第142話 動き出す、各エリア!!

 閻魔の城 中層階――


 キース・マドックを倒し、情報交換とエレインの治療をする最高神、女神イステリア、先代大王、当代大王のユリウス、マクエルに気を失っているエレイン……


 そんな彼等も、突如現れた強大な霊圧に即座に気付く!


「! この気配は一体!?」


「信じられない程の強大な霊圧…… 閻魔一族貴方方にも匹敵するかもしれませんね」


「…… この気配…… まさか……」


 心当たりがあるかの様な反応を示す、先代大王。


「明らかに只者ではない…… 父上! ここは僕が!」


「ならん! お前は回復次第、アルセルシア様の援護に向かえ!」


 そう言い放ち、息子に二つ、PSリングから、自身の分だった霊力回復薬が入った小瓶を投げ渡す!


「! これは!」


「私には不要だ。 マクエルはエレイン彼女の治療を優先しつつ、キール君と連携して今のうちに態勢を立て直してくれ!」


「! はい!」


「あなた!」


 正面口の敵兵が退いていき、急いで駆けつけてきたのはミリア・アルゼウム!


「! ミリアか! 丁度いい! 暫くの間、私はここを離れる! 後の事は任した!」


「あなた…… まさかこの気配の主の所に行くつもり!? 私も加勢するわ!」


 明らかに常軌を逸しているレベルの猛者…… 先代といえども危険なレベルであるのはミリアもすぐに気付いていた!


 夫の加勢を名乗り出たミリアであったが、先代はそれを拒否する。


「いや、お前はここに残り、また敵兵が進軍を再開した時に備えて残っていてくれ」


「けど!」

「ミリア!」


「! …… わかったわ……」


 実際、城側の戦力も、もう余裕がない!


 個人の感情を優先できない事、そして夫の覚悟を理解していたミリアに、彼を止める術はなかったのだ。


「あなた…… 私、未亡人なんて嫌だからね……」


「だから! ちゃんと帰ってきなさい!」


「! ふっ…… 当然だ」


「父上…… 先程からこの気配の持ち主に、心当たりがある様なご様子ですが……」


「ああ…… 断言はできんが、どこか懐かしい気配だからな……」


「恐らく――」





 天国エリアの一角 とある拠点――


 天界軍は劣勢に追い込まれ、負傷兵が続出!


 治療区画まで搬送できないのを、見るに見かねて危険を承知で、命令を無視して数人の治療士達が前線で怪我人の治療に当たっていた!


 その中には葉原木京子の姿もあった!


 そんな彼女の前に敵兵が襲い掛かる!



「へへ、なんだ。 戦場なのにいい女が揃ってるじゃねえか!」


「! ぎゃああああ! こっち来んといてええ!」


 怖がりながらも護身用に用意していた自作の釘バットを思いっきり振り回して、見事敵の顔面を捉えた京子!


 グシャァ! と、エグイ音と共にぶっ飛ばされる敵兵!


「ぎゃああああ!」


「! いっ! 今や! チャンスやで! 皆!」


「それ! 今よ!」

「このケダモノ!!」

「女だからって舐めんじゃないわよ!」


 バキィ! ズガァ! グシャア! バゴォ! と、全く情けも遠慮もなく一斉に倒れた敵兵に、京子から事前に渡された釘バットで敵兵をリンチする治療士達!


「! ちょっ! 待っ! 痛っ! がっ!」


 まともに声も上げられない敵兵……


 倒れていた死神がドン引きしているのにも気付かない治療士達……


「~~~~~~ いい加減にしろーーー!」


 ボロボロになりながらも起き上がり、怒りの感情と共に彼女達に襲い掛かろうとする敵兵!


「! いやーーーーーーーー!!!!」


 そんな敵兵に対して怖がりながらも、カウンター気味に、しかも相手のみぞおちにまわし蹴りを入れて吹き飛ばす京子!


「ぐへええええええ!!!!」


 完全にのびてしまった敵兵。


「……」

「……」


 …… もしかして…… 俺らより強いんじゃあ……


 またしてもドン引きしていく周りの死神達……


「はああああああ!!! 怖かったわあ~~~!!」

「ホントホント!」

「早く下がりましょう! 私達治療士が前に出てちゃ危ないわ!」

「そうよそうよ!」


「ん? どないした? お兄さん?」

「! いっ! いえ! 別に! 皆さんご無事で何よりで…… はは……」


 そんな彼等の前に、またもや新たな敵兵達がゾロゾロと現れ、襲い掛かる!


「! またか!」


「貴様らぁ! 舐めた真似しやがって! 皆殺しだぁ!」


「!! あかん!!」


「きゃあああああああ!!」

「きゃあああああああ!!」


「くっ! 皆さん下がって! ぐあっ!!」


「! お兄さん!」


 京子達を庇って敵の一撃をくらってしまった死神の青年!


「死ねえええええ!!」


 とどめの一撃を振り下ろそうとする敵兵達!




 その時!





























「僕の恋のライバル友人に……」


「何しようとしてくれてるのかな?」


 目にも映らない抜刀でバラバラに敵兵達を瞬殺しながら現れるは、瞬撃特化の術で急いで走ってきたリーズレットであった!


「ぎゃああああああああ!!!!!」

「ぐあああああああああ!!!!!」

「ぎゃああああああああ!!!!!」


 刀を鞘に納めるリーズレット。


「! あっ! あんたは!」


「! なっ! 何故貴方様がこちらに!?」


「やあ、皆、頑張ってるね! そして君も思ってたよりも元気そうだね。 京子♪」


「リーズ! 無事やったか!」


「けど何であんた、こんなとこにおんねん!?」


「ちょっと色々あってね♪ それよりもここは大した敵も数も攻めてきてないみたいだね」


「好都合だ♪ 一気に決めよう♪」



「コオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 自身の気を練り上げ、周囲の雑兵達を一気に殲滅にかかるリーズレット!


「穢れし意志を持つ邪の者達よ…… 破邪の力により、その行いを悔いよ!」


「はあああああああああああああ!!!」


 かつて、グランゼウス要塞でも見せた陰陽術を今回は本気で発動するリーズレット!


 すると自分達のいる拠点と、その半径五百メートルの瘴気を帯びた敵軍を、一気に塵一つ残さず壊滅させる!



「すっ! 凄い!!」


「いやはや…… 流石やなあ……」


「へっ! やるじゃねえか! リーズレット!」


 その技の切れに、彼女の刀となっているレオンも感心する。


 だが、急いでここにくるのに燃費の悪い瞬撃特化の術を使ってきたのと、今の陰陽術でまたもや消耗してしまったリーズレット。


 そのまま京子の胸に倒れこんでしまう!


「!! リーズ! おい! 大丈夫か!? しっかりしい!!」



「んー♪ このふくよかな弾力と大きさ♪ まさに天国だね〜♪ すりすり~♪」


 倒れたと思ったら、京子のその豊満な胸を堪能しまくるリーズレット。


 どうやら全然大丈夫みたいである……


 そんな彼女の眉間にバキィと、怒りの肘鉄をくらわす京子!


「あー、スマン、肘が滑ったわあ」


「ぐっ!! イッタいな~! もう! 命の恩人に対して!」


「やかましい! このセクハラ女がっ! 心配して損したわ!」


「まあ、冗談はさておき……」


「京子! 忙しいとこ悪いけど大至急! 僕を治療湯に案内して! そのまま僕の治療を頼む!」


「なっ! 今の肘、そんなに当たりどころが悪かったか!?」


「ちがう! いや! それも痛かったけれども!」


「こんな時に慣れないツッコミやらせないで!」


「事情は治療の間に説明させてもらう!」


「それから君達! なるべく上等な霊力回復薬を持ってこれるだけ持ってきて! 勿論全部は使わないから安心して! 後、替えの服も!」


「それからそこの君も! 空挺を一隻と操縦手の死神を一人用意しておいてくれ!」 


「恐らく思ってた以上に、僕らには時間が残されていないのかもしれない……」


「この戦に勝つ為には、まだ僕は倒れられない! 一刻を争う! 皆、急いで!」


 先程までとは打って変わって真面目に指示をとばすリーズレット!


「おっ! おう!」

「はっ!はい!」

「! はい!」

「! 了解しました!」




「……」

「……」

「……」

「……」




「って、剣が喋ったああああああああ!?」


「って、おっせえな! リアクションが!」


「ああ! もう! それも後で京子に説明しとくから、気になる人は後で彼女から聞いて! ほら! 急いで!」


「わかりました!」

「おう!」


 最終決戦に備えて準備をするリーズレット達であった!

  

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る