第114話 新たな能力 個人指定と専用設定と圧縮錬金

 ステータスカードを見た愛華は呆れた様子だった。


「相変わらずこのランクとは思えないステータスですね。しかもつい先日手に入れたばかりって話の昆虫殺しインセクトキラーがレベルⅢになってますし」

「まあここ最近で死ぬほど虫系の魔物を殺したからな」


 フォレストアントとかポイズンスパイダーとかのことだ。


 この短期間で尋常じゃないくらいに仕留めているのでこの結果も納得ではある。


 ただそのスキルも有用だが今回の本題はそちらではない。


「錬金真眼レベルⅣで新たに得られた能力は虚飾看破、知覚強化、鑑定能力強化の三つだな」


 そう遂に望んでいた鑑定能力の強化が入ったのだ。


「鑑定能力強化って何が強くなったんですか?」

「分からん。だから試してみよう」


 そう言いながら取り出した低位体力回復薬ローライフポーションを見てみたら、これまでにない項目が追加されていた。


(熟練度と……なんだこれ? フレーバーテキストか何かか?)


 ゲームであるようなアイテムの説明文章的なものが追加で見えるようになっているのだ。


低位体力回復薬ローライフポーション 

効果 HP回復324 疲労及びスタミナ回復

品質24

熟練度 37/100 

黄金神が生み出した命を満たす霊薬の一つ。

その雫を口にした者は傷が癒えるばかりか活力に満ち溢れることとなる。

黄金神の眷属にのみ製法は伝授されている。


 こんな具合に。


 なお熟練度以降はこれまで見えていなかったものだ。


(黄金神って天神族とか地神族のどっちかのことだよな?)


 どちらかの種族の中に黄金神とやらがいて、そいつがこの回復薬を生み出したらしい。


 そして作り方はその眷属にしか伝わっていないようだ。


「ってことはこれが作れる先輩も黄金神の眷属って扱いになるんですかね? 先輩が眷属なんて使役されるみたいなイメージ全く浮かばないですけど」

「奇遇だな、俺もだよ。そもそも眷属ってなんだ? 御使いとはまた違うんだろうか?」


 その答えが分かるアマデウスは残念ながらまたダンマリを決め込んでいる。


 となれば流して次に行くしかない。


 ちなみに鑑定能力が強化されたおかげか魔物の素材を見た際に解析率がどれくらいになったのかも見られるようになっていた。


 これでどのタイミングで解析率が上がるのかを確認すれば隠されていた条件も判明するに違いない。


「知覚強化はよく分からんな。別に視力が強化されて見える範囲が広がったとかでもなさそうだし。虚飾看破は隠蔽とか変身とか一部のスキルを見破れるようになるみたいだ」


 勿論これもスキルレベルによってその結果は左右されるが。


 今ならスキルレベルⅣ相当になる訳だ。


 ここまでの情報も重要ではある。


 だがそれ以上に大切だと思われたのは次に確認した錬金剣士がジョブレベルⅣになったことで手に入った新たな能力などだった。


(個人指定と専用設定、それに圧縮錬金か)


 これらは錬金スキルに新たな能力として組み込まれる形となっているので、スキルそのものは存在しない。


 要は錬金スキルが強化された形だ。


 まず圧縮錬金についてだが、その効果は同種類のアイテムを錬金することで品質を高めることができるようになるというもののようだ。


 試しに品質が20の回復薬二つを圧縮錬金してみたら、その二つが合わさって品質が30の回復薬一つになった。


(ヒメリ草とかの素材も適応範囲内なのか。これならMPさえあれば高品質の素材を集めなくてもどうにかなるな)


 ヒメリ草などのダンジョンから採取できる素材の品質は上級ダンジョンで採れるものの方が高い傾向がある。


 だがそれも時間経過によって劣化が進めば下がってしまうし、そもそも100になる物は幾ら会社のコネを使って仕入れても見つけられなかった。


 どんなに高くても品質50が限界だったことを考えれば今のダンジョンで採取できる品質はそれ以下となっているのかもしれない。


(ダンジョンを作った奴らはどうも錬金アイテムをドロップさせなかったりと特定の事情で出し惜しみする傾向があるみたいだからな)


 その原因や目的が何なのかは分からないが問題ない。このスキルがあれば仮にそういう制限を敷かれていても無視できるのだし。


(品質100のアイテムを作るのも不可能じゃなくなったな)


 品質が高まれば特殊な効果が生まれることもあるそうだし、それ以外でも新たな発見があるかもしれない。非常に今後が楽しみになるスキルである。


 そして個人指定と専用設定も非常に使える能力だった。


 効果は個人指定が作成するアイテムに対して干渉できる人を限定することができるようになるというものだった。


 ただしその為には錬金する際に使用者となる人物の血液が必要になる。


 防犯的な意味でこれは非常に役に立ちそうだ。


 専用設定は錬金釜を作る際に新たな効果を付与できるようになるというものだった。


 錬金釜で作れる物を一つに限定することで消費する必要素材の数の減少、MPの削減、時間短縮、品質向上などの様々な恩恵が得られるようになるらしい。


 例えば低位体力回復薬ローライフポーショに限定した錬金釜はそれ以外の錬金アイテムは作れなくなってしまう。


 だけどその代わり普通の錬金釜よりも様々な面で楽に錬金できるようになる訳だ。


 量産体制を整える上でこれは非常に有り難い。


 この二つの設定を上手く使えば盗まれることを気にしないで良くなる上に量産もしやすくなるのだからその恩恵の大きさも分かるだろう。


 そのことを愛華に説明したら自分のみが扱える低位体力回復薬ローライフポーショ専用の錬金釜を所望されたので早速作ってやった。


「うわ、これ凄いです。作り易さが全然違いますよ」


 検証した結果、消費する素材やMP、掛かる時間は半分ほどになっている上に品質も普通の釜で作ったよりも10近く上がることが分かった。


「これなら量産体制を敷くことも十分に可能になりそうだな」


 錬金釜もモノクルも盗まれることを警戒して厳重な管理の元でしか使えなかった。


 だが今後は盗まれても相手に利用されないようになるのなら多少はその厳戒態勢も緩められるかもしれない。


「いずれは家とかにも釜を設置して、どこでも作れるようになるといいんだけどな」

低位体力回復薬ローライフポーション作成の内職ですか? 仮にそんなバイトがあったとしたら時給は幾らになるんでしょうね?」


 一本作るごとに売り上げの一割とかが支払われるようにすれば募集は殺到することだろう。

 無論の事、管理体制的に流石にそれは無理だろうが。


 ここまでの事でも分かるが、やはり錬金真眼と錬金剣士から新たに得られる能力は非常に役に立つ上に唯一無二の強みを持つものが多い。


 他の御使いという正体不明の敵が居ると分かった以上はその力を手に入れることは急務とも言える。


「という訳でこのタイミングで残っていたスキルアップポーションを使い切るぞ」


 錬金真眼は必要条件を満たせていない関係上、まだしばらくはレベルⅤ以上に上げられない。


 だとすれば残るは錬金スキルと連動している錬金剣士のジョブレベルを上げるだけだ。


 残っていた三つのスキルアップポーションを全て錬金のスキルレベルを上げるために使用する。


 そうすると錬金剣士のジョブレベルも同じく上昇してⅦまで上がることとなった。


八代 夜一

ランク12

ステータス

HP  178

MP  170

STR 166

VIT 161

INT 163

MID 179

AGI 164

DEX 165

LUC 156

スキル 錬金レベルⅦ 錬金素材作成レベルⅥ 錬金真眼レベルⅣ 霊薬作成レベルⅡ アルケミーボックス 錬金術の秘奥マスターアルケミー 剣技覚醒 水銃レベルⅠ 昆虫殺しインセクトキラーレベルⅢ 過剰駆動オーバーロード

ジョブ 錬金剣士レベルⅦ

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