さすらいのはな唄

如月つきこ

第1話 沖田との出会い

集落の黒い煙の篝火。混沌の雲からうずを巻くように

大粒の雨がザーザーとあたりを濡らす。

あられが混じり、かじかむ手は暁子の小さな命を少しずつ蝕んでいく。


「もう大丈夫だよ」


そう言われて振り向いたら、

ポニーテールが凛と靡く幼い顔をした青年に出会った。


彼の名前は沖田総司と言った。


そんな格上だとその時の暁子にわかるはずもなく、

暁子は首を傾げるばかり。

沖田は手を差し伸べ、暁子を新撰組へと招いた。


村人に反抗した時の姿が、とても印象的だったという。


「この子が言っていた子ですよ斎藤さん」


 沖田が連れてきたのは斎藤一の部屋。彼はその部屋で事務業に勤しんでいた。

普段仕事をしない斎藤さんがどうしたんだろう、と沖田は不思議そうな

目をしたが・・・。


斎藤「あぁおつかれ沖田くん。ほらあれだよ。そいつの転出届」

沖田「あぁ、そうでした。うっかりしてました。ありがとうございます」

斎藤「ーーーと、それはいいもののどうなんだね?その子見る限り怯えているようだが

   使えるのかい」


 そう斎藤に尋ねられると、沖田は「怯えている?」と首を傾げた。

怒り狂った村人にあんなに攻撃されてもうろたえなかったこの娘が、

今更何に怯えるのか。

そう、その正体は、斎藤が手にしている見たこともない分厚い書類や印鑑、

書類の山、山だった。


 沖田は自分と同じ血を持つものを継承者にしたかったようだが、

これは仕事の苦手な斎藤一にそっくりだから無理だろうと諦めた。


沖田「しょうがないなぁ。それじゃ、この子斎藤さんに任せます」

暁子・斎藤「「え!!???」」


沖田「それじゃ僕は忙しいのでこれで」

斎藤「おいバカこんなバカを俺に預けようとするな!逃げるな待て沖田あああ」


暁子(バカって・・・色々ひどいよ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る