第5話 魔法と魔術、そしてさりげないチート




 

 待ちに待った魔力適性検査日がやってきた。

 検査は、鑑定士の人を屋敷に呼び行うらしい。


「ヴィオラ、この方が今日の魔力適性検査を担当してくださるレイク殿だ」

「君がヴィオラ嬢だね? 私は『レイク=ライナー』……宮廷魔術師を勤めている者だ。今日は私が魔力適性検査を担当することになるよ。よろしくね」

「よろしくお願いします」


 レイク=ライナー氏はそう言うと、にこりと人好きのする笑顔を浮かべた。

 ……なんとなく見下されている気がする。

 気のせいだろうか?



「……じゃあ、さっそく魔力適性検査を始めるよ。ヴィオラ嬢、この水晶玉に手をかざしてくれるかな?」

「はい」


 私が水晶玉に手をかざすと、水晶玉が不思議な色に光り始めた。

 翡翠色、淡い紫、萌葱色、淡い桃色、灰色、藍色、そして虹色。


「……これはいったい何の属性なのでしょうか?」

 私はレイク=ライナー氏にそうたずねつつ、レイク=ライナー氏のほうを向いた。


 ……レイク=ライナー氏は放心状態だった。


「――は? いやいやいや、七属性とかあり得るのか……!? しかも珍しい属性ばかりだぞ……!?」

 レイク=ライナー氏は何かぶつぶつと喋っている。


「あのー……、あの、レイク殿?」

 父上もこの事態に困惑しているようだ。


 早く属性を教えてもらいたいのだが……この様子じゃレイク=ライナー氏は使い物にならないな。

 あー、自分で確認出来たらなー……。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【個体名】 ヴィオラ=ベルベット

【種族名】 人間

【魔力適正】風 魅了 音 夢 糸 情報 付与

【魔力量】 50/100

恩恵ギフト】  魔法 精霊の耳 精霊の声 精霊の瞳 精霊王の寵愛 狂月猫ルナティック・キャットの因子 

【固有術式】魔装

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 私の目の前に半透明のウィンドウが出てきた。

 !? ……なんだこれ。なんか急に出てきたぞ。

 そこに書かれている内容は、さながらステータスのようだ。

 なぜこんなものが……? 誰か説明してくれないものだろうか……。


《それは主様マスターの魔法の力によるものです》


 目の前に、半透明のカラスが現れた。

 !? なんだ?


《はじめまして。主様マスターが魔法の説明を求めたため、魔法により創られた妖精AIです。主様マスターを以後サポートします》


 な、なるほど?

 つまり、私がこのステータスのようなものを説明してほしいと願ったから、説明してくれる存在が魔法で創造された……ということか?


《その通りです》


 うーん……。いまいち信じられんが、まぁそういうものだと思っておこう。

 それならば、このステータスのようなものの説明を頼む。


《これは主様マスターの考えている通り、ステータスそのものです。主様マスターの魔法により創られました》


 そうか、やはりステータスなのか……そういえば、魔法、魔法っていうが、魔術とは何か違うのか?


《はい。魔術は魔力を術式に通して行うものですが、魔法は魔力のみで扱い、術式を使わないものです。代わりに大量の魔力を使いますが》


 なるほど……魔力をたくさん喰う魔術といったところか。

 あとは、この世界の平均魔力について聞きたいんだが……――


「――ヴィオラ、ヴィオラ! 何ボーっとしてるんだ。レイク殿が復活なされたぞ」

「うぇ!? は、はい。復活なされたのですか、レイク=ライナー殿が」


 父上に肩を揺さぶられた。妖精AIに質問している間に復活したようだ。

 そんなことよりもこの世界の平均魔力について聞きたかったのだが……。

 しょうがない、妖精AIにまた後でこう。


「ほらあれだ」


 父上に指さされたほうを向くと、レイク=ライナー氏が陰鬱いんうつな雰囲気でしゃがみこんでいた。


 ……なんで?

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