第11話 オタク気質、突撃 1
とある心地よい穏やかな晴れた日。
私の心はどんよりとどす黒いぶ厚い雲に覆われていた。
つまりはもんんんのすごく、心が重かった。
なぜなら。
「ベルベット嬢、とても気持ちの良い朝だね!」
きらきらとした笑顔を向けてくるこの男は、そう、何を隠そう――
――オタク気質な攻略対象その三、気弱な丸眼鏡である。
名前は忘れた。私には記憶力というものが存在しないので。
私の誕生パーティーのとき、私の藤の花好きが丸眼鏡にバレ、藤の花好きなヤツは私の屋敷に突撃してきたのである。
……ほんと、勘弁してほしい。
「ベルベット嬢! 僕と婚約してください! そして一生藤の花について語り合いましょう!」
なんという急展開。
こいつ、藤の花好きには悪い奴はいないとか思ってそうだな。
「そういう話は父上を通してほしい、ええと……」
「カインです!」
「カイン殿」
そもそも婚約とか言われてもな……そういう縁談とかは父上に任せてるし。
「大丈夫! ベルベット公爵には許可を取ってるよ! もちろん僕の父にも!」
なんということでしょう。
まさかの親公認。
そういえば、丸眼鏡の家は侯爵家で金持ちかつ権力を持ってたな。
……父上、笑顔で了承したんだろうな。
私は遠い目をしつつ、丸眼鏡に言った。
「……私は正直、恋愛婚に憧れている。だから、婚約は無理だ」
もちろん嘘である。
ただ……断るにはこれしかないかと。
「そっか……それなら仕方がないね」
丸眼鏡は残念そうにしながらそう言う。
これで一安心だ。
ほっ……としたのもつかの間、丸眼鏡が言う。
「なら、友達から始めよう! それから好きになってもらえれば、問題ないよね!」
……つまり、あきらめてないってことだな。
私の頬がひきつったのは言うまでもない。
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