの事があるから作戦に支障が出ない様に、一回だけあんたの我儘を聞いて『眼』を使わせたんだ! ちゃんとあんたら兄妹に安心して! 思う存分に力を振るってもらう為に!!」
「こっちは筋を通したんだ! だったらあんたも大王としての本分を全うするのに!! その筋を通しやがれ!!」
「……」
「……」
黒崎の言い分に何も言い返せなくなる閻魔兄妹……
覚悟はとうに決めたつもりだった……
だが確かに…… 自分達の中でも気付いていない部分で、僅かにだがまだ甘さが残っていた事を痛感する二人……
それだけ二人にとって黒崎…… そしてシリウスは大切な友人であったという事への現れでもあったのだが、ここは戦場……
ましてやこの状況!!!
残酷な様だが、世界全体の存続を考えれば、それが許されない甘えの感情だという事は事実であった――
反省した後、口を開く閻魔兄妹――
「わかったよ。 修二…… 確かに…… 僕等も覚悟がまだ足りてなかったみたいだ」
「僕もだよ…… そう…… 僕は閻魔大王! この天界の! そして世界の破滅をくいとめる責務がある!」
「ああ、正直まだ不安はあるが確かに! 君だけ特別扱いするわけにはいかないもんね! だからもう何も言わない! 僕は行ってくるよ!」
「ああ! 頼んだぜ! リーズ! これでも頼りにしてんだからよ!」
「! ふふ、ずるい言い方してくれるなあ。 君は♪」
「そう言われると行かない訳にはいかないじゃないか♪」
「けどまあ…… うん♪ 任せて! 何とか戦況をコントロールして僕抜きでも足止めできる位の状況を作ってもどってくるから!」
「ああ! よろしく頼む!」
「うん! それじゃ!」
そう言ってグライプスの援護へと向かっていったリーズレットであった――
「―― よかったのか?」
駆けていくリーズレットに問うレオン。
「
「そんなの勿論気付いているよ。 僕も兄上もね……」
「だけど彼の言う通り、今は戦いの最中だ。 これ以上個人の我儘で駄々をこねては覚悟を決めた彼にも…… 散っていった同胞達にも…… そして今も懸命に生き残って動いてくれている仲間達にも失礼なのも確かだ」
「だったら僕も僕のやれることをしっかりやるだけだよ…… 例えその結果…… 何が起こったとしてもね」
「…… そうか…… まあ互いに納得してんのなら俺はいいけどよ」
全く…… 誰に似たのかね…… あいつのああいうところは……
まあ、テメエらが自分で出した答えだ!
気の済むまでやんな! シリウス! そして閻魔ども!
そしてアルセルシアも――
「……」
ったく! この馬鹿…… あの時……
前大戦で姉者が『災厄』を道連れにしようとした時と同じ眼をしていやがる……
シリウスの言っている事も最もだ…… それに力を消耗しすぎた今の私が代案も出せない以上、これ以上口を挟むのも筋違い……
シリウス…… 一体何を考えてるのかまでは知らんが……
くそ! 自分の無力さに腹が立つ……
葛藤するアルセルシア――
そして大王も――
「…… すまなかった。 黒崎君。 いや! シリウス殿! 昔立てた君との誓いを
「いえ、まあ元はと言えば日頃の俺の行いのせいですし、俺を想っての事でしょうからそれは純粋にありがたかったっすよ」
「ですが今は! 奴を倒す事に専念しましょう!」
「ああ!」
一方、『災厄』を抑えているグライプスの方はというと――
「ふふ! どうした! 神獣! 息が上がっている様に見えるが?」
「ふう、やれやれ…… こんな事ならアルセルシアかイステリアにでも訓練用にでかい空間でも作ってもらうべきだったか――」
「だが…… 我にばかりそんなに気を取られていてよいのか?」
「なに? !!!!!っ」
『災厄』が背後からその気配に気付いた時には彼女は既に近くまで来ていて飛び上がっていた!
「ふふ、エレインさん! 技を借りるよ!」
「レオンも! 力を貸して!」
「あいよ!」
負担のかかる雷遁の身体強化の代わりに、閻魔の炎の闘気を纏い、純粋な身体の強度の強化を図り、さらにレオンの闘気によって愛刀の火力を上げにかかるリーズレット!!
「
「
狙いは『災厄』の『
怒涛の超速連突きが『災厄』を襲う!!!
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