第13話 好きだったのよ貴方… ①

『まさか、あっちのシャンパン20倍が反映されなかったのか?』

思わず口にしたけど、それはすぐに違う事に気づいた。そうであるなら当然2位にトットの名前があるはずだから……


『私たちには分からないけど運営からレオになんか来てない?』

ピノコのコメントを見て反射的に運営からの連絡欄を開いた。


〚今回のイベントは1位の方の辞退により貴殿が繰り上げで1位となりました。つきましては賞品のお届け先ご住所に変更が無いかを確認させて頂きたく…〛


俺はそれを声に出してみんなに読み聞かせた。リスナーのみんなも『????????????』ってコメントしている。


枠終了5分前に突然モルが飛び込んできた。

『ツギツギがこの件取り上げるって』


ツギツギとは正式にはヒョウタンツギって名前の配信者だ。彼のやっている【ツギツギニュースフカボリ】って枠では、このサイトで起きた様々なゴシップを紹介している。

実際に、俺も過去の件で取り上げられた事があったから近づこうともしなかったけど。


とにかくツギツギの枠を鑑賞してから時間が合うメンバーで集まろう!そう約束して枠を閉じた。


ツギツギの枠で語られたトットの永バンについてだった。

理由はいわゆる自投げ行為。ただ今回はかなり悪質と判断されての永バンだ。

リスナーに営業かける配信者はちょくちょくいるが今回のトットの事例は『金はいくらでも払うからレオに負けないように投げてくれ』というものだった。

しかし予想以上の金額にケツをまくったトットが『アイテム投げるのは自己責任』と言い出したらしい。

さすがに怒ったリスナーが運営に報告したというものだった。

通話で頼んだから証拠もないとタカをくくっていたトットだったがリスナーの方が1枚上手だ。

しっかり通話を録音していたらしく運営と同時にツギツギに情報提供していたのだ。

そのニュースの中でかつてエースと言われて一気に登りつめたレオが女性トラブルを経て奇跡の復活なんて言われている。


普通なら喜ぶところなんだろうけど…俺はメルモに過去の出来事を聞かれるのが怖かった。説明出来る自信も無いまま枠を開いた。


開いてイツメンがまだ揃わない内に一斉に(初見)をつけたリスナーがなだれ込んでくる。

もちろんそれ以外に懐かし顔ぶれも…

『はじめまして』と『久しぶり』に囲まれそれらをオウム返ししか出来なかったけど…


それでも一斉に花火が飛ぶ!

『復活祝い』だの『㊗️』だのコメント合間に飛ぶ花火にピノコの『花火(''∇^d) ナイス☆!!』も間に合わない。


もう翌日にはいわゆるツギツギバブルも去って怒涛の様な閲覧数は無くなったけど、それでも通ってくれる新たな顔や『ただいま』と来てくれる懐かしい顔ぶれでまた俺の新たな配信人生がスタートした。


みんながお互いの事を話したり、時には俺をいじったり…あぁ俺がやりたかった配信ってイケメンだとかイケボだとか持ち上げられるんじゃなく、こういうアットホームな枠だったんだよな。俺が1番欲していた家庭的な…


そんな事をぼんやり考えていた時、誰かが枠に入室した。

〚奇子(初見)さんが入室しました〛の文字

『こんばんはキコさん、はじめまして』

俺が挨拶の言葉を言い終わらない内にコメントが走る。

『レオお久しぶりね』

『え?誰?』

墨を流した様な真っ黒なアイコンにも名前にも全く心当たりがない。

『レオったら相変わらず冷たいのねꉂ🤭』

その言葉の次のコメントにコメント欄と俺は固まった。メルモ以外は……


『もう忘れちゃった?アヤコよ♡』

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