Kaleidoscope

yokamite

Good "lack" creativity

 小説含め、この世の全ての創作物は万華鏡に例えることが出来ると思う。対して、創作物の受け手である我々人間の心は、万華鏡の筒の中に入り込んだ鏡と言ったところだろうか。


 小説における書き手のように、表現者によって作り出された万華鏡の中に光が入り込むと、鏡は光を複雑に反射して様々な色や模様を映し出す。その全てが、喜び、悲しみ、怒り、苦しみなど、鏡の位置や形状によって多種多様に変化する。その色や模様は、ひとつとして同じものは再現できない。表現物の受け手である我々人間は、万華鏡のような創作物の中に感情移入することで、鏡のような心に反射した多種多様な模様を楽しんでいる。そして、それぞれ構造が異なる色々な種類の万華鏡があるからこそ、我々は飽きることなく創作物を楽しむことができるのだ。


 しかし、万華鏡を通して美しい色や模様を見ようとするのなら、光が必要だ。脚光を浴びることができない万華鏡は、それがどれだけ素晴らしい色や模様を映し出すポテンシャルを秘めていたとしても、誰にも気付いてもらうことができない。何と勿体ない事だろうか。


 では何故、皆は同じような作りをしている万華鏡ばかりを求めようと言うのか。流行り廃りがあるとはいえ、ほとんどの人間が皆同じ模様を映し出す万華鏡を買い求める。そして、万華鏡の作り手である我々表現者も顧客の求めに応じるように、独創性を失った陳腐な量産品を大量に生産し続ける。その結果として、真に価値ある色鮮やかな模様を映し出すことが出来る可能性を持った美しい万華鏡が日の目を浴びる機会は、次々に失われていく。何と愚かなことだろうか。


 ──それでも私は、誰に何を言われようと、独創的で色鮮やかな光を放つ万華鏡を作りたい。それが例え、いつまでも日の目を浴びることができなくとも。

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