異世界パチンコ

メロンストーン

第1話 店で死んじゃったよ

  パチンコ、それは日本に住んでいれば誰もが知っているであろうあの遊び


 仕事終わりに小さくでも良いから出玉を出すあの興奮感を味わおうと俺は今日もホールに足を運んでいった。


「ボタンを押せ!」


「うわ〜」


「おい…」


 赤保留そして赤文字といかにも数字が揃いそうな組み合わせではあったものの、結局ハズレ演出



 このせいもあるからかいつも緊迫感のある勝負をしている気分に毎回なっている。



「おっと来たかな…」


 追加投資も含めて台を回していたら先読みチャンスが来てからの保留が進む毎に保留が青保留、緑保留、赤保留へと進化していき当たりそうな緊張感と共に台に釘付けになりながらバトルシーンを眺めていた。


「いける…このまま一気に…」


 キャラクターの台詞の文字も赤色になりもう流石に当たって良い状況に陥った。


 でも世の中はそう上手くは動いてくれない。


「全員ハンドルから手を離せ!」



 突如としてピストルを持った不審者らしき人物がホールに上がり込み大声で客や店員に向けて脅しを仕掛けてきた。


「ご…ご用件はなんでしょう…?」


「この店にある特殊景品を全部この袋の中に入れろ!出なければ撃つぞ!」


「ひぃぃぃ!分かりました!すぐに入れますので命だけはお助けを…」


 普通、この手の強盗は銀行に上がって金を要求するのがよくある展開だが、この男の場合はパチンコの事しか脳にないからか、金ではなく特殊景品を最初に要求してそれを例のあの場所で交換しようと若干回りくどい手を使おうとしているのであった。


「手を離せっつてもよぉ…当たんなよ…」


 客も手を上げ続けていれば携帯電話等で警察に通報される恐れがなくなるので全員ハンドルを握っている事が命の保証になる条件であったが、こんな時に限って俺の台が当たりそうになってしまっていた。



「倒した!右打ちでVを狙え!」


「いやだから当たるなよ!?」


 なんて事だ


 ここで追加投資で負けの状態で当たってしまったので普通ならここで喜びながら右打ちを始めるところではあるが、今は命の危機がかかっているのでハンドルに手が当てられなくなってしまっている。



「で、でもなぁ…ちょっとぐらいは良いだろ…うん」


 V入賞を外しまうとそこで終わってしまうので生きて帰る事よりも負けて帰りたくない気持ちの方が上だったからか、ついうっかりハンドルに手を当ててそのまま右打ちを開始してしまった。


 それが間違いだった



「おい…貴様、手を上げろと言ったはずだ…」


「あぁ…いやぁ…そのぉ…右打ちしたかったので…」



 向こうも気付いていないであろうと思ったがV入賞の激しい音が鳴り響いてしまったからか速攻でバレてしまい、銃口を頭に突きつけられてしまった。



「うるせぇ関係ねぇ!とっとと失せろやゴルァ!」


「ぎゃあ!?」



 バン!と銃声が鳴り響くと共に俺の頭が下に下がり、銀色だったはずの玉も赤色に染まっていき段々と意識が遠のいていった。

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