第25話 相談
前回までのあらすじ。
落ち込んでいる白咲さんに頑張ってチョコレートのお菓子を渡したらなぜかお悩み相談を受けることになった。
黄瀬さんにはロインのメッセージで事後報告を求められ、黒宮には帰ったら通話で何があったのか報告するよう求められた。
そして今、オシャレなカフェで白咲さんと二人、パフェを食べている。
やはりと言うべきか、二人でいるとそれはもうどこからともなく羨望のような視線と嫉妬の言葉が俺へと突き刺さっている。
はぁ? なんであんな可愛い子があんな陰キャと……
みたいな。
でも、そんな言葉に気にしている余裕なんてない。
今の俺は仮にも相談を受けた身、上手く対応しないといけないのだ。
「あの……白咲さん。相談と言うのは?」
「うん……それがねー」
話によると、どうやら白咲さんは年下の男子を怒らせてしまったとのことだ。それ以降、話しかけづらくなってしまい目すら合わせてもらえない。どうすれば良いのかわからないらしい。
……ふむ。
人間関係のお悩み相談だったかぁ……!!
えぇ……マジかよ……よりによって人間関係の悩みなのかよ……少し前までぼっとだった俺に相談する? 人選ミスってない?
し、しかし、か、仮にも相談を受けた身、う、う、上手く対応しないと……!!
「ちなみに、そうなった原因は?」
「……ちょっと私が怒らせちゃって」
「なるほどね」
……全然分からん。どうしよこれ。え? なんで怒ったのか聞いてもいいのかな? いや、そこまで深く追求しないでおくべきか……?
「……わかった。それじゃあ、その男の子について教えてくれないかな?」
「え? テツくんの事を?」
なるほど、名前はテツくんさんか。
「うん。どんな人なのか分かれば、俺もどうすれば良いのかアドバイスができるかもしれないし……」
「わ、わかった……でも、何を話したら……」
「まずは、最近起きた出来事でもいいよ。こんなことがあったーとか」
「そ、そうだね……それじゃあ……1週間前の事なんだけどー」
話していくうちに熱が入っていったのか、段々と楽しそうに話し始める白咲さん……
それに対して俺は
「そうなんだ!」
そうなんだ! BOTに成り下がっていた。
とりあえず脳死でそうなんだ! と返しておくことで会話している感をかもし出していた。
もちろん決して話を聞いていない訳ではなく、頭の中ではきちんと情報整理をしている。
白咲さんの話を聞いていると「テツくんさん」という男の子は高校1年生でサッカー部に所属しているスポーツマンとのことだ。
少し素直ではなく、マイペースなところもあるらしいが、優しくて、思いやりのある子らしい。
テツくんさんの人柄の良さは微笑みながら話す白咲さんの表情を見て理解できた。白咲さんにとってテツくんさんは大切な存在で……だからこそ、今の状況が不安なんだろう。
なるほど、どうやら『白咲華彼氏持ち概念』は実在していたようだ。
「テツくんさんの好きなケーキでも買って、気軽に話しかけて見たら? それでちゃんとごめんって謝れば大丈夫だと思うけど」
「……う、でも無視されたらどうしよう……避けられてる気もするし……」
こんな弱気になった白咲さん初めて見たぞ……
こうなったら多少は粗治療だけど……!!
「テツくんさんは勇気を振り絞って謝まろうとしている人を無視するようなひどい奴なの?」
「そ、そんな子じゃないよ!」
白咲さんは強く、すぐに否定した。そして言葉を発した直後はっとした表情を見せる。
「なら、きっとそれが答えだよ」
「……うん」
そう、それはきっと白咲さんが一番理解している事だ。彼のことを熱心に楽しそうに話していた彼女だからこそ。
「そうだよね……うん。テツくんそんな子じゃないのに、私が勝手に拒絶されるかもって怖がってたなんだ。ちゃんと、見てなかった」
しぼんでいた風船が膨れ上がるようにみるみる明るくなっていく白咲さん。
「ありがとう佐藤くん。私、やってみるね!!」
「うん、白咲さんならきっとできるよ。俺が保証する!」
ま、俺なんかの保証じゃあ気休めにもならないんだけどな!!
復活した白咲さんとケーキを買いに行き、改札口まで見送った。
………………な、なんとかやり切ったぁ!!
正直、恋愛相談を持ちかけられた時は終わったと思ったけど、なんとかなってほんとよかった……!!
明日は休みだから月曜日にはどうなったか学校で報告してくれるだろう。
その時の表情はきっと、嬉しそうな顔なんだろうなと確信を持ちながら彼女を見届けた。
と思っていたが……
家に帰り、風呂も上がって黄瀬さんと黒宮に何があったのかロインで連絡を取ろうとしていた瞬間、白咲さんから通話がかかってきた。
……え? なんで? ま、まさか……失敗した? 俺が余計なこと言ったせいでますます拗れたとか!?
胃をキリキリさせながらも通話に出た。
「も、もしもし?」
『あ、佐藤くん? ごめんねいきなり電話しちゃって……今、大丈夫かな?』
「だ、大丈夫。どうかした?」
ま、まさか俺のせいで破局とか? 洒落にならないぞ。
『えっと、今日はありがとね。無事仲直りできました……!』
「あ、よ、よかった〜」
よかった……!! 本当によかった!! これでダメだったら俺の心が折れていた。
声だけでもその嬉しさと安堵が伝わってきた。
『ほんと、佐藤くんのおかげだよ〜……え? うん……それは……』
電話越しに聞こえる話声、どうしたんだろうか?
『……あのね、佐藤くん。テツくんが佐藤くんにお礼が言いたいって言ってるんだけど、変わって良いかな?』
ぼあ!? て、ててててテツくんさんが!? 俺に!? 直接!? ていうかえ!? 同棲してんの!?
「おお、う、うん……ダイジョブ」
正直、全然大丈夫じゃないんだけどこの流れで断る勇気なんて俺にはねぇ!!
『それじゃあ、変わるね〜はい』
『もしもし』
ヤダ、声めちゃくちゃかっこいい……これが白咲さんのカレピ……の声!!
「あ、あ、もしもし……お、お世話になっております……佐藤十兵衛と申します!」
『こちらこそ、姉がお世話になってます。弟の白咲テツヤです』
「あ、いえいえ……!! そんな! お姉さんにはほんと色々してもらっていて!!」
……ん? 姉? 弟?
『佐藤先輩の話は姉から聞いてます。というか最近は佐藤先輩の話ばっかりーえ? なに姉ちゃん? そんなこと言わなくていい?』
姉? 弟?
「あの、テツくんさん?」
『はい?』
「テツくんさんは……華さんの弟さんなんですか?」
『ええ、そうですよ。あれ? 姉から話を聞いて、助言してくてたんじゃ……?』
「いや……弟さんとは聞いていなかったのでてっきり彼氏さんかと……」
『え? いや、佐藤先輩がお姉ちゃんのー痛い!! 姉ちゃん!! 痛いって! ……え? いや、だってさぁー!』
今まさにスマホの向こうで姉弟げんかが勃発していた。お、俺の努力が全て水の泡になった瞬間である。
『すいません。佐藤先輩、失礼しました。俺と姉が仲直りできたのは佐藤先輩のおかげだったんでお礼を言いたくて……ありがとうございました。それじゃ、姉と変わります』
「う、うん」
『ごめんね佐藤くん! なんかドタバタしちゃって……!! 明日って何か予定とかある?』
「へ? いやないけど……」
『あ、そうなんだ! じゃあ、家からは出ないってことだよね?』
「ま、まぁ……そうなる……かな」
『そっかそっか! それじゃ、今日は本当にありがとう! また明日ね!』
そう言い残し白咲さんとの通話が終わった。
……また明日? 明日は土曜日なんだけど。
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