第一章 天国か地獄か! 死神 霧島達也からのご案内

第5話 死神 霧島達也からのご案内!

死神に連れられて街を歩いていく黒崎。


 しばらく歩いていくと自分を連れている死神と同じ格好をしている者とそれに連れられている者が近くに現れあるいている。


少しするとまた一組、さらに一組と同じ方向に向かって歩いていく。


「おい、もしかしなくてもこの周りの連中……」


「ええ、あなたと同じ今、死んでしまった方々です」


「というか一緒にいる連中って死神だよな? あんた達のそれって制服? 皆同じ格好だけど」


「そうですよ。 死神は仕事中は皆この格好なんです」


「それと黒崎さん。 他に死神がいる場合ややこしいと思うんで、短い付き合いになるかもですが一応僕の名前を教えておきますね」


「あ、ちゃんと名前あるんだ」


 少し意外そうに返した黒崎。


「そりゃありますよ! 死神ってのはあくまであの世における職業名なので」


そう答えて死神は自身の名前を名乗った。


「霧島。 霧島達也と申します。 霧島とお呼びください。僕を呼ぼうとした時、他の死神が一斉に黒崎さんの方向いても困るでしょ」


 霧島は少し笑いながら黒崎にそう告げた。


「確かに」


「それで霧島さん。 俺達は天界ってのに向かってんじゃねえのか? 普通に街中歩いているだけに思うんだが」


「もう少しですよ。 黒崎さんが死んだ場所って最寄りの駅まで少し歩くんで」


「駅? 駅って何」


「だから天界行きの駅ですよ」


「え! 天界って電車とかで行くの?」


「そうですよ。 歩いて行くとなると結構時間かかりますし疲れますからね」


 意外そうな顔をする黒崎だったがそう話しているうちに前方に光の大穴のようなものが見えてきた。


そして前のグループが死神に連れられる様に穴の中に入っていっては消えていく。


「あそこを通ると駅になります。 もうすぐにでも電車が来るはずですよ」


光の大穴を通るとすぐに駅の乗り場に出て、他の死神や死者達もそれぞれ並んで電車を待っている。


「というかまんま駅だな!」


見た目普通のどこにでもある駅の電車乗り場である。


「ええ。 ちょっと時間がぎりぎりになってしまいましたが丁度良かったかもしれませんね。 次だと十分位待つので……ってそう言っているうちに来ましたよ」


霧島がそう言うとぼんやりと光に包まれた列車がこちらに向かってきた。


ゆっくりと停車してドアが開くと他の死神と死者達も普通に列車の中に入っていく。


そして霧島と黒崎も入っていく。


「今日は随分空いていますね。 座りましょうか。 黒崎さん」


 列車内はかなりガラガラでポツポツ乗客……というか死者達がいて同じ車両内は全てのグループがそれなりに間隔を空けて座れる位に落ち着いていた。


霧島に勧められる形で黒崎は座席に座ると、霧島もその隣に座ってすぐに列車のドアが閉まり発車した。


「ここからだと五つ先が終点の天界になります。二十分位で着くと思いますよ」


「そうか……」


「で、向こうに着いたらすぐに閻魔大王に会って天国行きか地獄行きかきめられるのか?」


「黒崎さん、閻魔大王『様』ですからね! お願いしますよ! 本当に!」


 強めにあせるようにくぎを刺す霧島。


「お、おう悪い悪い! あまり、というか普段全然呼び慣れてない存在だからというかつい」


「そりゃそうだよな! 何たって閻魔大王様だもんね!」


「気を付けるよ」


 霧島の迫力に押される形でそう返した黒崎。


「全く! 閻魔大王様は非常にお心が広い方ですが、気分を害されると何をされても文句は言えませんよ! くれぐれも! 失礼のないように!」


「わかった、わかったから! 俺が悪かったから!」


興奮気味の霧島をなだめ話題を元にもどす黒崎に対して霧島が先程の質問に答える。


「そうですね。 この時間帯ならまだお仕事をなさっていますので今日中に天国行きか地獄行きかの判決かは言い渡されると思いますよ」


「判決後地獄行きならそのまま自分が、天国行きなら死神ではなく担当の天使に案内を引き継ぐ事になってます」


「え? 天使もいるの!」


「ええ、いますよ。 基本的に我々死神は亡くなった方々の天界、そして閻魔大王様のいる場所までのご案内と地獄の管理、そして天国は天使の管轄となりますので」


「そうなんだ……」


「でもそれだけ聞くと死神の方がやること多くて大変そうだな」


 黒崎がそう言うと、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに霧島は声が大きくなる。


「そうなんですよ! 地獄行きの方々の労働管理も大変ですがそれだけじゃないんですよねえ」


「地獄行きの方々は言ってみれば問題児ばかりでちょこちょこ暴動を起こしたりするのでそれを鎮圧しないといけないのでかなりハードなんですよねえ!」


「いや鎮圧て、マジかよ! まあでも地獄に落ちる位の連中なら全然ありうるか」


「でもそれをできるとなると死神ってやっぱり強いんだな」


「まあ少なくとも生身の生きた人間よりかは比べ物にならない位には強いですよ」


 少し背筋がぞっとする黒崎。


 閻魔大王だけでなく死神であるこの男も怒らせない方が良さそうだと感じる黒崎。


 その様子に気付いたのか霧島が慌てて言葉を並べる。


「待って待って! 誤解のないように言っておきますけど死神というとイメージ悪いかもしれませんが基本的に死者の方々がヤンチャしなければ温和というか平和主義者ですからね! だからそういう目で見ないで!」


 警戒するような目をした黒崎に対して必死に訴える霧島。


「ま、まあ話を戻しますけど、そのかわり給料は天使側より少し良いのですけどね」


「え! あの世なのに給料なんてあんの?」


 驚く黒崎


「そりゃありますよ! 先程も言いましたが天界、いわゆるあの世にも仕事はありますから働いている以上は給料は発生しますよ!」


「でもそんな僕達死神の激務でボロボロの身体や心に溜まったストレスなんかを病院等でで治療したり癒してくれたり、僕達や天国にいる人達向けの娯楽施設の運営も同時に行っているので天使さん達も凄い大変なお仕事なんですよ!」


「そんなわけで我々死神も天使さん達に日ごろからお世話になっているし感謝してるんですよね!」


「へえ、どっちも大変だねえ」


「けど、持ちつ持たれつでうまくバランスとれてそうだな」


「そうですね。お互いやれる事をやっていってますし」


 そうした雑談交じりの説明を受けながら列車は天界に向けて走っていった。


 そして二十分程の時間が経過し目的地である天界の駅に到着した。


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