第3話 館内確認

 私たちは、予想外なマスクの形状に驚きながらも、思わず見入ってしまっていた。

「このガラスケース、強度とかはどうなってますか?」

「ああ、はい、防弾ガラスになってます。重さが80キロありますから、台から外すことは難しいと思います。もし少しでも動いた場合、非常ベルが鳴り響き、警備会社に連絡がいくようになっています」

「なるほど、素晴らしい防犯対策ですね。ですが、電源を切られてしまうと意味がありませんね」

「いえいえ、大丈夫です。この台の中で自動発電していますから、その心配はありません。台自体は200キロ以上ありますので、台ごと盗むことは不可能です」

 私たちは感心しながら聞いていた。

「あー、では、作戦を練りましょうか」

「はい、よろしくお願いします」

 私たちは警備のための職員を残して、事務室へ移動した。


 黄金のマスクが展示されている宝の間には、内側に三台の監視カメラが設置されていた。それと、部屋の外側の入り口上に一台、室外に向けて設置されてあった。美術館は一階建てで、天井の高さが6メートルもあった。事務室以外には窓はなく、館内に二十台の監視カメラが設置されているということだった。事務室の窓には防犯対策として、警備会社と連動する防犯装置が取り付けられていた。

「通風口はどうなってますか?」

「通風口は十分すぎるくらいの広さがありますが、侵入対策で、細かく区切られてます。ですが、火事の場合にでも十分に排煙機能が働くように設計されております」

「通風口からの侵入は不可能ということですね」

「ええ、はい」

「地下はどうなってますか?」

「地下室等は一切ありません」

 私たちは館内の見取り図を見ながら説明を受けた。それから、館内を歩いて、チェックして回った。特に気になる点はなかった。


「警察が泊まり込みで警備しますので、宝の間に持ち込みたいものがいくつかあるのですが……椅子とか飲み物とか」

「ええ、何を持ち込んでいただいてもかまいません」

「よかった」

 係長は少しホッとした感じだった。おそらく缶コーヒーを持ち込みたかったのだろう。

「えー、係長ー、泊まるんですかー」

「当たり前だろ」

 京子はすごく嫌そうだった。

「じゃあ、高木と嶋村を呼ぶか」

「えっ、係長、先輩方を呼ぶのですか?」

「おう、俺ら三人じゃ少ないだろ」

「えー、男臭が増えるじゃないですかー。高校の柔道の部室じゃないんですよー」

「ああ、その辺は大丈夫ですよ。先ほども言いましたが、ベンチレーションシステムがしっかりしてますので、安心して下さい」

 森中さんが優しく答えた。

「……あの、そういう問題では……」

 私はつぶやきのツッコミを入れてしまった。

「そうだー、先輩に、泊まるの代わってもらおー」

「おう、嶋村か、おう、おう、いや、こっちに来てもらおうと思ったんだが、おう、おう、そうか、仕方ないな、おう、わかった、よろしく頼むぞ」

 係長は残念そうに電話を切って、京子の方を向いた。

「おう、磯田、嶋村も高木も、忙しくて来られないそうだ」

「えー、代わってもらう予定してたんですけどー」

「あの、係長、先輩方は何か捜査を担当されてるんでしょうか?」

「おう、そうだ。予告状が投函された郵便ポストがどこかとか、予告状に指紋がついてるかとか、紙の種類とか、いろいろとあるだろ」

「はい、なるほど、そうですね」

「じゃ、買い出し、行くか。お前ら、何か必要なものあるか?」

 係長はメモ帳を取り出して、私たちに尋ねた。

「えーーー、係長に食べ物買ってきてもらったら、何か変な薬とか入れられてるかもしれないじゃーん」

「おう、そんなことするわけないだろ。じゃ、香崎、行ってきてくれ」

「えーーー、私と係長で待っとくの、嫌ですよー」

「おう、じゃあ、お前が行けよ、磯田」

「えーーー、一人で行くの嫌ですよー」

「じゃあ、どうすんだよ!」

「私と小春で行きますよー」

「勝手にしろ、まったく」

 係長は私に、買ってきて欲しい物リストを渡した。私と京子は山の麓のコンビニまで買い出しに出かけた。

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