第4部 愛

第一章 魔境攻略

プロローグ

エルヴィーラ王女と愛の誓約を結んでから、早三ヶ月が経った。


その間に、熊川さんと水上さんが結婚したり、シュライエットが出所して俺たちが住むStarElementsに住むようになったりと色々とあった。


俺はというと、昼は連日ダンジョン攻略に繰り出し、夜はエルヴィーラの元へ指輪で飛び、朝になったら澄火の元へこれまた指輪で帰る……というような生活を続けている。


ダンジョン攻略の方には、偶に師匠たち……『天使』や『炎刀』が参加するようになった。


「……んん」


と、俺の腕の中でエルが身じろぎをする。

そっと頭を撫でると、エルはゆっくりと目を開く。


寝起きだと言うのに、その瞳はこの世の全ての知を凝縮したような輝きを放っている。


「朝が来てしまいましたわね」

「……ええ」


探索者である以上、朝になれば向こうに旅立つ必要がある。


「ふふ。朝が来るのなら、夜もまた必ず巡り来るものですわ」


そういうと、エルは目を閉じてそっと顔を寄せてくる。

俺はそれに応えるようにして、エルのそれに己の唇を重ねる。


愛を確かめ合うような、少し長めのキスを終え、俺は服を着るとそっとベッドから出る。


エルは俺を見送るため、ゆるりと起き上がる。


グラマラスな体をシーツで隠すようにしているが、美しい肌や体の曲線は全く隠せていなく、かえって艶かしく感じられた。


「行ってくる」

「ふふ。行ってらっしゃいませ、旦那様」


見送る時だけ、なぜかエルは“旦那様”と言う。一種のこだわりらしい。

俺は紫、ブルーグリーン、紅の三つの宝石が嵌まっている指輪に意識を集中させる。


ふっと意識が入れ替わり、俺は日本に待つ澄火の元へとワープした。


「……ん、おかえり」

「お帰りなさいませ、旦那様……もうすぐ朝ごはんにしますよ」


出迎えたのは、ダイニングで何やら情報収集をしている澄火と、いつものようにメイド服を着て料理をしているシュライエットだった。

シュライエットの左手の薬指には、紅の宝石が嵌った指輪がある。


シュライエットからは「一生俺に忠誠を誓う」、そして俺からは「シュライエットを尊重する」という誓約の象徴だ。


「ただいま」


そういって席につくと、澄火がぎゅっと手を握ってきた。


「どうしたんだ?」

「……ん、最近一緒に寝てくれない」

「……恋人ができたからな」

「…………」


不満そうにこちらを見る澄火。

エルは4人妻を娶れと言うようなことを言っていたが、俺の価値観としてそれを受け入れるのには少し時間がかかる。


そんなわけで、澄火とは一緒に寝ることは最近はしていない。


「ずっとそばにいるっていったのに」

「……ずっとって言うのは四六時中っていう意味じゃないから」

「むー」


ほっぺたを膨らませる澄火を宥めるのに、10分ほどの時間を要した。

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