第12話 連絡先交換



「佐藤くん、今日は付き合ってありがとね」


「こ、こちらこそ誘ってくれてありがとうございます」


 

 白咲さんの提案で俺は黒宮を入れた3人で晩御飯を食べた。

 家族以外で行くファミレスは初めてのことだったがカラオケ同様意外と楽しかった。

 まぁ、楽しかったのは白咲さんと黒宮のつよつよコミュニケーション能力のおかげだったんだけど。


 今は黒宮は現在お花を摘みに行っており、白咲さんと二人だ。


「なんで敬語? タメ語で話してよっ」



 クラスの中心で美少女の白咲さんに劣等生の陰キャである俺なんかがタメ口で話せるわけないだろっ……!!



「それにしても、あのケーキ美味しそうだね」



 白咲さんの指差す方向にはショーケースの中でケーキを並べているケーキ屋さんがあった。


 駅とかでよく見るやつだ。


「確かに、あ、買う?」


「うーん、分からないけど……ちょっと見てみたい」


 とのことなので店員さんに許可をもらい、ショーケースのケーキを見る。


「佐藤くんはどんなケーキが好きなの?」


「俺は抹茶系かな? 白咲さんは?」


「私は〜ショートケーキかチョコケーキ……どちらにしようか迷い所だね。私、苺とチョコレートが大好きなんだ〜」


「へー」


「つまり、苺とチョコレートが合わされば最強なんだよ!」



 苺チョコのことだろうか?



「よし、両方共買っちゃおう!! 私、欲張りなんだ〜」



 結局、ショートケーキとチョコケーキ両方買って再び黒宮を待つ。


「へへ〜家に帰るのが楽しみだな〜」



 そう笑顔で言う白咲さんの横顔を見ていたらじっと彼女も俺の顔を見てくる。 


 な、何か言いたいことでもあるのだろうか?



「え、えと?」


「……ほんとはね。あのカラオケ大会を提案したのは佐藤くんが目当てだったの」


「……え?」



 俺が目当て? な、なんで?



「教室でいつもひとりだから心配してたんだ」



 ……え? 天使か何か?


 つまり、あれか……クラスに馴染めずぼっちで浮いてしまっている俺とみんなが交流するきっかけを作ってくれようとしたってことか。


 ……え? 大天使か何かですか?



「ま、あんまりうまくいかなかったんだけどね」



 申し訳なさそうに笑った。



「もし、寂しかったらいつでも声かけてよ。私は24時間いつでもウェルカムだから」



 ごめん、それは少し……いやだいぶハードルが高いんだわ。



「お昼休みとか一緒におしゃべりしよ〜」



 いや、むりむりむりむり絶対むり! 周りの視線が絶対やばいもん!

 俺みたいな陰キャぼっちが白咲さんみたいな学年屈指の人気者であり美少女が話しをしてみろ、教室内が大パニックになるぞ。



「う、うん。まぁそのうち」



 ちなみに白咲さんと黒宮どっちが男子からの人気が高いかというと黒宮の方が高い。


 容姿も黒宮に並ぶほどだし、優しいし、ぶっちゃけ黒宮にも負けないくらい男子からの人気は高くてもおかしくない。


 ではなぜ黒宮の方が人気があるのか?


 それは『白咲華彼氏持ち概念』の存在である。


 学校の男子曰く、こんな可愛くて優しい子に彼氏が居ないはずがないそうだ。まぁ、正直全くの同意見なんだけど。 


 だから黒宮のような熱狂的な人気がないのだ。


 白咲さんは男女問わず人気がある。

 黒宮は男子特化で女子からはあまり好かれていない。


 まぁ、それでも白咲さんも結構告白されているみたいだけど。

 


「あ、そうだ。佐藤くんーちょっとスマホ貸してもらっていい?」


「え? い、いいけど」


「ありがと」



 反射的に差し出したスマホを受け取って、白咲さんは自分のスマホも取り出し何やらやっている。



「はい、お近づきの印ってことで」



 そう言いながら白咲さんは俺にスマホを返す。スマホに写っていたのはロインの画面。



『(はな)これからよろしくね♪』



 え? ま、まさか……俺、白咲さんとロイン交換しちゃった……のか?



「こ、こ、これって……い、いいの?」


「え? もちろんだよー私、佐藤くんともっと仲良くなりたいもん」



 なんというか、みんなが彼氏いるって言うのがわかる気がする……これは一種の防衛本能だ。だってこんなの絶対勘違いしちゃうだろ。



「……そ、そこまで心配してくれるとは、白咲さんは本当に大天使っすね」


「あはは〜大天使なんて照れますな〜でも、佐藤くんと仲良くなりたいのは別の理由があったり」


「え、あ、え? 別の理由? それって」

 

「それはナイショ〜」



 く、くぅーナイショかぁ〜!! 



「ごめんお待たせ〜あれ? 二人とも何かあった?」


「いや、何もない……っす」



 帰ってきた黒宮に怪しげな目で見られたが、あえて反応しなかった。

 3人で雑談をしつつ駅に着き、別れの時が来た。



「それじゃあ。私たちあっちだから。佐藤くん今日はありがと、バイバイ」


「う、うん。ばいばい」


 改札口に向かう二人を見送って、俺も帰ろうとした瞬間

 


「ちょっと」



 背後から黒宮にかばんで叩かれた。



「……え? な、何?」


「ん」


 そう言いながらスマホを差し出してきた黒宮さん。


 ……? 意味が分からない……

 んってなに?



「んー!!」


「う、うーん?」


「あーも!! ちょっと貸しなさい!」



 痺れを切らした黒宮にスマホを強奪されてしまった。


「ん」


「え、あ、はい」



 一方的にスマホを返却され、画面を見たら黒宮とロイン交換されていた。



「なに? 華とは交換したくせに私とはいやなの?」


「いや、そんなことは……! 驚いただけで……う、嬉しいです」


「そ、ならいいけど。今日はありがと。じゃ、お疲れ」


「お、お疲れさまです」


 

 軽い足取りで改札に戻って行く黒宮を見送りながらロイン画面を見る。


 ……家族以外の連絡先、二つも増えちゃったな。






 帰宅後自宅にて



『(はな) 佐藤くん! 今日はお疲れさま! ちゃんと帰れた? ご飯楽しかったよ! また行こうね!』



 おお、お風呂から上がったら白咲さんから早速メッセージが来ていた。この気遣い……流石社交度SSSランクの陽キャだな。



『(ねーね) お疲れ、今日はありがと。今日は少し寒いから風邪引かないように寝なさいよ』



 黒宮からも来た……や、優しい。あったかいよっ……!


 よ、よし。俺も面白い返信をしなくては……!!



『(さとー) 白咲さんありがとー😄ちゃんと帰宅できました😎✌️今日は本当にありがとう\\\\٩( 'ω' )و //// 迷惑もかけちゃったけど😅みんなと食べるご飯がこんなに楽とは思わなかった😳💡コミュ障な俺だけど😂これからも気軽に絡んでくれたら嬉しい( T_T)\(^-^ )です!😭』



『(さとー) 黒宮こちらこそありがとう😄💦黒宮を助けられてよかった!😭それに二人のカラオケ大会めちゃくちゃ楽しかったし!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 今お風呂から上がったところです😤黒宮も風邪引かないように気をつけて!🥺 おやすみー😏👍』



 ふぅ……なんとか二人に返信できたぞ。



『(はな) ちょっと待って笑 普段とキャラが違いすぎて驚いちゃった笑おやすみー!』


『(ねーね)いや、ごめん。おっさんみたいでまじでむりなんですけど』



 ええ!? どっち!?


 果たしてこのやり方は正しかったのか、間違っていたのか……気になりすぎてまともに寝れなかった。

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