第4話 邂逅、オタク気質
※ 4/21 一部セリフを変更しました。
転生に気づいてから一年が過ぎ、私は今日で七歳となった。
どうやらこの
一年学んだだけで指南役よりも強くなってしまった。
トレーニングも実を結びはじめ、姿勢がよくなり筋力が増えた。
とても喜ばしいことである。
頑張った甲斐があるというものだ。
私が剣術にトレーニングにといそしんでいると、父上から呼び出された。
「何でしょうか、父上」
「五日後おまえの誕生日会を行う。もうドレスは数十着仕立ててあるから、その中から選びなさい。……あぁ、そういえばプレゼントは何が欲しい? 何でも言ってくれ」
そうだな。プレゼントか。欲しいものといえば剣だが……。
短剣が欲しいな。護身用に。
「短剣が欲しいです、父上」
「――何か女の子らしいものは」
「短剣が欲しいです、父上」
「ぬいぐるみとか」
「短剣が欲しいです、父上」
「……わかった。最高級品の短剣を用意させよう」
よし、勝った。これからは短剣術に力をいれるようにしよう。
「……ああそれと、誕生日会の後に魔力適性検査を行うから心しておくように」
「! 了解しました、父上」
ようやく魔術が使えるのか!
魔術の先生を確保しないと。楽しみだなぁ。
五日後。
私は自分の誕生日会に出席していた。
……だが、私の誕生日だというのに私は挨拶ばかりで全然楽しくない。
ドレスは重いし。
私は鍛えていたからこの程度平気だけど、他の子達はドレスが重くないのか?
疑問だ。
挨拶が一通り終わったところで、私はさっさと逃げることにした。
父上には、お花を摘みに行ってくると伝えた。
トイレに行くなんてもちろん嘘だ。
私は会場の窓からバルコニーに移動し――
「――ああぁ、愛しのエリー。君はなんて美しいのだろう……」
「まぁダーリンったら♡」
……どうやらお取込み中のようだ。
しょうがないので、会場から裏庭に移動する。
裏庭には、私の好きな藤の花の庭園がある。そこで休むとしよう。
私は庭園に備え付けてあるベンチに向かった。
……しかし、どうやら先客がいたようだ。
ベンチにはふわふわとしたはちみつ色の髪を持つ、翡翠の瞳の気弱そうな丸眼鏡の美少年がいた。
この子、なんだか見覚えがあるぞ。
どこで見たんだろうか?
「――だ、だだだれですかいったいあなたはっ……!?」
少々考え込みすぎてしまったらしい。
ベンチに座っている少年から警戒されてしまった。
警戒しすぎのような気がしなくもないが。
「君こそ誰だ? ここは私の庭園なのだが」
「わ、『私の庭園』……!?」
「そうだ。私は『ヴィオラ=ベルベット』――ベルベット公爵家の娘だ」
「――公爵令嬢!? 今日のパーティーの主役じゃないですか!? なぜこんなところに」
「別にそんなの私の勝手だろう。というか君は誰だ? なぜここにいる?」
「ええ……確かにその通りですけど……。僕は『カイン=シルクフォード』……シルクフォード侯爵家の次男、です……」
――ああぁ、思い出した。
少し幼いけれど、彼は攻略対象その三――気弱な丸眼鏡だ。
名前は忘れていた。キャラ名覚えるの苦手なので。
だがなぜ、その彼がここにいるのか……
「えと、僕がここにいたのは、藤の花が好きだから……」
「……ほう。君も藤の花が好きなのか?」
ゲームではそんな設定なかったな。
「君もってことは……ベルベット嬢も好きなのかい⁉ いいよね藤の花はとてもいい香りだし見た目も可憐でかわいいしなにより何十と連なる姿は美しい――」
「す、ストップ! 落ち着け、な? 私と話しているよりも、藤の花を見たほうがいいとは、思わないか?」
「そ、それもそうだね! こんな庭園が見られる機会はそうそうないしね!」
そういえばこいつにはオタク気質という設定があったな……。
危なかった……このまま永遠と語られ続けるところだった。
というか私から言ったとはいえ、さらっと失礼なこと言ったな。
「――ヴィオラー、ヴィオラー! どこにいるんだー!」
ふと遠くから父上の声が聞こえてきた。
どうやら私を探しているらしい。
「私はもう行くとしよう。ええと、またいつか」
「う、うん! また二人で藤の花の話をしようね! 約束だよ!」
……それは勘弁してほしい。
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