第11話 検証

さて、まずはどうしようか。


確か、この四つのボール……検証の前に、名前を決めておいた方が良さそうだ。


「澄火、なんか名前の案とかあるか?」

「……んー……デバイス:アム・レアーとか?」


おお。なんだか、古代兵器っぽくてかっこいい名前だ。デバイスというのは、こういう機械の総称案だろう。


「じゃあ、アム・レアーにするか。……とりあえず、これ動かせるのか?」


俺は四つのデバイスのうちの一つに目を凝らす。

その瞬間、俺の中の何かがアム・レアーと繋がったような感覚を得た。


「ん、動いた」

「あ、ちょ、待って……」


あるものは上へ、あるものは右へ、四つのデバイスはそれぞれバラバラに動き出した。


……想像以上に、動かすのが難しい。


最低でも、自分を原点としたそれぞれのの座標を把握しておかないと、絶対にミスってしまう。


その後、澄火の体温を背中に感じつつ悪戦苦闘すること一時間。俺は、なんとかアム・レアーをそれなりに扱えるようになってきた。


まだ気を抜くとあっちへ逸れていったり、ひとりでに回転し始めてしまうが。無意識に扱えるようになるには、結構かかりそうだ。


「さて……」


流石に、この玉の機能が動くだけとは思えない。先ほど「古代兵器」という言葉を使ったが、そう、俺はこれをなんらかの武器だと予測している。


俺はアム・レアーの一つを目の前に移動させ、そっと手に取って観察してみる。

焦茶色の玉で、あちこちに黒いメタリックな線がある。そして、球の一部分にはレンズのようなものが。


「……んー?」


俺は球から手を離す。


そして、とりあえずMPを送ってみることにした。


ぶうん。


そんな音がして、アム・レアーの表面の黒い線が青色に輝く。

そして、俺の視界に着弾点を示すような円形の図形が現れる。


「澄火、これ見えるか?」


俺はボールを回転させて、その図形を動かしてみる。どうやら、アム・レアーのレンズの直前上にあるようだ。

今気づいたが、MPを送ったことで格段に動かしやすくなった。どうやら、本来はこうやって使わなければいけないようだ。


「……ん、何も見えない。何かあるの?」

「ああ、まあな」


俺は慎重にその図形を移動させてから、MPをアム・レアーから解放するイメージをする。


ちゅどん。


一瞬でアム・レアー四機からビームが放たれ、前方の岩を灼いた。


岩がドロドロと溶けている。

結構な威力だ。低階層の魔物なら、一撃で葬れるんじゃないか?

それこそ、澄火がいつもやっているみたいに。


「……ん。すごい」


澄火が耳元でそう囁く。

なんだか俺が褒められてる気がしてゾクゾクと背中が震える。


「澄火のおかげだな」

「……ん。それほどでもない」


澄火はそういうとしゅるりと離れる。俺の背中から温もりが消え去り、ちょっとさびしい気持ちになる。


「ん。帰ろ」

「そうだな」


おそらく、アム・レアーの機能はこれで全部だろう。後は実戦で使うのを磨くだけだ。

俺は無意識のうちにすいっとアム・レアーを虚空に消して、澄火と共に帰路についた。




しかしもちろん、帰れなかった。ダンジョンを出た俺たちを待っていたのは、新たなダンジョン災害の発生だった。

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