エピローグ

「うまいな」

「……ん」


ダンジョンアイテムの換金を終え、新幹線を待っている間。

俺たちは山梨の名物、ほうとうに舌鼓を打っていた。


一人前でも結構な量があるが、お腹が空いた俺たちは2人で6人前を頼んでいる。


「今日の稼ぎは全部で400万。凄まじいな」

「ん。でも、この前ほどじゃない……」

「そりゃ、いくつか売ってない品があるし……それに、前のは慰謝料も込みだからな。そんなもんだろ」


一つ目の皿を空にし、俺はもう一つの方へと手をつける。なんと熊肉が使われているらしい。

結構高かったが……まあ、自分へのご褒美というやつだ。


「……ん」


と、スマホにメッセージが届く。


俺のメッセージアプリの連絡先を持っているのは、熊川さんと家族のみ。


家族とは、俺が受験に失敗したせいで関係が悪化しているため連絡が来る可能性はほぼゼロである。

つまり、連絡をよこしてきたのは熊川さんの可能性が高い。


少し行儀が悪いとは思いつつ、俺はメッセージを開く。


熊川 こんばんは、今日もなかなかの稼ぎだったみたいだね?

若槻 ええ、お陰様で

熊川 そんな君に朗報。今回の一件の報酬を入れておいたよ。もちろん、口止め料込みね


俺はその場で口座を確かめてみる。

すると、ポーンと一億円が振り込まれていた。


熊川 二人合わせて二億円。確認してくれた?

若槻 はい。ですが、こんなに貰ってしまっていいので?

熊川 いいってことよ。あのまま行くと、結構やばい事態になってたからね。揉み消すこともできないくらいの死者が出ていただろうし

若槻 なるほど……ありがたくもらっておきます

熊川 そうしたまえ。じゃね


「澄火、今日の一件の報酬が支払われたぞ」

「ん、いくら?」

「二人合わせて二億」


一気に今日の報酬が倍増……いや、51倍増だ。


「……ん。損害賠償とかはなくてよかった」


……考えてみれば、澄火の雷によって結構な惨状になっていた。

確かに、損害賠償とかになってもおかしくはなかった気がする。


澄火じゃないが、結果おーらい……というやつか。


「……若くん」

「……ん?」


澄火はじーっとこちらを見つめてきたかと思うと、


「んーん、なんでもない」


と首を振った。


「……心配しなくても、俺たちはパートナーだ。澄火が離れて欲しいと思うまで、俺はそばにいる」

「……ん。ありがと」


澄火はそういうとにぱーっと笑った。

その笑顔は、とても魅力的だった。

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