ホームレスのおっさん、現実と異世界を行き来できる称号を得て最強になり、無双する姿を異世界に配信して人気者になる。

第3話

　あれから俺は夢見心地で二つの宝箱を開け、またしても強そうな武器を手にすることになった。

　鳳凰弓：鳳の力が封じられた万能な弓。八方の敵に対し、切れ味鋭い羽根を複数同時に飛ばすことができる。威力に加えて命中率も極めて高く、周囲のターゲットに甚大な被害をもたらす。

　神獣爪：神々しいオーラを纏う神獣の爪がついたナックル。その威力はたった一振りでモンスターの残骸すら残らないほどであり、随一の破壊力を誇る。

【鑑定】スキルで調べたら、やっぱり凄まじい効果だった。蛇王剣もそうだし、短い間にこんなにも凄い武器を三つも獲得できるなんてな。異世界の大金持ちかなんかがこの洞窟に隠したんだろうか？

　神獣爪は短距離向き、蛇王剣は中距離向き、鳳凰弓は遠距離向きといったところか。どれも素晴らしい効果なので甲乙つけがたいが、それ以前に俺は剣も弓もナックルも使ったことないし、ステータスも貧弱なのでろくに扱えなさそうなのが残念だ。やっぱり弱い敵と戦うことで徐々に慣らしていく必要があるのかな。ん、そう思った途端窓が出てきたぞ。《リンクする者》の称号の効果がまた発揮されるのか？

『【武器術レベル１】スキルを獲得しました』

　おおっ、今の俺が最も欲しかったスキルじゃないか。よーし、【鑑定】スキルで早速調べてみよう。

【武器術レベル１】：使用している武器の扱いが上手くなり、威力が上昇する。レベルが上がるごとに使い方が巧みになるだけでなく、武器の潜在能力が高ければ高いほどそれを引き出すことができるようになる。武器を使って敵を倒すことで、スキルレベルは最大で１０まで上げられる。

　へえ、いい感じじゃないか。要するに、こんなに強そうな武器なら三つとも潜在能力はバッチリだろうし鬼に金棒ってわけだ。問題はどれを使うかだな。全部抱えていくわけにもいかないし、いつでも好きなときに物を預けられて、同じようにすぐ引き出せるような倉庫があればいいんだが、さすがにそれは無理そうか……。

『【倉庫】スキルを獲得しました』

「…………」

　まさか本当に獲得できるとは。ここまで上手くいくと逆に怖くなってくるが、とりあえず効果を調べてみよう。

【倉庫】：生物を除く、ありとあらゆるものを無限に収納することができる。また、取り出したいものを想像するだけでいつでもすぐ手元に戻すことが可能。

　いやー、便利なスキルだな。生き物はダメだが、なんでも無制限に入れられるとは。よく考えたらスキルだって今後使わなくなるものもあるかもしれないしな。というわけで、蛇王剣以外はまだ使わないので収納することに。てかこれって、金持ちになりたいって願えばそういうスキルが手に入るのかな？

『【換金】スキルを獲得しました』

　またまた窓にスキル獲得のメッセージが流れたので調べる。

【換金】：自身の所有する武器や道具をお金に変換することができ、表示された額に対して所有者が認めた時点で物と引き換えに現金が手に入る。ステータスポイントであれば１０倍になって換金される。

　こりゃいい……。いきなりお金持ちになれるわけじゃないが、その手助けにはなるってわけだな。金に飢えていた自分としては、一番欲しかったスキルかもしれない。ってことで、魔石（微小）はいくらになるかと思って【換金】スキルを使ってみると、窓に『魔石（微小）は千円、あるいは銀貨１枚になります。どちらに変換しますか？』と表示された。

　おおおっ、結構な額で売れるんだな。一応【鑑定】で調べたら、魔石の中で一番価値が低いってことで売ることに。千円だけでなく、銀貨１枚が候補に挙がってるってことは、やっぱり異世界でも使えるように配慮してあるんだな。

　ちなみに説明によるとこの微小っていうのは魔石の輝度と価値を表していて、微小→小→中→大→極大と価値が上がっていくんだとか。価値がそれほどじゃないなら売ってもいいと即断し、許可すると手元に千円札が出てきたわけだが、思わずよだれが出そうになるほどだった。どんだけ現金に飢えてるんだ、俺……。

　ステータスポイントもどれくらいで売れるのか見てみたいが、０じゃ売りようがない。レベルを上げれば溜められるわけで、どんなときでも……例えば歩くだけでも経験値を溜められるスキルとかもらえないかな？　さすがにこれは図々しいか。

『【強化】スキルを獲得しました』

　よしよし、また良さそうなのをゲットしたから調べよう。

【強化】：これを使用すると、呼吸、徒歩、あらゆる行動が自身を強化するための訓練と捉えられ、何をしても経験値が上がるようになる。ただし、その間は大きな負荷がかかり、体が異常に重たくなりとても疲れやすくなる。

「…………」

　これって、あれか。常に養成ギブスをつけて生活するようなもんだな。うあっ。試しに使用してみたら、確かに誰かが背中に乗ってきたかのような重苦しい感覚があった。これはさすがに苦しいのでもうやめたいと思うと、『解除しますか？』とメッセージが流れたので『はい』と答えることで解除できた。

　ふう……。ただでさえ、俺は不良少年たちにボコられて体が痛いしな。それでも帳消しになりそうなくらい便利なスキルだし、何をしていても経験値が上がるので便利だ。

　あとは、あれくらいだな。欲しいスキルは。若返りができるスキルってないかな？　若くなれたら最高なんだけどな。うーん、今までのものと比べたら難しいよな、こればっかりは――

『――【年齢操作】スキルを獲得しました』

　きたこれ。本当の本当に若返っちゃう……⁉

【年齢操作】：見た目の年齢を自由に変えることができる。ただし、寿命を延ばしたり縮めたりすることはできない。

【鑑定】で効果を調べてみたら、ビンゴだ。素晴らしい。これを使えば極端な話、子供にも老人にもなれるってことだよな。例えば幼児になって女湯に入るとか……いや、これは冗談として、ほかにも色々と使い道はありそうだ。

　今すぐにでも試してみたいところだが、鏡がないので後回しにすることに。その前に誰かに盗られたら嫌なので、ミミックを除いて残りの四つの宝箱を【解錠】スキルで全部開けるとしよう。

　仙人の平服：伝説の仙人がお忍びで人里に降り立ったときに着ていたという衣服。とても丈夫な上に軽くて動きやすく、一定の温度を保つことができる。自動洗浄や自動修繕機能もあり、ほかの装備にも適用される。また、自由自在に服の見た目を変えることができる。

　戦神の籠手：命と引き換えに魔物たちを殲滅し、故郷を守り切った戦神の魂が封じられた籠手。とても頑丈で、どんな攻撃を受けても体が弾き飛ばされることはなく、身に纏う者は痛みにも強くなる。また、モンスターを倒したとき経験値が２倍になる。

　韋駄天の靴：韋駄天が履いていたというシューズ。これをつけている間は歩く速度が常に上昇するだけでなく、走るスピードも倍増し、さらに体力の消耗度も変わらない。

　安寧の指輪：とある、おっちょこちょいな女神が身につけていたという指輪。少しずつだが自動的に体力が回復し、緊張する場面でも落ち着ける効果がある。

　どのお宝も満足のいくものばかりだった。これらを売れば相当な大金が手に入りそうだが、それでも絶対に手放したくないと思える。というか、間違えるのが怖くて【換金】スキルを使うのをためらうレベルだ。仮に売り払ったとして、いざ買い戻したいと思っても難しそうだしな。さて、最後にステータスを確認しよう。

　名前：上村友則

　レベル：１

　腕力値：１

　体力値：１

　俊敏値：１

　技術値：１

　知力値：１

　魔力値：１

　運勢値：１

　ＳＰ：０

　スキル：【暗視】【地図】【解錠】【鑑定】【武器術レベル１】【倉庫】【換金】【強化】【年齢操作】

　称号：《リンクする者》

　武器：蛇王剣　鳳凰弓　神獣爪

　防具：仙人の平服　戦神の籠手　韋駄天の靴　安寧の指輪

　うは……。これって本当に自分のものなのかと疑問視してしまうくらい、俺のステータスは華やかなものになっていた。あとはレベルを上げることくらいか。これに見合うくらい上げておきたいが、疲れたのでとりあえず今日のところは元の世界へ戻っておこう。