エピローグ

「……戻った」


と、水上さんが『不吉』が『円環』と共に現れた。ちなみに、もう一人の日本の探索者『白鯨』は、現在この周囲を飛び回って警戒にあたっている。


「……崩れるな」

「……ええ」


眼下で、魔境“龍宮”のダンジョンが崩壊し、跡形もなく海に消えていく。

何となく、書き換えられた周囲の法則が修復されていっているような感覚がある。


と、ダンジョンが崩壊したことで内部にいる者が死んだのか、リスポーン地点に設定しておいた場所に十数名の解放者のメンバーが現れる。俺のユニークスキルによって、死に戻りしたのだ。


表向きには、解放者の所有していたアイテムを使用してこの「死に戻り」を実現したことにしておく。


他人の能力を奪えるということを知ったら、悪意を持った人間……そして厄介な善意を持った人間が面倒なことをしてきそうだからだ。


とはいえ、リスポーンは腐らせるのはあまりにも勿体無いスキルなので、今後の魔境攻略作戦で積極的に使っていくつもりだが。


面倒くさくなったら、アイテムの使用回数制限があることにすればいい。


解放者のメンバーが現れるや否や、すかさず全員を『円環』が拘束する。


一部逃げようとしていたメンバーもいたが、『円環』の拘束の前のあえなく失敗した。


『円環』は仕事が終わり緊張の糸が切れたからか、地面にへたり込んだ。


「……ふう。ひとまず当初の目的……魔境を消滅させ、さらに解放者の本拠地を潰すというは達成したな」

「ああ。こちらの損害もかなり大きそうだが……だが、確かに成果はあった。この調子で他の魔境も攻略したいところだがな」


まだ四つ魔境は残っている。おそらく次は、「涙の征服者」なる組織があるという“Tear”か。

確か”Tear”は、半径100kmに渡ってモンスターが出現・徘徊する“龍宮”とは違い、半径10kmにしかモンスターが出現しない。


ただしそのモンスターの密度は凄まじく、一度領域内に入って仕舞えば、種々のモンスターと延々と戦闘を繰り広げる羽目になる。


実は、澄火のアイデアから開発した、とある技が有効だと思ってはいるが……果たしてうまく行くかどうか。


「……ん。大丈夫」


と、澄火がきゅっと手を握ってくる。


「若くんには、私がついてるから」

「ふふ。私もいるよ、旦那様」


そういうとシュライエットは手のひらを重ねてくる。


何とも心強い言葉だ。


背後から「こいつら何いちゃついてるんだ……」とでも言いたげな視線が俺を突き刺した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る