第49話 お誘い
『(ねーね)今、通話出来る?』
夜、いきなり送られてきた寧々からのメッセージを見て、思わず寝転んでいた体を起こす。
え? なに……? 何の用だろう? やだ。ちょっと怖い。
『(ねーね)通話するわよ』
自身のメッセージに既読がついたことが確認できたのか、一瞬で通話がかかってきた。
あわわ……とりあえず出なくちゃっ。
「も、もしもし」
『もしもし……悪かったわね。いきなり通話なんかして』
「いや、大丈夫だけど……あ、もしかしてこの前言ってたスタバーの件? 中止になったとか?」
『は? そんなわけないじゃない。ふざけたこと言ってるんじゃないわよ。スタバーは何があっても絶対に行くから。いい? わかった?』
「え、あ、はい……す、すいません」
軽い気持ちで言ってみたらめちゃくちゃ怒られてしまった……
『土曜日、祭り一緒に行くわよ』
……え?
『はい決まりね』
ちょっ、はや。
「あの……寧々さん。僕の返答……」
『は? 何言ってんの? あんたに拒否権なんてあるわけないでしょ?』
えぇ……(困惑)
『ということで、土曜日夕方の6時に駅集合ね。遅刻厳禁だから』
かなり一方的に時間と場所まで決められてしまった。
おかしいな……こういうのってお互いの意見を尊重しあって成り立つものだと思っていたんだが。
というか、そもそも……
「お祭りは月曜日みんなで行くんだから、土曜日に二人で行く意味は……」
「うるさいわね。祭りなんか何回でも行っても問題ないでしょ。あんたの初めて祭りはこの私と一緒に行くのよ。なに? 文句ある?』
「な、ないです……」
『うんうん。そうよね。それじゃおやすみ』
「お、おやすみなさい」
土曜日、寧々と二人で祭りの行くということで話は纏まった。(かなり一方的に)これにより俺は同じ祭りに2回行くというお祭り大好き人間みたいなことをするハメになった。
「……ま、まぁ楽しみが増えるのはきっといいことだよな。うん」
それに、あれだ。きっとリア充陽キャの中では『あるあるなこと』なんだろう。
ブー、ブー。とまたスマホが震えた。
ん? また寧々からの通話か?
画面を見るとそこには『はな』と書かれてあった。
え? 華から? こんな時間に? 珍しいな。
「もしもし」
『あ、もしもしー十兵衛くんこんばんわ。今大丈夫かな?』
華の声はどこか緊張しているように感じた。
「うん。大丈夫だけど、どうしたの?」
『あー……うん。ちょっとね』
なんだ? 華にしては珍しく歯切れが悪いな。なにか話しにくいこと……悩み事か?
『げ、月曜日のお祭り。た、楽しみだよね!』
「そうだね。みんなと屋台とか回るの楽しみだよ」
その前に寧々と二人で行くというのは黙っておく。
『あのさ……』
「うん?」
『えっと……』
しばらく沈黙が続いた。
本当に珍しいな。どうしたんだろ。いつもの華とは少し違った感じがする。
『あれ? どうしてだろ……もっとスムーズに言うはずだったのに……』
その違和感は華自身も感じているようだ。
『あのさ!』
「は、はい」
いきなり、声のボリュームが上がり少し驚く。
『日曜日! 二人で一緒に花火を見に行かない?』
「エ……」
まさかの夏祭りへのお誘いだった……!!
な、なにが起こっている?
寧々に引き続き華からも?……これはなにかのドッキリなのか?
それともあれか、都合の良い夢か?
『……さっきも言ってたけど花火が見れる穴場案内できるし、良かったらなって』
「え、あ、あぁ……えっと」
ど、どうしよう。このお誘いは受けるべきか?
いや、でも……土曜日に寧々と一緒に祭りに見に行くんだよなぁ。その時きっと花火も見るだろうし。
ならわざわざ案内してもらうのは違うというか。不誠実というか。華の気遣いもありがたいけど、ここは断った方がいいのかもしれない。
うん……その方がいいかも。大天使である華さんの時間を陰キャの俺に使わせるわけにはいかないしな。
『それに……なんか、えっと……私、十兵衛くんと一緒に花火みたいかも……なんて』
「あ、行きます」
こんなこと言われて断れるかぁ!!
もう無理じゃん!! 一緒に見に行きたいとか言われたらオッケーするしかないじゃん!!
コミュ障の陰キャは他人からのお誘いを断れるほどお偉い身分ではないのだ。
ありがたく、お受けさせていただこう。
『そ、そっかそっか! わかった! それじゃ時間とかはまた連絡するからよろしくね!! えへへ……十兵衛くん。おやすみっ』
「お、おやすみなさいー」
そして華との通話も終了した。
「…………………………ふぅ」
夏祭りのスケジュール。
1日目 寧々と二人で祭りに行く。
2日目 華と二人で花火を見に行く。
3日目 黄瀬さん含む4人で行く。
おいおいおい。なんてこった。今まで祭りに行ったことがない俺が3日間フルで行くことになるなんて……
「……どーしよ」
正直、怒涛の展開すぎて頭がついていかない。
クラス……いや学校中でもトップクラスの人気を誇る黒宮寧々・白咲華と一緒にお祭りに行くことになった。
しかも、1日ごとに。
うわぁ、とんでもないことになっちゃったぞ。
いや、まじでどーすんのこれ。
思わず頭を抱えしまう。
こうなったら今、やらなければいけないことは1つ。
たった1つだ。
今、すべきことは。
「黄瀬さんに相談だ!!」
俺は黄瀬さんのアイコンをタップして通話ボタンを押した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます