【短編】D・G ディサイシヴ・ギア

ICHINOSE

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 ……邪悪を糧とする人型の決戦兵器は、毒雨降り止まぬ限り戦い続けるという。




『――当該不明機一。レーダー探知。速力三〇キロ』


『――総員。地対地戦用意』

『無人戦闘車小隊、ならびに防護化歩兵中隊は……』


『〈アインド・ギアI・G〉部隊。ガルーダ隊。全機出撃せよ』



 豪雨。そして落雷。闇色のスコールが暴れ回る中。

 たちまち戦端が開かれる。人間同士の殺し合い。


 戦場と化したのは、大地共々赤銅色に染まった枯草の死んだ密林。工場廃液じみた緑黄とも薄藍とも見分け難い濁りの水沼。生身では耐えられない致死の猛毒。


 死の大地を駆けるのは装甲仕立ての巨人だ。

 全高一八メートルの人型機動量産兵騎アインド・ギア

 あらゆる環境で殺戮を遂行すべく生み出された彼らの多数が、赤銅色の土砂を二の脚で跳ね散らす。汚泥にまみれ、そして命を散らし、汚れた鉛の雨と大地には機体の骸と人体の流血が混ざる。



 しかしながら。やはり分が悪すぎたのか。

 同じ人型機械としても彼ら量産兵器とは別次元の、より絶対的で巨大な〈決戦兵騎ディサイシヴ・ギア〉を相手にしては。





『——敵機より高エネルギー照射⁉』


『——ガルーダ11、ロスト』

『敵影一。依然進路変更なし。速力三五キロに増速』



「(司令官)クソが……」



『——ガルーダ5、6、8、12、ロスト』

『——第五前哨ライン、失陥』『無人戦闘車小隊、反応消失』



「(司令官)クソが……。クソ、糞クソがあぁ‼ なぜアイツが来るのだぁっ‼」



 両肩に付いた二ツ星の階級章が輝かしいだけの怒りで血が上った高官。アルコールに潰れた悪人顔の彼は粗末なデスクを叩く。


 モニタの戦況図。機械音声の報告。

 蹴散らされる防衛戦力。取りまきの部下の動揺。


 気に入らない癇癪にまかせて叩き、叩いて、叩く。

 そんな兵を統べる階級にあるとは到底思えぬ中年の悪人顔が、我を忘れては手当たり次第に怒鳴り散らす。



『ガルーダ・リードよりCP! これ以上は無理です‼ 我々の、量産型の〈アインド・ギアI・G〉では……』



「ああっ⁉ 誰が貴様らに貴重なメシ喰わせてやっとると思って——ああ死んだかクソめっ‼ 止めろ‼ 誰でもいいからアイツを止めろ‼ 聞いとらんぞ‼ こんなトコに〈ディサイシヴ・ギアD・G〉が来るなど、」



 喚いたところで運命は変わらない。

 そして、決着は呆気なかった。

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