第3章 オークション

プロローグ

「澄火、ついたぞー……」

「ん……」


俺の膝を枕にしてスヤスヤと心地良さそうに寝る澄火を俺は優しく揺り起こす。

日本ダンジョン探索者協会にもうついたので、そろそろ起きる時間である。


「澄火ー、おきろー」


今朝あれだけすやすや心地よさそうに寝ていたはずだが、そんなことにはお構いなしである。


そうこうしているうちに、車は駐車場へと到着した。


「若槻様、星野様。到着いたしました」

「ありがとう」


と、運転席の方から、初老の男性––––運転手の荒島さんが声をかけてくれた。俺はお礼を言って、澄火を強めに揺する。


「ん……」

「……起きたか。行くぞ、澄火」

「ん。りょーかい」


俺は車を降りて、集合場所である会議室の一つへと向かう。

ノックすると、「どうぞお入りください」と中から声をかけられた。


ドアを開けて入ると、会議室の中には初対面の男女2人と、熊川さんがいた。


「いらっしゃい」

「ごぶたさしてます」

「こっちは本部職員の鈴木さんと花見けみさんだよ」

「本部所属総務課職員、鈴木龍馬と申します

「同じく本部所属対外課職員、花見雅と申しますわ」

「で、本題に行くね。君たち、オークションに参加するでしょ?」

「ええ」

「ホテル・グランドクリスマスの3階。そこを、我々が全力で改造して4000人が入れるようにする」


4000?すごい参加人数だ。


「もちろんそれだけじゃなくて、オンライン参加もかなり入るよ。三週間後に迎える当日は、ホテル・グランドクリスマスと、隣のホテル・スターリットワールドも貸し切って関係者を収容する予定」

「……なるほど」

「もちろん、君も泊まってもらうからね。澄火ちゃんとダブルでとっちゃったけどいい?」

「ええ、まあ……」


いつも一緒に寝てるし、特に問題ない。十五歳の男女2人を同じ部屋に指定するという行為の倫理性は気になるところだが、無視できる範囲だろう。


「それじゃあ、決定ね。あとは2人から話があるらしいわ」


そう言って熊川さんは颯爽と去っていった。


「えー、我々からは、一つ秘密クエストを……エルヴィーラ王女の護衛を、あなた方に託したい

「そこで、お願いが二つ……パーティ名の決定。それから、護衛開始日までにある程度の所作を身につけていただきます」

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