第132話 約束しただろう……
時はもどり…… 閻魔の城 上層屋外――
キース・マドックを前にして、その命が風前の灯と化しているエレイン……
ふっ…… こんな時に随分と昔の事を……
ですが…… 確かにそろそろ潮時かもしれませんね……
せめて道連れに…… といきたかったですが…… それも…… 無理…… の様……
先程、気力のみで起き上がりはしたもののやはり膝から前のめりに崩れ落ちるエレイン。
…… ここまでか……
ごめんなさい…… 役に立てなくて……
その様子を追い詰めている側にも関わらず畏怖の念で頬に汗を垂らしながら伺うキース・マドック。
普通なら起き上がるどころか、とうに息絶えてる程の毒量とダメージ。
にも関わらず彼女は起き上がり、しかもその両の瞳の色はまだ死んではいなかった!
強靭な精神力と想いの力のみで彼女は起き上がってきたのだ……
キース・マドックにとって、そんな彼女の姿は全く理解できないものだったのだ!
だが、それでも遂には力尽きたエレイン……
その瞳にも光はどんどん失われていく……
そしてその事実を目の当たりにしてキースは安堵の表情を浮かべる。
「はっ! はははは! 驚かせてくれちゃって! やっぱりもうとっくに限界を迎えていたんだね!」
「全身に猛毒を蓄積した状態で、おまけに雷遁の肉体活性術を使ってしまったんだ!」
「あの術は確か自身の運動神経に直接電撃を叩き込んで肉体を活性化、強化する術! 当然! 血流も異常な速度で促進されるから体内の毒のまわりも早くなってしまった……」
「
「それでも! もう、ここまでの様だね!」
「このまま放っておいても君は死ぬだけだけど、ここは確実に……」
「君の首を
「そしてその生首を通信映像でこの戦場中に流してあげる♪」
「楽しみだねぇ! 君の仲間達がどんな表情をするのかが!」
「ははははははははは!」
高笑いをしながらゆっくりとエレインに近づいていくキース。
そうしてエレインの前に辿り着き、彼女の髪を左手で乱暴に掴み上げ、その首元に自身のナイフを突き立てる!
「ふふ♪ 大分頑張ったみたいだけど無駄な足掻き、ご苦労様♪」
「さようなら♪」
彼のナイフを握る右手に力が入り、動き出そうとした。
その時!
突如として外から大歓声と悲鳴、相反する二つの声がそこら中を駆け巡る!
「!? なんだ? この騒ぎは? 何が起きている?」
次の瞬間!
ビシッ! バリィィィィン! と!
突如荒々しい程の強大な金色の炎が、先程エレインが足止め用に張った結界を豪快に突き破る!
「!!! なっ! この炎は!?」
そしてその炎に気を取られた次の瞬間!
キースの左腕が斬り落とされる!
「っ! ぎゃああああああああああっ!」
さらにそれと同時に解放されたエレインの身体を、先程の炎とは別の、青白い炎がまるで彼女を保護するかの様に覆い尽くし、キースから引き離す!
エレインを保護したその炎は、通常の炎の様な燃やしてしまう性質が一切ない特殊な炎であった。
「ぐぅぅっ! これは一体…… ! まさか……」
「邪魔だ」
その声に振り向くキースだったがその瞬間!
彼の背後から強力極まりない程の、目にも映らない速度の怒りの拳が、彼の首を無慈悲に、そして容赦なくへし折る!
その威力は彼のその身体を、大きな衝撃音と共に地にひれ伏させ、めり込ませる程であった!
「がはぁぁぁぁっっっ!!!」
金色の炎に身を包んで現れたその漢は、倒れたキースには目もくれず、ゆっくりとエレインの元へと歩み寄る。
そして、エレインを覆っていた青白い炎は消えていき、倒れている彼女はうっすらと朦朧になっている、その意識と視界の中で、だけども自身に近づいてくるその漢の姿を、両の瞳でしっかりと確認する……
彼女の瞳に光がもどり始める……
「!! な…… んで…… !?」
なんでこの
その漢は、彼女の前で膝をつき、驚きを隠せない彼女の身体を優しく…… だが力強く抱き寄せる。
「なぜって…… 忘れてしまったのかい?」
「必ず守ると約束しただろう?」
「遅くなってすまない…… もう大丈夫だ……」
慈愛に満ちた優しい表情で彼女にそう告げる閻魔大王……
「!! 大…… 王…… 様!!!」
大粒の涙を流すエレイン……
そしてここから…… 反撃が始まる!
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