第6話 神童 sideレイク=ライナー
俺は天才である。
名はレイク=ライナー、平民の宮廷魔術師だ。
普通、平民が宮廷魔術師になるのは難しい。
なぜなら平民には魔術の才能がほとんど無いからだ。
――魔術の才能は遺伝する。
それが人類の考えだ。
それはだいたい正しい。
ただし、それには一部例外が存在する。
それが俺だ。
俺は幼いころに魔力暴走を起こしたことがある。
魔力暴走――それは、器の限界を超えて魔力の素である【魔素】を体内に取り入れたことで起こる、魔力の暴走だ。
魔力が体内で暴走すると魔心臓(魔力をためる器)を傷つけるために、生命維持に必要な魔力をためることができなくなり、結果的に魔力欠乏症となり死に至る。
――という恐ろしいものだ。基本的に生還できることは少ない。
しかし俺は魔力暴走から生還した。
しかも魔心臓の領域拡大という大きなおまけ付きで。
俺の魔力適正は火と風という平凡なものだったが、それでもこの魔力量を武器に努力し、宮廷魔術師にまで上り詰めたのだ。
俺は天才だった。
――あの日までは。
その日は、ベルベット公爵家の一人娘の魔力適性検査が行われる日だった。
その魔力適性検査には、鑑定士の資格を持つ俺が行くことになった。
「ああー、めんどくせぇ」
貴族の娘なんかどうせ魔術師目指すでもないのに、なぜ魔力適性検査を受けさせるのかねぇ。
そんな不満を持ちつつ公爵家の門戸を叩くと、そこにいた公爵令嬢はなんと平民より少し多い程度の魔力しか持っていなかった。
はっ、これが公爵家か。笑わせてくれる。
「ヴィオラ、この方が今日の魔力適性検査を担当してくださるレイク殿だ」
公爵家当主が俺のことを公爵令嬢に紹介する。
俺は公爵令嬢のことを内心見下しつつも、表面上だけは友好的に笑いかけた。
「君がヴィオラ嬢だね? 私は『レイク=ライナー』……宮廷魔術師を勤めている者だ。今日は私が魔力適性検査を担当することになるよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
どーせ魔力適正だってたいしたことないだろうし、こんな検査に意味があるのかねぇ?
俺はそう思いつつも、検査に必要な水晶玉を取り出した。
「……じゃあ、さっそく魔力適性検査を始めるよ。ヴィオラ嬢、この水晶玉に手をかざしてくれるかな?」
「はい」
公爵令嬢が水晶玉に手をかざすと、水晶玉が不思議な色に光り始めた。
翡翠色、淡い紫、萌葱色、淡い桃色、灰色、藍色、そして虹色。
「――は? いやいやいや、七属性とかあり得るのか……!? しかも珍しい属性ばかりだぞ……!?」
俺は思わずつぶやく。
それほどまでに公爵令嬢の魔力適正は異常だった。
風はまだしも、魅了、音、夢、糸……。
あとの属性は俺でさえも知らないほどに珍しい属性。
しかしわかる範囲の属性でさえ有能な属性だ。
公爵令嬢が魔術師になったら、きっとひっぱりだこだろう。
しかも、史上初となる七属性だ。
魔術師になったらきっと、すぐに宮廷魔術師にとスカウトされる。
魔力量は俺が勝っているとはいえ、公爵令嬢を鍛えればすぐに魔術師としての力量は公爵令嬢のほうが上になるだろう。
俺はこんな才能の塊を馬鹿にしていたのか。
なんとなく惨めになり、俺は
……いやだもう、お家帰りたい。
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