第162話 合流! そして……

 黒き塔 入口付近――


 霧島とカエラは、ガランとイリアとの激闘で負った傷の応急処置を終え、今は体力の回復を計っていた……



「……」


「霧島君?」


「どうかしましたか?」


 彼もまた何かを感じ取った様であった。



「…… いえ…… なんでもありません」


「ちょっとぼーっとしてただけです! 大丈夫です!」


 恭弥夫妻二人の強さは嫌という程知っている…… 


 ならば僕は前に進むのみ!


 それにきっと二人も『そうしろ!』 と言うだろうから……


 覚悟を決める霧島!



「そろそろ行きましょう! 黒崎さん達の援護に行かないと!」


「ええ! そうですね!」



「…… 霧島君!」


「? はい」


「敵の総大将はすぐそこです! ソッコーでフルボッコにして! こんな戦、とっとと終わらせましょう!」


「また『皆』で! あのいつもの日常に帰りましょう!」


 霧島の様子を見て、なんとなく心配事があるのだろうと察するカエラ……


 彼女なりの霧島への気遣いであった……


「! カエラさん…… はい! そうしましょう!」


 そしてその想いは霧島にも伝わっていた。


 気持ちを引き締め! 塔の中へと向かおうとする霧島とカエラ!



 だったのだが……




「ふふ、その通り♪」


「とっとと片付けて祝勝会だよ! 霧島君! カエラ君!」


 空から聞き覚えのある声が鳴り響く!


「! この声はっ!」


「大王様! リーズレット様も!」


 そこには二機の飛行艇に分かれて乗っている閻魔大王とその妹、リーズレットの姿がある!


 そして操舵はそれぞれの艦の操舵手に任せて地上へと飛び降りる閻魔兄妹。



 ヒュウウウウウウウウウウ……



 ズドオオオオオオオオオン!! 



 凄まじい着地音と共に、二人は霧島達の前に現れる!



「やあ♪ 二人共♪」


「いや~! 二人共、無事でなによりなにより♪」


「は…… はあ……」


「お、お二人こそ、よくぞご無事で……」


 あっ…… 相変わらずメチャクチャするな~ この兄妹……


 かなり高度がありましたけど…… あそこから飛び降りるか普通!?


 というか、よく会話聞こえてたな……


 ほんとの地獄耳だ……



 苦笑いするカエラと霧島……


「いや~♪ 二人の顔が見えたからさ~♪ 着陸するまで待てなかったから飛び降りてきちゃったよ♪」


「はっは! 僕もだよ! 二人共大袈裟だなあ~♪ 別にこれ位メチャクチャでも大した高度でもないじゃないか♪」


「って普通に心を読まないで下さい!!」

「って普通に心を読まないで下さい!!」


 ハモってしまった霧島とカエラ――


「はははは♪ 息ピッタリじゃん♪ 面白~い♪」


「カエラ君~♪ 黒崎君だけじゃなく霧島君とも息が合ってきたみたいだね~♪ ハッ!! これはもしやLoveの予感!? このこの~! 憎いね~♪ 二人共!!♪」


「そんなんじゃないです!」

「そんなんじゃないです!」


「はははははははははは!!!♪」

「はははははははははは!!!♪」


 二人を揶揄って大爆笑する閻魔兄妹!


「怒りますよ! お二人共!」

「勘弁して下さい!」


「はは! ごめんごめん♪ いや~! 実は少し前まで、かな~りシリアスな展開になってて僕のキャラにない事をしてしまってね! それで君達の顔を見たから嬉しくなってしまって! ついついイジリたくなってしまったんだ♪ まあ許してくれたまえ!♪」


「僕も兄上と同じで二人を見かけたからついついイジリたくなっちゃった♪ まあそんな怒んないでよ~♪」


 こっ! この兄妹は~~~!!!!

 こっ! この兄妹は~~~!!!!


「はは! まあ、そん位にしてやんな! あんま若者をイジメるもんでもねえぜ!」


「イジメとは人聞き悪いな〜! レオン!」


「そうだとも! 再会の喜びを分かち合ってるだけさ♪」


「ったく! この兄妹は二人揃うと手に負えねえなあ……」


「いや〜! それ程でも〜♪」

「いや〜! それ程でも〜♪」


「褒めてねえよ!!」



「…… え? ていうかどこから声が……」


「…… リーズレット様の腰の辺りから…… ?」


「よっ! 二人共! 俺だ! 雷帝だ! お前らの事はこの兄妹からも聞いてるぜ! 少しの付き合いになるだろうが、まあよろしくやろうぜ」


「……」

「……」


「!!! おっ! お化け〜!!!」

「!!! よっ! 妖怪〜〜!!!」


「って、またこの下りかよ!」


「また〜〜!! もう〜〜!! 説明面倒くさい!!」


「はっは! そりゃあ〜びっくりするよね〜♪」


 相変わらずの二人のノリについていけない上に、まさかの喋る刀の登場に、もはや超がつく程の混乱状態に陥ってしまった霧島とカエラ――



 一通りの説明を受けても驚きを隠せない二人であったが、それでも今は、互いに生きて再会できた事を素直に喜び合う四人、いや、五人の仲間達。



 そして――



「もはやツッコミどころが多すぎて処理しきれませんが……」


「でもまさかあの雷帝が同行してくれるなんて!」


「いや〜! 僕も城にもどる前に雷帝殿と対峙してた事があったんだけど、さっき再会した時に、これはまた随分とイメチェンしたな〜とビックリしたもんさ!」


「こんなイメチェンがあってたまるか!!」


「でもまあ、そんな感じだ! よろしく頼むぜ! 二人共!」


「はっ! はい!」

「よっ! よろしくお願いします!」


「はは! でも二人共良いリアクションだったね〜♪ お化けとか妖怪とか別に今更だろう!」


「そうですけど!」


「流石にいきなりはびっくりしますよ!」


「もう僕説明しないよ! この下り!」


「そうは言っても妹よ! 多分、後何回かは説明しないといけない場面になると思うよ!」


「え〜〜〜!!! 面倒くさいよ本当に!」


「まあいいや。 しょうがない。 それよりも…… 霧島君にカエラ君……」


「お互いに無事再会できて本当に良かったよ♪」


「ああ! それにその様子だと、どうやら見事、黒崎君をあの黒き塔へと送る届ける事に成功したみたいだね」


「ええ、なんとか……」


「私達はこのザマですが……」


「?」

「……」


 霧島とカエラの歯切れの悪さに閻魔兄妹が引っ掛かる……


 そして話を続ける……



「ふむ…… 先程この辺りで二つの強大な霊圧が君達と激突していたみたいだが……」


「僕も治療中に気付いた…… あの霊圧の大きさ…… 只者じゃない。 多分ガラン・ズールとイリア・セイレスと交戦してたのかな?」


「ええ、その通りです」


「なるほど…… 見事打ち破ったというわけか。 それも君達二人だけで……」


「凄いじゃないか! あれ級を二人で倒すなんて! やっぱり若者の成長速度は凄いね♪ 兄上♪」


「ああ! 全くだ!」


「あ、いえ……」


「勝ったって言っていいのかわかりませんが……」


「うん?」


「…… どうやら色々あって、しかもあまり納得いかない形での勝利を掴み取った…… そんな顔をしているね……」


「どんな形でも生き残った方が勝者…… だけどせっかくだ。 情報交換と整理がてら、そちらも話を聞かせてよ。 兄上が連れてきてくれた治療士もいる。 二人共、もうちょっと、ちゃんと傷を癒そうか♪」


「わかりました」


「実は――」


 閻魔大王は自身が乗ってきて今は後方に着陸しているガンシップの中にいる治療士を通信で呼び、霧島とカエラの治療を頼んだ。


 そして霧島達はその治療を受けながら自分達とガラン達の戦い、そしてその事の顛末を話すのであった……



「なるほど…… そんな事が」


「やっぱりあの二人も世界の理不尽が生んだ被害者でもあったか……」


「まあ、そういうこった」


「…… そしてそれも、我等の不甲斐なさのせいでもある」


「そうだね……」


「いえ! そんな! 大王様達のせいでは!」


「いや! いいんだ! そういった事実も逃げずに受け止め、それでも我等は前に進んでいかなければならない!」


「その通り…… 反省もする…… 悩んで迷ったりもする…… 時には間違ってしまう事だってあるだろう…… それでも! 僕らは歩みを止めるわけにはいかないんだ……」


「自分の不甲斐なさが許せないなら…… もっと強くなるしかない! 色々な意味でね」


「ああ! そして彼等は悪にこそ堕ちたがそれでも! 自分達の確固たる信念や想いを胸に抱き! それを全力で君達にぶつけ! 結果! 勝ったのは君達なんだ…… 最後のやりとりにしても、彼等がわざと君達を生かす事を選んでいたんだとしてもね……」


「そう、そして消えてしまった者達の想いを汲み、行動するのは今を生きる者達だけだ」


「彼等の様な悲劇を生まない為にも! 僕等も! 君達も! ちゃんと前を向いて! 進んでいくしかないんだよ……」


「ないんだけど……」


 閻魔兄妹はそう言いかけて霧島達の眼を見て、そしてすぐに気付いた……













「なんだ…… ちゃんとわかってるじゃないか♪ 二人共♪」


「自分達でその答えにちゃんと辿り着いたか…… 本当に…… 大したものだ」


「いえ、そんな!」


「私達はただ必死だっただけで!」


「謙遜しなくていい。 中々自分達だけでその答えに行き着く事は難しいものだよ」


「その通り…… それに無用な謙遜はむしろ逃げる為の言い訳にもなりかねない。 しっかり前を向いて進みたいなら! 強くなりたいなら! 自分達の成長をきちんと受け止めて! これは凄く大事な事だよ♪」


「大王様……」

「リーズレット様……」






「はい! わかりました!」

「はい! わかりました!」


「うむ! それでこそ君達だ!」


「なるほど…… ガランとイリアあいつらを乗り越えただけはあるって事か……」


「全く…… 大した連中だな」


「ふふ♪ そしたらそろそろ行こうか…… って言いたいとこなんだけど……」



「二人共…… ある程度は傷は回復したみたいだけど…… 本当に大丈夫かい?」


「!」

「!」



「カエラ君も内臓や肋骨、腹部の傷が酷かった…… 治療士による処置を受けたが当然、全快ではない」


「霧島君も…… その左手の骨折は流石にすぐには治らない」


 大王の言葉にリーズレットもまた続けて霧島達に厳しい言葉を言い放つ。


「悪いけどあの塔の中で待ち受けているのは最悪にして最大の死地…… はっきり言って何かあっても君達を庇いきれる余裕はないよ……」


「勿論、戦力は大歓迎だけど足手まといはお断りだ…… ここから先は僕らに任せて退くというのも、一つの正しい選択だ……」


 厳しい視線を二人に送る閻魔兄妹……


 それに対し、霧島とカエラが自分達の答えを出す!




「いえ! 大丈夫です! この程度の傷! 問題ありません! 自分の身も自分で守れますし必ずや! 皆さんの力にもなってみせます!」


「僕も鎌を振るうには片手でも全く支障はありません! それに…… さっきの戦いで多少なりともコツみたいなのも掴みましたしね」


「何より今は僕達は黒崎さんとチームを組んでいるんですよ!」


「あの人は後で必ず追いかけてこいと言って私達も追いかけると言ったんです!」


「そう! それにあの人、ほっとくと必ず無茶しますからね! 目の届かない所に長時間いられるとこっちが気が気じゃないんですよ!」


「本当ですよ! あの人はちゃんと私達がフォローしないとダメなんです!!!」


「! はははは! 確かに! それは言えてるね~!」


「そういえば割と前科もあるしね♪ シリウスの頃からもだけど♪」


「ふふ、良いチームになったじゃないか……」


「覚悟も十分…… わかったよ! そういう事ならみんなで行こう♪」


「ああ! 師匠せんせいとアルテミス殿! 黒崎君のいる、あの黒き塔の頂上へ!」


「はい!」

「はい!」


 こうして霧島とカエラの成長…… そして覚悟を確認して閻魔兄妹達は共に黒き塔の頂上フロアを目指すのであった――




 そして同時刻――




 黒き塔 頂上フロア――



 元女神 アルテミス……

 女神 アルセルシア……


 ここでは二人の女神の戦いが遂にその決着を迎えようとしていた……


 互いに霊力を高めに高め…… 極限まで練り上げ…… その状態でお互い最強技の構えをとったまま両者一歩も動かないでいた……


 互いの隙を伺いつつ、相手に無数の攻撃の気配、殺気を当て、牽制している……


 

 あれからどれ程の時間が経過しただろう……


 そんな状態がずっと続き、今に至る……



 だがそれも遂に終わりを迎える!



「コオオオオオオオオオ!!!!」

「ハアアアアアアアアア!!!!」



 互いに目を離さず、ここからさらに気を高める二人の女神!


 踏み込むタイミングを見計らって……


 二人の女神の奥義が遂に激突する!



 そんな時!





 ズガアアァアアン!!





 空間をぶち破って、この決闘の場に一人の人物が現れる!



 その漢は……





































 黒崎修二!




 二人の姿を冷静な眼差しでその視界に捉える黒崎――



 その気配に二人の女神も気付いているが意にも介さず、寧ろそれが合図にもなったかの様なタイミングで両者が!




 相手に向かって……




 同時に飛び込む!




 目にも映らない超神速の速度!




 全てを込めた互いの一撃が……




 今! 交差する!












神撃滅刀しんげきめっとう!!!」


聖なる十字架グランドクロス!!!」




 二人の女神!




 決着の時である!


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