エピローグ

「それで、君たちはこれからどうするつもりなんだ?」


と、水川さん。


「そうですね……うーん」


俺が回答を迷っていると、澄火が先に回答を始める。


「とりあえず、お金稼いで金持ちになるのが目標」

「そうね……あなたの目標は、すぐにかなうと思うわよ」


イレギュラーのせいとはいえ、今日だけで3億円稼いだしな……

10億くらいなら、すぐに稼げそうだ。


「俺は……最強を目指してみようと思います」

「……ほう?」


水川さんが面白いものを見るような目になる。


「今日ダンジョンにもぐってみてわかりました。ダンジョンはイレギュラーの多発する、非常に危険な空間だと」

「…………そうだな」

「そして、それが日常のすぐそばにあることも」


今までのほほんと暮らしてきたことに、俺はかなりの恐怖を覚える。

あの赤鬼は、決して迷宮の中で最強の魔物ではないはずだ。そんな魔物がすぐそばにいるよな環境で、暮らしていた、ということに。


「俺は、強くならなければならない。自分の身を守るためにも……他の人を守るためにも」


そして、それはステータスを持たない一般人にとっては特に脅威となりうる。

善人ぶるわけではないし、力には責任が伴うなどという暴論をまくし立てるつもりはないが……それでも、俺は守りたいと思う。


それが、結果的には俺のためにもなるはずだ。


「……そうか。立派なことだ」


水上さんがうんうんとうなずく。そして、ごそごそとカバンを漁った。


「そんなお前にこれを授けよう」


取り出したのは、二振りの刀。

水上さんは、しゃん、と白木の鞘から一振りを抜き放つ。ほのかに青みがかった輝きを持つ刀。刀身には、不思議な紋様が描かれている。


あの赤鬼が持っていた刀だと言うことに、俺はすぐに気づいた。


「これを……俺に?」

「ああ」


水上さんは刀を納刀すると、俺の手にぽん、と二振りの刀をおいた。


「探索に必要だろ?」

「まあ……はい」


正直、使いこなせる自信はないが……俺は貰っておくことにした。


ダンジョンでの戦闘でドロップしていた刀とは、一線を画す性能をしている二刀。


ダンジョンの探索をし、ステータスを高める中で間違いなく役に立つはずだ。


「ありがとうございます」

「まあ、いいってことよ……それで、君たちはもう帰るか?」

「俺はそうしようかなと」


傷も癒してもらったみたいだし、病院にいる意味はもうない。


「じゃあ、私も」


と、澄火も同調した。


「そうか。まあ帰れないんだがな」

「…………はい?」

「いろいろ検査もしなきゃいけないし……もし探索者になるなら、手続きが必要だぞ」


あー……


「面倒だろうが、頑張ってくれ」


水上さんはそういうと、ぽんと俺の肩に手を置いた。

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