第10話 完成

黒いスライムの津波のような攻撃を、ニャルトラ・ステップを駆使して交わす綱渡りのような攻防……というよりをすること3分。


「……ん、完成!」


という澄火の声に合わせて、俺はさやに納刀した蒼刀を構える。

蒼刀は、鞘に収めているうちにはその力が解放されることはない。その性質を活かし、貯めておいたMPを以て、技を発動する。


「氷花雪界!」


超低温の氷が生み出され、ピシリとスライム……いや、部屋中が凍りつく。

きちんと技の効果が現れたのを確認して、俺は澄火の後ろに飛ぶ。


「……ん。赤き怒り。青き情熱。一つとなりて、静止せし世界を再び震わす––––蒼紫霜電」


澄火は左右に生成した10cmほどの赤い電撃の玉と青い電撃の球を放つ。

それぞれが凄まじい存在感を放っていて、見ているだけで俺の背中に冷たい汗が走る。


––––これはマズイ。


直感した俺は、結果を見ることなくステータスセイバーを解放して10層にも及ぶバリアを張る。

澄火と共に体を丸め、できるだけバリアの面積を減らしてバリアの密度を高める。

そして、どんな現象が起こるかわからないので、物質から電磁波に至るまで、すべてを透過させない設定にする。


3秒後、生成したバリアの10層のうち9層が一瞬にして吹き飛んだ。


「ぐっ」


最後に残った一番強力になるように設定していたバリアを、MPを絞り出すようにして限界まで強化する。


天輪を介してバリアに叩きつけられるエネルギーを感じること一分間。

ようやくエネルギーが落ち着いてきたところで、俺は少し光の透過率を下げた。


「…………」


俺は外の光景を見て……そのシャレにならない惨状に絶句した。

先ほどの60階層とは比にならない破壊力を持つ攻撃によって、闘技場がもはや跡形もない。

もちろん、スライムなど生き残っているはずもなかった。

地面は赤々と、弾けては二次被害、三次被害を撒き散らしている。


「……地上では使えないな」

「……ん」


地上で使えば、それこそ原爆にも匹敵する、万単位の死者が出るような被害が出るだろう。


「……ちなみにこの攻撃、なんか弱点とかあるのか?」

「……ん。火力制限がある」

「……というと?」


このレベルの破壊を生み出しておいて今更制限も何もないような気がするが。


「分離する電撃があまりにも大きすぎると、制御不能になって暴走する」

「……なるほど」


つまり、自爆攻撃と化してしまうということか。

俺はきちんとこの技に弱点があるという話を聞いて、少し安心した。

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