第十章 最後の戦い! その手で未来を掴み取れ!!

第183話 雷と氷!!

 黒き塔 頂上フロア――


 天界中から全ての瘴気を吸収した『災厄』は『コア』を含め、これまでの傷を全て再生し、更に大きくパワーを増した状態で黒崎達の前に立ちはだかる! 


 その姿はもはや原型を留めておらず、先程よりも、更にどす黒い色の巨大な瘴気に全身を包まれ、常に渦巻いている!!


 誇張抜きで文字通り『怪物』の様相であった!


 その全長も三千メートルは軽く超えている!


 瘴気の量もそうだが、それ以上に巨人型の敵兵をも遥かに超えているその大きさに、一同はどう対処すべきかと思考を重ねていた!



「これはまた……」


「ちょちょちょちょっと! 大きすぎません!?」


「やれやれ…… 勘弁してほしいね、全く――」


「ふふ♪ いいじゃない兄上♪ 実に斬り応えがありそうだ♪ 燃えてきた♪」


「流石我が妹! この状況下でその台詞…… 僕はもはや君の方が怖いよ!」


「―― こうくるとはな…… シリウス! 何か策はあるか?」


「とんだ無茶ぶりだな…… とりあえず今の奴の戦力を肌で体感してえが……」


「迂闊に突っ込むと瞬殺されそうだな…… いくつか試す価値がありそうな手はあるにはあるが……」


「それも通じなかったらマジで詰むしな…… どっちみち奴に相応の隙を作らせねえと話にもならねえんだが、それを作るにも戦力が足りねえ!」


「確かに…… 皆、相応に消耗しているからな。 逆に向こうはパワーアップ! おまけに全回復済みときたもんだ」


「どっ! どうしましょう!?」


 アルセルシアと黒崎の会話に割って入ってくるカエラ、その隣で冷静に自身が今使っている大戦前にサアラから譲り受けた鎌を一度PSリングに収納して別のリングから以前まで使用していた鎌を取り出し、持ち直す霧島。


「霧島君!? その鎌って――」


「ええ。 こないだまで使っていた方の鎌です。 念の為の予備として、こっちもPSリングに収納して持ってきておいたんですよ」


「威力は数段落ちますが、こっちの方が軽いので――」


「左手の骨は砕けてますし、今まで右手一本で無理矢理対処してきましたが、流石にそっちの手も痺れてきましたので」


「どのみち僕とカエラさんでは火力不足ですし、体力的にも危ういので、だったら先程よりも手数とスピード、そして一秒でも長く攪乱できる様に力を注ぎます!」


「まあ、右手も使い物にならなくなっても、まだ右足と左足がありますから、動き回れるだけ回って少しでも奴の注意を引くだけですけどね!」


「! 霧島君…… 確かにもう私達には奴にダメージを与える事すら難しいでしょうから、いっそ割り切って動いた方がいいですね!」


「そういう事です! ただ申し訳ないですが、それ以外は全く策が思いつかないので……」


「後は皆さんにお願いしていいですかね?」


 少し申し訳なさそうに苦笑しながら黒崎達にそう告げる霧島。


「黒崎さん! 得意の悪知恵を働かせて頑張って下さい!」


「って、ここにきて丸投げな上に、カエラに到っては失礼極まりねえな!」


「―― でもわかった。 そうしてくれ!」




「無駄だ…… こうなってしまっては如何に策を巡らせようと全てが無意味だ……」



「! あれだけの瘴気を吸収しても自我は保っていられるのか…… いやはや本当にとんでもないな」


「でも結構ギリギリっぽいよ♪」


「否定はしない。 だが! これ以上は我も無理はできんし、する必要もない! このギリギリのラインを保ったまますぐさま貴様達を塵に変えればそれで済む事――」



「この様にな!」



 次の瞬間!



 ズガアアアアアアアアアアン!!!



『災厄』はその巨体に似合わない超スピードで黒崎達に向かって右の拳を振り下ろす!


「!」

「!」

「!」

「!」

「!」

「!」


 会話しながらも警戒を怠らず、それでいて全員が『できれば外れていてほしいと思っていた可能性』も考慮に入れていた為、何とか全員! 今の一撃を回避する事に成功する!



「~~~っ やっぱりかよ!」


「ああ! あれだけ図体がでかくなりながら『スピードが全く落ちていない』! 本っ当にタチが悪いな!」


「くっ!」

「あっ 危なかった!」


「どうする!? 兄上!」

「……」


 リーズレットの問いの意味は自分達も霧島とカエラの援護をするか否かであった。


 正直、彼等二人だけでは足止めすら難しいのは明らかであったが、それでも今の『災厄』に必殺の一撃をお見舞いできる可能性が残っているのは女神アルセルシア、そしてそれに近い実力を持つ閻魔兄妹のみであった。


 ただでさえ消耗しているのにここでフォローに力を消費してしまってはそれを放つ事がより難しくなってきてしまう!


 大王もリーズレットもそれを危惧しているのだ!


 とはいえ、ここで霧島とカエラがすぐ様倒れてしまったら、どのみち対抗策を練りだす前に詰んでしまう!


 黒崎は状況に応じてまだどう動くか決めかねているが、まず奴の戦力を分析する必要もある!

 

 難しい所だが大王は一瞬で決断する!


「リーズレット! 僕は『印』の力を練り始める! 二人の援護は君に頼む!」


 かなり痛いが今はそうするしかない!



「! 了解だ! 兄上!」


 二人の援護に加わり『災厄』を牽制しに飛び込もうとするリーズレット!




 しかし!



「!? 待て! リーズ!!!」


 黒崎がここで待ったをかける!


「!?」






「その必要はねえぜ! 総長!」


 そこへギリギリまで気配を消して『災厄』の死角から超スピードで飛び込んでくる二つの影!


「瞬雷…… 爆塵刃!!!!」


 ガカアアアアアアアアアアアン!!!


「!っ」


絶対零度ダイアモンド・ダスト!!!!!」


 ビシィ! パキパキパキパキ!!!!!


「くっ!!!!!!」


 巨大かつ強力な雷を纏った神速の十連撃!


 そして間髪入れずに『災厄』の全身を氷漬けにして現れるは零番隊 セシリア・ハーレント! そしてケイン・マグナスであった!


 霧島とカエラ、そしてリーズレットの前に着地する二人!



「! ふふ、来たね♪ 二人共♪」


「ハッ! らしくねえな総長! そんなに消耗してるあんたは初めて見たぜ!」


「流石の総長も、かの雷帝とやり合えばそうもなりますか」


「ふふ、充実した時間だったけどね♪ それに収穫もあった♪」


「ま、そういう事だな! お前らの事も調べがついてるぜ! 零番隊の若手コンビだろ? 短い付き合いになるが宜しく頼むぜ!」


「……」

「……」


「!!!!!!っ」

「!!!!!!っ」


「刀にレオン入れた! 陰陽術で! 今は仲間! OK!?」


「って、雑すぎるだろ! 説明!」

「じゃあレオン説明してよ!」

「やだよ! メンドクセ!」

「ほら!」


「……意味がわかんねえ。 雷帝なのか?」


「うーん…… 恐らく…… 総長が彼を倒した後に二人の間で何らかの交渉が発生、今は陰陽術でその命…… 恐らく魂魄あたりを刀に収める事で雷帝の命を永らえてる……」


「確か陰陽術の秘奥にはそれに似た奇跡があったと聞いた事がありますし、多分ここにいる方々にこの説明を既に複数回総長がしていて、面倒くさがりな総長が説明を放棄したがってる」


「いきなり刀が喋ったもんだから流石にびっくりしましたが、今のやり取りと状況的に考えると、まあそんな所でしょうね」


「マジかよ!」


「凄えなお前! 名探偵じゃねえかよ!」


「流石僕の部下だね! 全問正解だ♪」


「ホントに当たってんのかよ! ケイン! お前ガチで凄えな!」


「いや、全問って…… まあ、いいですけど」


「総長、流石にこれはちゃんと自分で説明して下さいよ」


「だってもう何回も説明してるんだもん!」


「は〜、やれやれ……」


「ふふ、それはそれとして、二人共無事だったみたいだね♪」


「へっ! たりめーだろ!」


「とはいっても、色々な方に助けてもらいましたから、僕達だけでは今ここにはいないですけどね」


「いいんじゃない♪ 戦は一人ではできないしね…… それでいいんだよ♪」


「ここまで来たんだ♪ 君達にもしっかり手伝ってもらうよ♪」


「へっ 上等!」


「最後の大掃除といきますかね!」



 天界若手最強コンビ! ここに到着!!


 果たして戦況にどう変化を及ぼすのか!?

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