第三話 計画の実行
~???視点~
「報告します。どうやら奴らはラルスの情報を隠蔽工作しようとしています」
「ふん、無駄なことを、私は既にやつの情報を握っていると言うのに」
部下の報告を聞きながら、私はほくそ笑む。
第一騎士団たちがいくら先手を打ってラルスの情報を隠そうとしても、この作戦が行われる前から既にあの少年の情報を手中に収めているのだ。いくら頑張ったところで水疱に帰する。
「それで、これからどうしますか? アルベルト第二騎士団長?」
「そうだな。本来の目的は国王を抹殺し、この国を乗っ取ることだ。その準備を進めておけ」
「ハッ! 了解しました」
敬礼して部下はこの場から離れて行く。
「玉座の間では、上手く誘導することに失敗したが、他の策を考えるとするか」
胸の前で腕を組み、思考を巡らせる。
ラルスの件を利用して、この国の兵力を分断しようと思っていたが、第一騎士団長は噂通りの男だった。間抜けそうに見えて、こちらの目的を見抜き、上手く話しをあやふやにさせられた。
次の議論が行われる時間では間に合わない。こうなってしまった以上、別の作戦を考えなければ。
心の中で独り言を呟きながら窓の外を見る。
すると中庭に1人の女性がいることに気付く。
頭の上にはティアラが乗っており、長い金髪の髪は太陽光に当たって光り輝いていた。端正の整った顔立ちは誰もが魅了されるほどの美しさを感じられる。その特徴を持つ女は、この城には1人しかいない。
「王女か。これからこの国が私の物になるとは知らないで、呑気に中庭を散歩されておる」
彼女を見た瞬間、脳裏に作戦が思い浮かんだ。
「よし、次は王女を使うか。王女が攫われるようなことになれば、いくらなんでも兵力を分断せざるを得ない。おい、そこに誰かいるか?」
「ハッ! 何でしょうか?」
廊下側に誰かいないか訊ねてみると、扉を開けて一人の兵士が入ってくる。
彼は私の部下だ。当然私の目的も知っている。
「次の作戦が決まった。ラルスを利用するのが難しくなった以上、次は王女を攫う。その手筈を済ませておけ」
「了解しました」
部下の兵士は敬礼をすると、部屋から出て行く。
「さて、それでは私も準備をするとするか」
~セレーヌ王女視点~
馬車の中で揺られながら、わたくしは隣国に向かっていました。
何やら隣国ではダンスパーティーが行われるらしく、政務でお忙しいお父様の代わりに出席することになりました。
「王女様、隣国に到着するまで長旅になりますが、御気分は大丈夫ですか?」
わたくしの対面席に座っている侍女が、気遣って声をかけてきます。
「ええ、大丈夫ですわ。わたくしはいずれ、この国を治める女王となる身ですもの。このくらいで疲れる訳にはいきませんわ」
彼女を心配させないために、笑みを浮かべます。
馬車の窓から外の光景を眺めていると、違和感を覚えました。
あれ? いつの間にか道が違う?
これはいったいどう言うことなのでしょう? どうして前回と道が違いますの?
「前回通った道とは違うみたいですが、これはどう言うことなの?」
「王女様、すみません。前回通った道はどうやら土砂災害が起きたらしく、回り道をしないといけなくなりました。ご報告しておらず、申し訳ありません。ですが安心してください、予定通りにいきますから」
第二騎士団長のアルベルトが、別の道を進んでいる理由を語ります。
なるほど、そのようなことが起きていたのですね。確かに先日は豪雨でしたので、土砂が崩れていてもおかしくはありませんわ。
ホッとすると、再び外の風景を眺めます。ですが、違和感が拭えずにいました。
馬車はどんどん本道から外れて脇道を進んでいます。いくら遠回りだと言っても、このまま進めば森の中に入ってしまいますわ。
「アルベルト、道を間違えていませんか? いくら何でも、この道では隣国に辿り着けませんよ」
窓から顔を出し、再び第二騎士団長に問いかけます。しかし、彼は何も返事を返しませんでした。
「アルベルト! 返事をしなさい! わたくしをどこに連れて行くつもりですか!」
「どこに連れて行くだと? アハハハハ! お前の目は節穴か! 見て分かるだろうが! 人気のない森の中だよ! お前は私が王になるための道具だ! お前を誘拐し、救助のために戦力を分散したところを私が王の首を刎ね、新たな王になる」
笑い声を上げながら、第二騎士団長は己の目的を暴露します。
お父様への叛逆!
「兵士たち、何をしていますの! 今すぐにその男を捉えなさい!」
護衛の兵士たちにアルベルトを捕まえるように言いますが、彼らは第二騎士団長を捕らえようとはしませんでした。
「いくら王女様の命令でも、こいつらは私を捕らえようとはしない。部下たちは私の命令だけを聞く存在だからな! さぁ、どんどん突き進め! 私が王の首を刎ねるまでの時間稼ぎができるところまでな!」
どんどん森の奥へと馬車が進む中、冷静になって周囲を見渡す。
こうなっては、馬車の扉を開けて飛び出すしかありません。
「このままではお父様の命が危ない。馬車から飛び降りますわよ」
侍女に声をかけた瞬間、彼女はわたくしの腕を握って首を左右に振ります。
「いけません……だって私の仕事は、王女様を馬車の中に止めることですから」
「何を……うっ!」
侍女に言葉を投げかけようとしたその時、口に布を押し当てられました。その瞬間、激しい睡魔に襲われ、気が付くと瞼を閉じていました。
そして次に目が覚めたときには、見知らぬ場所に幽閉されていました。
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