山奥から聞こえてくる鐘の音

淵海 つき

プロローグ

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 東京駅から京浜東北線で上野駅へ。そこから常磐線に乗り換えて、牛久を越えた先に茨城県日立市日立駅がある。



 8月のお盆休み、帰省のため、小学生の僕は母親と一緒に電車に乗って、茨城県日立市日立駅にやってきた。



 電車を降りると、目の前に美しい山々がひろがる。新鮮な光景に僕はテンションがあがった。

 同時に遠くから聞こえる鐘の音を不思議に思った。



 母親にたずねるも、そんな鐘の音は聞こえないという。

 きっと電車の走る音が山に反響して、鐘の音に聞こえるのだとたしなめられる。



 それからおばあちゃんと合流してタクシーで実家に向かう。

 タクシーの中で、僕はおばあちゃんに鐘の音のことを聞いてみた。


 それを聞いたおばあちゃんは心底驚いた。



「もう今の若い人は知らないと思うけど、昭和40年頃までは、この日立市も銅の鉱山で賑わっていたのよ。日本の経済の基盤だった。でもね、この鉱山には、鐘の音にまつわる不吉な話があってね。もし鐘の音を聞いてしまったら……」



 その言葉を皮切りに、おばあちゃんは鉱山と鐘の音にまつわる、恐ろしくて、不気味で、悲しい話を語りはじめた──。

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