第2部 戦い

第1章 ダンジョン攻略

プロローグ

「うにゃう……」


……暑い。


目を覚ますと、いつものように澄火に抱き枕にされていた。

なんだかんだと気温が上がってきているので、そろそろエアコンなしだと澄火の抱きつきに耐えるのは難しそうである。


俺はアム・レアーを虚空から取り出してエアコンのスイッチを入れ、ついでにタブレットを持ってくる。


「……お」


珍しく、日本ダンジョン探索者協会からメールが届いている。

内容は……ふむ。


俺たちも結構出世したようだ……そんなことが感じられる内容だった。


俺はメールを閉じて、本日の予定を決めるべく日本ダンジョン探索者協会のアプリを開く。

設定しておいたパスを放り込み、探索者専用ページに飛ぶ。


以前にも出てきたこのアプリは、日本中のほとんどの人が入れているアプリである。


ダンジョン適性を持たない一般人には、ダンジョンの場所の一覧や、その状態……すなわち、災害が起こっているかどうかを知らせてくれる。

札幌ダンジョンの災害の時も、周辺の市民にはこのアプリを介して災害発生の警告がなされたはずだ。


そして、ダンジョン適性を持つ俺たち探索者にとっては、データベースの役割も果たしてくれる。

過去にダンジョンに潜った探索者からの報告書を元にした、ダンジョン内の情報。

そして、リアルタイムの探索者の動向情報(序列入りしている探索者の情報は秘匿されている)が閲覧できるのだ。


そしてさらに……


探索者へ仕事––––探索者の間ではゲームになぞらえてクエストと呼ぶのが慣行らしい––––の依頼をすることもできるのだ。


今回俺たちにクエストを出してきたのは、東北第三ダンジョン……「東北」という名前から分かる通り、かなり大きいダンジョンだ。


確認されているだけで軽く30層は超えるらしい。

そんなダンジョンを管理する自衛隊から、30層までのダンジョンの様子の報告書を書いて提出して欲しいというクエストが出されていた。


報酬は300万円。まあ、そこまで高くはない。


俺は片手に羅針盤を出現させる。

この羅針盤も、他のアーティファクトと同じように虚空へしまえる……というようなことを、エルヴィーラ王女から助言してもらったのだ。

今、その羅針盤は特にどこも指していない。羅針盤を回転させると、そのまま針も回転してしまう。


つまり、ピース3の場所はまだわからないというわけだ。


「……ふむ」


で、あれば……このクエストを今日は受けることにしようか。

俺は新幹線のチケットを手早く取り、澄火の拘束からするりと抜け出す。

代わりに犠牲となった枕が、抱きしめられてぎゅむりと形が変わる。


さて、早速朝食の準備をすることにしよう。

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