第22話 黄瀬さんとの夜通話
夜、晩御飯もお風呂も済ませてあとは寝るだけの状態で漫画を読んでいた。
ブー、ブー。とスマホが震えている。
ん? こんな時間に誰だろう? まぁ、この時間帯の通話相手なんか家族だろうけど。
どれどれ……?
やよいー☆
はうわ!?
し、しまった……あまりの衝撃にスマホを落としてしまった。
やよいって……黄瀬さんだよな?
え? なんでいきなり? 俺なんかやらかしたっけ? と、とりあえず出ないとっ
「も、もしもし?」
『もし〜? なんで声裏返ってんのw?』
けらけらとスマホ越しから黄瀬さんの笑い声が聞こえる。
う、仕方ないだろ……緊張してるんだから。
「そ、それより、いきなり通話だなんて、何か用?」
『んー? ああ、さとっちに聞いておきたいことがあって』
俺に聞きたいこと? なんだろう。
『さとちんってさーねねっちと付き合ってんの?』
飲んでいたお茶を吹いてしまった。
「ゴッホ! ゴッホ!? はぁ!? どういう意味!?」
『いや、そのまんまの意味だけど? ほんとは昼休みに聞きたかったんだけどさー流石にねねっちにはね〜?』
俺ならいいのかよ!?
「いやいや、全然付き合ってないよ。そもそもありえないだろ。俺と黒宮が付き合うなんて」
陰キャな俺と人気者の彼女では色々と差があり過ぎる。それに黒宮が俺なんかを好きになるなんて……
『ほんと? うそじゃない?』
「なんで嘘って疑われてるのか疑問なんだけど……」
『えー? だって今日のねねっち明らかに嫉妬してたし』
「嫉妬?」
「そうだよ。さとっちが昼休み女子に絡まれてる時に割って入ったり、私とロイン交換してた時も笑顔で圧かけてきたり独占欲丸出しだったじゃん」
「はぁ……?」
確かに女子軍団に誘われていた時は機嫌は悪かった気がするけど……男子からモテモテな黒宮が俺なんかに嫉妬するはずないだろうし。
『うーん……それじゃ、ズバリ、さとっちくんはねねっちのこと好きなの?』
黄瀬さんの好きっていうのは多分、異性として好きかってことだよな?
「いや別に」
黒宮と一緒にいるのは楽しいし、安心できるけど……恋人になりたいかと言われると……どうなんだろと思うのが素直な気持ちだ。
『うーん、陰キャ特有であるあのキモイきょどりは一切ない……ということは嘘はついてないか……』
……え? 黄瀬さん、今さらっとひどいこと言わなかった?
『え? つまりそういう? あー……えぇ……マジかー……えっ〜〜?』
なんだなんだ。黄瀬さんが何かを察したように納得し始めたぞ。ちょっと待ってくれ、俺を置いていかないでほしんだけど。
何がマジなんだ? 黄瀬さんは一体どんなことを考えてるんだ?
「あの……黄瀬さん? つまりそういうってどういう意味?」
『え? 嫌だなぁ〜さとっちに教えるわけないじゃん』
ひどい……
『う〜ん。でも、ここ最近までそんな素振りとかなかったしな〜となれば……金田との? いや、ねねっちはそれだけで……』
あ、あの……黄瀬やよいさん……通話を、通話をしてください。一人だけの世界に入らないでください!!
『時にさとっちくん。ここ1ヶ月の間ねねっちとなんかあった?』
黄瀬さんは、いきなりど真ん中を刺してきた。
何かあったか? と言われたらあった。
それは偶然とはいえ、黒宮の裏の顔を知ってしまったと言うこと。
それと、嘘告白をされたり、キッスされたり、求婚されたり……あれ? なんか思った以上に色々とあったな……
「…………………………いや、何も」
『え、待って、今の間は何? ほんと? 私達に何か隠してることない?』
「それは……言えないから隠し事なんじゃないのか?」
『……むぅ、それもそうか』
最低限のことは伝えたからか、黄瀬さんも満足してくれたようだ。これで通話も終わりー
『じゃあ、本題に入るんだけど』
ではなかったみたいだ。
今から本題? さっきまでの会話は一体なんだったの?
『華ちーのことちょっと気にかけて欲しいの』
「俺が? 白咲さんを?」
俺なんかが気にかける必要ないと思うんだけど、むしろ俺の方が気にかけてもらっている方だし。
『さとちんが知っての通り、金田に対する周りの態度が変わってたでしょ?』
「あぁ……」
『いじめとかはされてないけど、クラスから浮いてる状態なんだよねぇ。でも華ちーだけは今まで通り気さくに話しかけたりしてるの』
なるほど、確かに白咲さんなら、クラスの皆の態度がわかっても今まで通りに接するだろう。
クラスの隅っこにいる俺でも知っている。彼女は誰にでも分け隔てなく接することができる人だと。
あぶれ者と言うのは話かけてもらうだけで救われた気持ちになる。陰キャぼっちの俺には痛いほど理解していた。
そう、こんな自分のことでも気にかけてもらっていることが嬉しいのだ。
「白咲さんらしくて好感が持てるけど……?」
『そうなんだよ。華ちーはほんといい子なんだけど、それが心配なんだよ』
「心配?」
『金田のやつが勘違いしそうでさ〜』
「……はぁ?」
『む、その反応理解してないな……つまり、金田が華ちーは自分に好意を持っているから気にかけてるんじゃないかって勘違いしそうだってこと!』
えぇ……それは……有り得るのか? 流石に………………いや、俺が同じ立場なら勘違いしてもおかしくはないな。
もしかしたら、もしかしたらワンチャンあるんじゃないかと。金田なら自分に自信があった分余計にありそうだな。
「なるほど、それはわかったけど、なんで俺にその話を?」
『ほら、今のさとちんって金田に特効持ってるでしょ?』
そんな、ゲームの特性みたいに言わないでほしんだけど……
『だからずっと華ちーの隣で張り付いておけば、金田も近づいて来ないかなって』
蚊取り線香か何かか俺は。
「いや、そんなことをしたら俺に対するクラスの視線とかが……」
『それは大丈夫でしょ』
「……え?」
『今日、クラスの様子……と言うかさとちんに対する態度が違わなかった?』
……確かに、そう言われると、そうだったかも。
いつもなら白咲さんが俺に話しかけてくれるだけでぼっち陰キャのくせに生意気だみたいな言葉や視線が飛んできていたけど、今日はそれはなかった。
『華ちーがカラオケのことや金田との勝負や、ゲロったこととかみんなに色々自分のせいだって説明してたからね〜だからクラスのみんなは察したんだと思うよ? 白咲華は佐藤十兵衛を友達として大切にしているって』
そういうことか、白咲さんの性格上、俺の蔑ろにして彼女の不興を買ってしまう恐れがあるからクラスの俺に対する態度も変わったのか。
そりゃ、白咲さんは黄瀬さんや黒宮と同じクラスの中心人物で、男子からも女子からも好かれている。
そんな子に嫌われたくないと思うのは自然だと思う。
『ま、中には純粋にさとちんのことを気に入ったり、気になったりし始めた生徒もいるだろうけどさ』
それは黄瀬さんや朝に気を遣って話しかけてくれた梶くんのことだろうか?
『でも、あそこまで他人に肩入れしてるのは初めて見たかも……』
「え?」
『……いや、なんでもない〜と言うことで明日から華ちーのSPよろしく〜』
「ぜ、善処させていただきます」
『善処じゃなくてやるんだよ。ヘタレ』
そう言い残して黄瀬さんは通話を切った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます