第11話 ストーリー
やや支離滅裂な勇者の話と、おそらくは自分たちの都合のいいように改変している長老の話を総合して考えると、だいたい以下のようなストーリーが出来上がる。
51年前、邪神が現れてこの国はパニックに陥った。そこに颯爽と現れたのが超人的存在である「勇者」だ。
邪神の詳細についてはわからなかった。一体どういう見た目なのか、どういう能力を持っているのか、詳しいことは不明だ。
3ヶ月ほどで邪神の討伐に成功した勇者は容姿が醜くなる呪いをかけられてしまった。
邪神がかけただけあって解除することはできなかったその呪いを癒すには……まあ、なんというか女性との性行為が必要だったらしい。
なぜかは俺に聞かないで欲しい。
ともかく、そんな勇者は国を救った対価として365人の処女を要求。(“女を捧げよ”というのは正確には間違いだったことが勇者の発言から発覚)
国はそれを受諾し、毎日1人ずつ処女が送られてきたものの、あまりの容姿の醜さに性行為を全員が拒否。
最初の何人かを勇者の力を生かして無理やり行為に及んだものの、呪いは弱まる気配がなく……それどころか、強くなっていくばかりであった。
どうやら数あるおとぎ話と同じように、呪いを解くには愛情も必要だったようだ。
勇者が第二の邪神となる、あるいは勇者の呪いが周囲に及ぶことを恐れた皇帝、貴族、あるいは性行為を恐れた処女が(この誰かはわからなかった)勇者の暗殺を計画。
帝国に伝わる宝剣を用いて油断していた勇者の背中をぐさりと刺し、勇者は仮死状態になった。
勇者の話によると、処女の1人から寝所に誘われて油断したらしい。
ていうか、長老の話で引っかかったのはこれか。勇者が身投げしたところで自殺なんかできるわけがない。俺だって無理だ。
しかしそれをトリガーとして勇者の身の内に込められていた呪いが帝国全土に対して発動。
モンスターの出現、モンスターの強化、容姿が醜くなる……などなどの呪いの結果、帝国は半ば滅びてしまった……というわけだ。
で、その50年後。
突如現れた––––勇者に倣って颯爽と現れたとでも言っておこうか––––異世界人二名によって呪いの中心部へ攻撃が仕掛けられた。
それにより、仮死状態だった勇者が復活。
今に至る……というわけだ。
「だから、俺にはお前を倒す権利がある」
「えーっと……なんで?」
「無論、世界を救ったからだ!」
……いや、それ俺らに別に関係ないし。
「死ねえ!」
鞘におさまったままの「ムラクモ」で切り掛かってくる勇者。十分ほど戦っていたからか、徐々に勇者のスピードにも慣れてきた。
俺は二刀を納刀し、左腰に差している「紅刀」の鯉口を切る。
––––炎華獄界
勇者の攻撃を避け、抜刀術を放つ。
「て、てめえ……」
それでも生きていた勇者の体には、右腰から左肩までざっくりと刀傷が走っていた。
「許さねえぞ……」
「へえ」
俺はあえて小馬鹿にしたような反応をする。
こいつとの戦いは煽れば煽るだけ有利になるような気がしたからだ。
果たして勇者は俺の予想通りに怒り狂うと、こう呟いた……
「解放」
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