猫サンは世界を知っている。

Acat3

猫サンは気付いてる

この街には、街と外とを隔てる大きな河がある。そこに掛かる小さな鉄橋の下に、猫サンがいた。

猫サンは段ボールに包まって、ゆったりと寝転んでいる。


そこへ大きな画用紙を抱えた少年が歩いてきた。


「ああ、また来たんだな。相変わらず自我の薄い顔しやがって。」


猫サンは少年を一瞥すると太陽の方へ顔を向け、鼻をぴくぴくさせた。


少年は猫サンの横に座ると、丸めた画用紙を広げる。


「今日もお話しか?」


猫サンはめんどくさそうにつぶやくと少年の方を向いた。

少年は無言でコクリと頷いた。


「自我の薄いくせにお話の時だけは目が輝くなお前。」


「後な、お前も、そうだよディスプレイ見てるお前だよ、お前。この話はどうせ細切れで長くなる。紅茶でも飲みながらゆっくり聞くといいぞ。あ、いや、音じゃなくて文章で読んでるんだったか?」


猫サンはどこへとでもなく呟いた。

少年は首を傾げるが、猫サンはしたり顔だ。


「この前も話したけど、案外世界は狭いしその分数が多い。そんでよその世界を覗き見る変態もいるのさ。」


少年は腑に落ちない顔をしている。

まあどうでもいいけどねと、猫サンは段ボールに寝転がる。


「さあ何から話そうか」

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