第20話 かけがえのない時間 ※ハルトヴィヒ視点
それはとても楽しくて、何事にも代えがたい大切な時間だった。
「こういうのは、どうだろうか?」
「なるほど。それは、試してみる価値がありますね!」
シャルロッテ嬢と一緒に、最近ますます大盛況らしい菓子店シェトレボーの商品を味わいながら、彼女と意見を交わし合う。
感じたことや、思いついたことを伝える。するとシャルロッテ嬢は目を輝かせて、俺の話を熱心に聞いてくれた。
「俺のような男の意見なんて、参考になるかな?」
「はい、とても! 私には、思いつかない視点からの意見ばかりですよ」
そう言ってもらい、とても嬉しくなる。役に立って良かったと、そう思った。
以前、自分で菓子店を開いたことがあった。自分の理想を生み出すために、優秀なスタッフを集めて、設備を整えた。
けれど、それは失敗した。俺の思うような形に仕上げることが出来なかったから。指示の出し方が悪かったのか、上手く伝わらなかったのか。
甘い物、菓子は大好きだけれど、自分で生み出すのには向いていないのだろうと、そう思って諦めた。それからは、別の方法で菓子作り等に関わろうと考えた。
世界各地にある甘い物に関する事業、商品を調査して、気に入った物を発見したら支援する活動を始めた。
今までに、様々な関係を築いてきた。甘いものを取り扱う商人、果樹農家、砂糖の製造業者に菓子店の店主、他にも色々と。そちらの活動は上手くいって、満足できる成果が出せていた。
そして、菓子店シェトレボーの情報を入手し、シャルロッテ嬢と出会った。
彼女との関係を深めて、とうとう帝国に来てもらえた。そして何故か今は、彼女に依頼されて菓子店シェトレボーの商品開発に関わることに。
こんな事になるとは、予想していなかった。だけど、とても嬉しい状況だ。だから俺は、全力で取り組む。前のように失敗しないよう、気を付けながら。
思いついた意見を、次々と提案していく。その度にシャルロッテ嬢が笑顔を浮かべてくれるから、それが本当に楽しかった。
意見を聞いてシャルロッテ嬢が理解し、それを形にしてくれた。俺の理想の形に。いや、理想以上に仕上げてくれていた。まさに、俺が求めていたものはコレだ。
以前は出来なかったことが、今は出来ている。失敗しないのは、シャルロッテ嬢が理解してくれるから。彼女が居なければ、再び失敗していたと思う。
これから菓子店シェトレボーで売り出される新たな商品の開発に、俺も関わらせてもらった。出来上がった新たしい商品を見て味わい、感動した。自分が関わっていることが誇らしくなった。
そしてまた、次の商品開発が始まる。シャルロッテ嬢と意見を交わし合う、楽しい時間。いつまでもこのまま、楽しい時間が続けばいいのに。
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