第180話 『創まり』の正体!!

 天国エリア――



 このエリアで、塔の頂上フロアにて行われている死闘にも勝るとも劣らない闘いをしているのは先代閻魔大王 ヴァラン・アルゼウム! そして先代零番隊総長 鬼神 ゼクス・ヴォルカノン!


 もはや周りの地形が原型を留めていないその様相から、二人の闘いが如何に激しいものなのかを物語っていた。


 戦況的にも両者全くの互角!


 互いに血塗れでボロボロの姿であったが、それでも両者共に、膝を付かずに倒れずにいた!!



「はあ、はあ、はあ…… ! これは!」


 凄まじいまでの死闘に興じていた先代大王とゼクスであったがここで今! 天界中の瘴気がある一点へと集まっている事に気付く!


「ぐっ! はあ! はあ…… ! くく、やっぱし『こういう手』も使えてたって事かよ!」


「! なんだと!?」


「ちっ! どうやら時間切れか…… ぐうううう!!!」


 ゼクスにとっては最初から予想していた通りの展開だったのか、然程さほど驚きはしていない様子であった。


 しかし、彼もまた瘴気によって永らえている身…… 


 この事態の影響も当然受けており、彼の身体が大きく黒光り始める!


 瘴気へともどされ、そして塔へと吸い寄せられる力の波に、ゼクスが襲われる!



 だが!



「ああ! ウゼエ! オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


「ちっと待ってろやああああ!!!!!」


 それを文字通り! 力づくで抑え込むゼクス!


 吸い寄せられる強制力以上の瘴気のパワーを放ち! 自身に纏わり付く黒光る瘴気を吹き飛ばし! その場に留まり続けるゼクス!


 


「! ゼクス! お前!」


「ったく! いきなりすぎるだろ! まあ、これで少しの間はなんとかなるか……」


「やれやれ…… メチャクチャ楽しかったお前さんとの闘いも、どうやらここまでみてーだな」


「できればどっちかが息絶えるまでり合いたかったが、この場合タイムリミットがくるまでにお前さんを倒しきれなかった俺の負けって事か」


「ゼクス……」


「ったく! お前の息子や娘ともり合いたかったってのに、ここまで手こずらせやがって!」


「ま、それだけ熱い闘いができたって事で満足しとくか」


「…… これは…… 天界中の敵兵が瘴気と化し『災厄』のもとへと向かっている? それにお前のその様子…… 『そういう事』か?」


「ああ、多分な。 俺も気を抜くとすぐに持ってかれちまいそうだよ」


「ゼクス……」


 複雑な心境といった感じの表情を浮かべる先代大王。


 今はともかく、かつての仲間、それも相応に因縁のある相手。


 その彼が吸収され消滅されそうになっているのだから無理もない事なのかもしれない。


「はっ! そんな顔すんな! 自分テメーで選んだ道だ。 こうなる事も想像はついてたし、別に後悔はしてねえよ」


「それに…… こうなっちまった時点で本当なら潔くここで逝っちまう『予定』だったが……」






































「どうやら『そういうわけにもいかなくなっちまった』みてーだしな」



「! なんだと!?」


「ま、ぶっつけ本番だから上手くいくかは知らねーがな……」


「じゃあなヴァラン! なんだかんだ最期にお前さんと会えてよかったぜ! そこまで痛めつけといて言うのもなんだが…… 残りの余生…… 精々大事に過ごせよ! 世界がまだ残ってたらの話だがな」


「ふっ 余計なお世話だ」


「お前の考えはなんとなく想像がつく…… 全く、不器用な漢だ」


「おめーに言われたくねえよ!」


「ああ、それとキースが消えてる以上、恐らくこの状況が罠である可能性は極めてゼロに近いぜ」


「まあ、念の為に多少は兵士を哨戒させた方がいいかもだが、多分大丈夫だろ」


「どっちかっつーと、怪我人の手当てとかを優先してやんな」


「そうか…… ぐっ!!!」


 ここで先程まで耐えていたダメージと魂魄の燃焼という禁忌を犯した戦闘法の反動で、遂に膝をついてしまう先代大王!


「! おい! 大丈夫か?」


「通信機を寄越してどこに連絡するか教えてくれれば代わりに船でも呼んでやるがどうするよ?」


「ああ、それには及ばな…… !!!!っ これは!?」


「! この気配っ!!!」


「へっ! こいつは珍しいゲストがおいでなすったみてーだな!」


「でも『こいつ』ならあんたを任せられるか……」


「ふん! 何を言う! こちらの方が願い下げだ!」


「それはこちらの台詞じゃ!」


 突如として二人の前に、その声と共に大きな光が出現する!


 光の中から出てくるは『創まりの魔女』ことレティシア・ルーンライトであった!


 そしてそのレティと先代大王が、まるで互いを睨み合うかの様に視線を交わす。




「全く…… 相変わらず可愛げのない漢じゃの」


「この『愚弟』は――」


「こちらの台詞だ…… 『姉者』!」



「いよう! 久し振りだな!」


「最後に会ったのも、まだお前さんが名前を変える前だったか…… レティシア・『アルゼウム』!」


「いや…… 正真正銘『本物の初代閻魔大王』…… それとも女王様とでも呼ぶべきか?」


「ふん! キモい呼び方するでない! とうに捨てた名前じゃ――」



 思わぬ所で判明したレティの正体!


 この三人の邂逅は何をもたらすのであろうか……







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