第158話 禁忌の代償

「オラアアアアアアアアアア!!!!!」

「はあああああああああああ!!!!!」


 残り一万!


 猛る二人が一気に敵軍へと飛び込み、斬りかかる!


「ぎゃあああああああああ!!!」


 凄まじい程のスピードと剣撃で稲妻を落としながら敵を蹂躙するセシリア!


「がっ!……」

「なに…… がっ!」


 かたや凄まじい冷気で敵を氷漬けにしては剣で粉々に砕いていくケイン!


 セシリアがりこぼした敵も、感電して一瞬動きが鈍った隙を見逃さずに確実に氷らして砕いていくケイン!


 ケインの死角をつき、敵が背後から迫るとしても瞬撃特化の術で桁違いのスピードを以って敵を仕留めにかかるセシリア!


 見事なまでの連携であった!


 そして、とんでもない勢いで数を減らしていく敵兵達!


「なっ! なんだ! こいつら!?」


「また異常に強えのが出てきたぞ!」


「! こいつら! 零番隊だ! 零番隊の…… 『若手最強』コンビだ!」


「!! なんだと!! ぎゃああああああ!!」


「うあああああああ!!!」


 もはや会話する事すら許さないといった様相のセシリアとケイン!


 怒り心頭の彼等は自身が傷を負おうがそんなものは一切気にせず、数の不利も物ともせず、次々と敵を葬っていく!


「ゴチャゴチャうっせーんだよ! ゼッテー許さねえぞ! テメーら!」


「ええ! 僕等の恩人に随分な真似をしてくれたみたいですね! その大罪…… 死を以って償いなさい!」


「ぎゃあああああああああ!!!」

「ぐああああああああああ!!!」


 二人のあまりの気迫に気圧される敵兵達!


「よし! 今だ! ケイン! 今のうちに先輩達を!」


「ええ! わかってます!」


 敵が怯み、動きが鈍くなった隙をついてケインは恭弥とサアラのもとへと高速で走って移動! 辿り着く!



「恭弥さん! サアラさん! 大丈夫ですか!?」


「おお…… ケイン…… ナイスタイミングじゃねえか……」


「まさかここで貴方達が来るとは…… ちょっと予想外ね……」


「おお…… そうそう…… どうやってきたんだよ?」


 もはや血塗れで瀕死の二人…… 喋るのもやっとの状態であった。


「どこからだって来ますよ、そりゃ! つか馬鹿ですか! 貴方達は! 五万ですよ! いくらお二人でも、たった二人でこんな数まともに相手にできるわけないでしょう!」


「いや~…… イケると思ったんだけどね~……」


「実際…… もうちょっとだったんだけど……」


「今は喋らないで! 応急処置ですが、すぐに手当てを――」


 多少なりともだが、治療術に心得があるケイン!


 まずは傷口を塞ぎ、出血を止める! ありったけの治療薬も飲ませまくらないと!


 とりあえず危険な領域を脱したら治療士のいる所へ! できればマクエルさんか京子さんの所へ!


 各ゲートの場所は頭に入っている! 距離的には京子さんの所が近いか…… あの人の腕なら! 無理ならマクエルさんを何とか呼んで……


 治療しながらも最も確実な二人の搬送先を頭の中で模索するケインであったが、ここで予想外の事が起きている事に気付く!



「? …… !!!」


 どういう事だ!? 二人のダメージが全く抜けていない! 全く体力が回復していかない!!


 馬鹿な! 傷は…… ゆっくりだが塞がってきているのに! 


 くっ! 先に治療薬をっ!



「お二人共! まずは先にこれを飲んでください!」


 PSリングからとりあえず、急いで二本の治療薬を取出し、二人に飲ませるケイン!



 だが……



 …… なんで!? 二人の容体が全く変わらない! 一体どうして!?


 まてよ…… そういえばどこかで聞いた事が…… 


 …… !!!っ


「まさかっ!!」


「お二人共! 『魂魄を燃焼』させてたんですか!?」


「はは…… アタリ……」


「他に手がなかったからね……」


「! なんという無茶な事を!!」


 魂魄の燃焼…… 禁忌とも言われている最強…… そして最悪の強化術……


 文字通り、その命の根源である魂を燃やす事で爆発的に戦闘力を跳ね上げる事ができるという……


 だが禁忌とされるには相応の理由がある。


 この場合、魂を燃焼させるという事は命の根源そのものを自身の手で燃やし、そして失っていくという事……


 いわば命よりも重要な働きを持つ魂魄……


 それを消費し過ぎると、もはや通常の治療法では効果が得られない可能性もあるという……


 このままでは死は免れないどころか、転生すらできなくなる! 本当の意味で世界から消滅してしまう!


 いくらお二人の戦闘力を以ってしても五万もの大軍のうち四万もの敵兵をたったの二人で、しかもこんな短時間で倒せたのは違和感を感じてはいたのですが……


 単なる都市伝説的なものかと思ったら、まさかそんな闘法が本当に実在するとは!


 僅かな量を燃焼させただけなら命だけなら助かる可能性もあるかもしれませんが……


 一切の治療行為が効かない程に燃やしてしまった?


 くっ! だとしたら、一体どうすればいいんだ! 


 こうなったら危険だが無理にでも二人を連れて離脱を! いや! まだ敵があれだけいる! 撤退は不可能だ!


 ~~~~っ どうすればっ!!!


 そんな思い悩むケインに対して恭弥達が口を開く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る