グラン&グルメ 小話集

えりまし圭多

【1巻発売】十日後にやらかすグラン&巻き込まれるアベル【カウントダウン】

第1話◆十日後にやらかすグラン&巻き込まれるアベル――一日目

 男は時として、それが無謀だと思っていてもやり遂げたくなる時がある。

 それば浪漫。

 それは夢。

 そこに山があれば登る。理由なんてない、それが男ってやつだ。


 そう、そこにスライムがいるから弄る。それがスローライフってやつだ。


 いや、この際スローライフは関係ない、ただスライムが弄りたいだけだ。

 明確な目的と夢と浪漫を持って。


 スライムは前世では空想上の生き物だった。

 だが前世の人間達の想像力は豊かだった。実在しないスライムという生き物を、ありとあらゆる創作に登場させた。

 初心者でもワンパンで殺せる最弱キャラとして扱われることも多かったが、時には物理耐性備えた嫌らしいキャラのこともあったし、最弱と見せかけて最強まで進化するキャラのこともあった。

 そしてえっちな話にも度々登場していた。そうえっちな話にも。えっちな話にも。

 大事なことなので何度でも言う。えっちな話にも登場していた。


 今世、当たり前のように身近にスライムがいる世界。

 そんな世界に慣れきった今では、なぜ前世ではあのような性癖が一定数から支持されていたのかと思う。

 だが前世でえっちなスライムは、わりと人気のあるジャンルだったと思う。思う。

 いや、俺はそういう性癖ではないから知らないけれど、ちょいちょいそういうモノを見かける機会があっただけだ。

 見ようと思って見たんじゃなくて、たまたま見ただけだから!!

 そう、広告! ネットってやつの広告でよく出てきていたのだ! えっちなスライムが出てくる物語の広告が!!

 何度も何度も出てくるからすごく気になるんだよ!!

 別にそういう性癖ではないけれど、何度も見せられると気になるだろ? ろ?? ろ???

 そりゃ、気になりすぎてちょっとそういう本を買ったこともゴニョゴニョ……。

 や、気になったから買っただけで、決してそういう性癖だから買ったわけではーーーー!!


 ……少し落ち着こう。


 そう。そうだ、その前世で見たスライムの登場するえっちな本でよく見かけた不思議なスライム。


 服だけを溶かすスライム。


 女の子の体は溶かさず服だけを溶かす、なんとも都合のいいスライム。

 スライムが実在する今世でもそんな都合のいいスライムは未だ見たことがない。


 本当に存在しない?


 まだ見つかっていないだけでは?


 誰も作ろうとしなかっただけで、実は作ることができるのでは?




 俺はスライム生産者としてその謎を確かめるため、スライムの捕獲のため森へと向かった。

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