第178話 『災厄』から『最悪』の事態へ!!

「ギャアアアアアアアアアア!!!!!」


 アルセルシア渾身の一刀が見事炸裂し! 苦しみだす『災厄』!!


「やっ…… やった? ……」


「つっ…… 遂に!」


 全ての元凶を真っ二つにする事に成功し、安堵する霧島とカエラ!



 ―― だったが!



「いや!!」


「まだだ!!」

「まだだよ!!」


「! え!?」

「! なっ!?」


「…… ちっ! 馬鹿なりに多少は知恵がまわるようになったか……」


コア』ごと破壊されたかにみえた『災厄』であったが……


 だがそれなら既にその存在は消滅が始まっている筈!


 多大なダメージを受け、右半身は消滅こそしているものの、残りの左半身は辛うじてその実体を保ち、膝をついてこそいるものの、その存在はまだ確かに存在していた!



「そんなっ!!」

「あれでも仕留めきれないなんて!!」


「どうやら『死角にまわって』ぎりぎり難を逃れたか…… 私とした事がっ……」


 万全を期し、攻撃に転ずるギリギリまで殺気を隠していたアルセルシア――


 しかし『災厄』はどの様な状況に陥ってもアルテミスと同等の戦闘能力と危険度を持つ彼女に対してだけは警戒を怠ってはいなかったのだ!


 彼女がアルテミスと決着をつけた際、最後に交わし、受けた一撃!


 アルテミスの聖なる十字架グランドクロスによって左目を眼球ごと切り裂かれ、再生不可能な状態に陥っていたアルセルシアの死角――


 その左側に超スピードでまわって咄嗟に『核』の三分の一程度が斬り裂かれた程度で済まされていたのだ!


 アルセルシアも途中で軌道修正したのは流石だったが、それでも僅かに届かず! とどめを刺すには至らなかったのだ!!



「どうあっても…… 師匠先生だけは! 完全にはノーマークにはさせてくれないみたいだね!」


「我々全員を相手取りながら! それでも尚! 師匠への警戒を緩めないとは大したものだ…… だけど――」


「ああ、どのみちもう終わりだ――」


 そう! 黒崎達の言う通り! それでも『災厄』に対して甚大なダメージを与える事には成功していたのだ!


 『災厄』の動きも鈍っている!


 後はとどめの後押しをほんの少し入れれば即決着! といった状況であった!


 そして当然! 彼等はその好機を逃すつもりはサラサラない!



「いくぞ! テメーら!」


「ここでしめーにするぞ! 奴に回復の暇を与えるな!」


「おう!」

「おう!」

「おう!」

「おう!」

「おう!」


 黒崎の号令と共に! 最期の攻撃を仕掛けようとするアルセルシア! 閻魔兄妹! そして霧島とカエラ!


 勢いよく『災厄』に向かって飛び込んでいく!!



「がっ!!!! くっ! はあ、はあ――」



「調子に…… のるなあああああ!!!!」


 追い詰められた『災厄』!!


 だが奴は残された力を振り絞って瘴気による凄まじいまでの爆発波を起こし、黒崎達を寄せ付けない!!



「! このクソ野郎! まだこんな力がっ!」

「ちっ!」

「なんとっ!」

「!っ しぶといなあ~!! もう!!」

「ぐっ!」

「くっ!」



「はあ、はあ…… オオオオオオオオオ!!!!!!」


『災厄』の核に与えられた傷口から瘴気が漏れ、さらに今! 力を酷使した事によって『災厄』の身体が崩れ始めていく!!



「はっ! 正直ビビったが、自滅を加速させただけだったみてーだな!」


「油断するな! 奴は核だけ身体から切り離して逃げる事もできる! 絶対に逃がすな!」


「わかってる! ここで決める! 必ずな!」


「当然!♪」

「ここで終わらせてもらう!」



「逃げる、だと…… 調子に乗るなよ貴様等!」


「我にこれ程までの深傷ふかでを負わせおって…… 支配する世界ごと木端微塵にしてしまうかもしれんが……」


「もうどうでもいいわ! 世界など後から最高神でも傀儡にして新たに創造すればいいだけの事!」


「それよりも…… 貴様等を嬲り殺しにせん事には我の怒りは収まらん!!!」


「絶っっっっ対に許さんぞ! 貴様等ーーーーー!!!!!」


 凄まじい程の怒りを露わにし、爆発させる『災厄』!!



 そして次の瞬間!!



『災厄』の核に向かって、巨大な瘴気の渦が集約していく!!!



「? なんだ! こいつはっ!?」


「これは…… 奴に向かって膨大な瘴気が集まっている!?」


「~~っ 嫌な予感しかしないんだけど!」


「確かに!」


「でもこれじゃあ近付くのもっ!!」


「何をするつもりだ!?」



 凄まじいまでの荒れ狂う瘴気の渦に身動きが取れないでいる黒崎達!!


 吹き飛ばされない様に踏ん張っているのがやっとの状況であった!


 そしてそんな彼等をよそに『災厄』の瘴気が、さらに! 桁外れに増大していく!!



 これは…… 浅かったとはいえ、それでも核に致命傷を与えているにも関わらず、集めた瘴気を吸収する事で修復するばかりか、奴の瘴気が信じられない程に増大していく!!!


 これ程までの瘴気!! 一体どこから!?


 それに天界中の瘴気が逆に弱まって…… いや! 吸い寄せられている!?


 瘴気の流れ、それがどこから来ているのか気配を探るアルセルシア。


 ここで彼女はとんでもない事に気付いてしまう!!



「…… !!!!! まさか!!」



「いかん! 急いで奴を殺せ!!!!!!」


「!? アルセルシア様!?」

「!? 一体どういう事です!?」


 前大戦で直接りあったアルセルシアの経験が今! 何が起きようとしているのか! いち早く察知する!!


「! …… !!!っ なんて事だ!!」

「! ちっ! 『そういう事』かよ!!!」


「させないよ! レオンも! 力を貸して! はあああああああああああ!!!!」

「おうよ!!!! オオオオオオオ!!!」


「お前らもっ! 気を爆発させろ! 何が何でも奴の懐に入ってとどめをさすんだ!!!」

「! まさか!?」

「! くっ! わかりました!」


 アルセルシアに続いて大王! 黒崎! リーズレット、レオンがほぼ同時に! さらに少し遅れて霧島とカエラもこの状況を理解する!!


 全員が急いで気を高め! ゴリ押しで突撃する事を試みる黒崎達!!


「はあああああああああああ!!!」

「はあああああああああああ!!!」

「コオオオオオオオオオオオ!!!」

「かあああああああああああ!!!」

「おおおおおおおおおおおお!!!」

「ああああああああああああ!!!」






「ぜああああああああ!!!!!!」

「オラアアアアアアア!!!!!!」

「はああああああああ!!!!!!」

「おおおおおおおおお!!!!!!」

「はああああああああ!!!!!!」

「やああああああああ!!!!!!」

「でやあああああああ!!!!!!」



 全員がかりで特攻を仕掛ける一同!!!



 しかし!!!!



 バキィィィィィィィィィィィィン!!!!



 あっけなく弾かれてしまう!!!!



 そして……



「ちっ! 間に合わなかったか!」


「つくづく面倒な真似をしてくれる!!」


「そんなっ!」

「こんな事って!」


「これは…… 流石にやべえかもな……」

 わりいな、アルテミス……

 ちっとこれは、どうにもならねえかもしれねえ…… 


「僕としたことが…… すぐに気付くべきだった!!」


「今更愚痴ったって始まらねえ! それよりもそなえろ!!!!」

「そうだよ! 兄上! レオンも! 弱音なんてらしくないよ! こうなったら全員! 腹をくくるしかないでしょ!」


「! それってやっぱり……」

「みたいですよ。 霧島君…… 私もあまり想像したくはないんですけど……」



「ああ…… どうやら『こっからが本番』みたいだぜ!!!!」



「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!」



 まるで世界の終わりを告げるかの様な雄叫びをあげながら『災厄』はさらに『最悪』の姿へと巨大化させていく!!!





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