エピローグその2
朝食を摂り、俺はシュライエットと澄火に後を任せて“誓いの指輪”の効果を発動させる。
ワープ先は、玲奈とエルの職場だ。
「おはよう」
「……あら、お父様。おはようございます」
と、玲奈との間にできたもう一人の娘である麗華が挨拶をしてくる。麗華は玲奈と同等か、それ以上の能力を持つ才媛だ。
いずれ来栖財閥を継ぐ者として、玲奈の下で鍛えられている。
「カケル」
玲奈はホログラムデバイスをそばに置くと、独占欲を示すようにぎゅーっと抱きついてくる。
「よしよし」
俺は玲奈の頭を撫でる。
「……探索依頼の中から、必要な物をリストアップしておいたわ。確認して頂戴」
「了解。いつもありがとう、玲奈」
と、玲奈は俺の背後を見て抱きつきをやめると、いそいそと自分のスペースに戻っていく。
「ふふ。甘えん坊ですわね、玲奈ちゃんは」
「…………」
玲奈は少し顔を赤くしたまま、ホログラムデバイスの操作を再開する。
「……エル、おはよう」
「おはようございます。今日も探索ですわね?」
「ああ」
エルは王女の時と変わらない、ドレスにティアラといった格好だ。18年前よりさらに気品と美しさが増し、一種の神々しささえ感じさせる。
エルは玲奈の秘書として、来栖財閥の運営や俺たち”Colors”の事務を玲奈と分担してやってくれている。
玲奈と同等の頭脳を持つエルの手伝いによって、随分と玲奈の負担は軽くなっているようだ。
「こちら、開発した新型アーティファクトですわ」
エルは卵形の何かを渡してくる。相変わらずアーティファクトの研究も続けている。時々、フィフティとともに専用の研究所で何かを作っていることもある。
いずれにせよ、俺が18年前に用意した“居場所”は、エルにとって心地よいものであったようだ。
「そろそろ来る頃ですわね」
エルと玲奈、麗華を交えてそのまま雑談をしていると、澄火とシュライエットが現れた。
二人とも戦闘服を着込んでいて、もう準備万端のようだ。
「……ん。若くんも、準備」
「ああ」
俺は戦闘服を見に纏う。マイナーチェンジは(主にエルとフィフティの趣味によって)されているが、基本的なデザインは昔のままだ。
「今日はシュライエットも来るのか?」
「うん。今日のダンジョンは、私たちも注視しているからね」
シュライエットはそういうと眼帯を少しずらし、金色に輝く瞳を少しのぞかせる。
今や“プリムスに瞳”の力の大部分を運用できるようになったシュライエットは、かなりの戦闘力を持っている。
ダンジョンを探索するにあたって、この上なく頼もしい味方だ。
「よし、行こうか」
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18年前、俺は『最強』となった。
次世代の『最強』が現れるまで……いや、たとえ現れたとしても。
俺の歩みは、止まることは無いだろう。
Fin
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