第19話 決戦前夜?
一時間後。
建物の中はフィーバー状態だった。
「本当の天見優依だわ!」
と、全員舞い上がってしまっている。
「悠さんが優依さんの双子の弟って、生まれてから一番驚きました」
魔央もはっきりと言い切った。
まあ、それはそうだよなぁ。
何だかよく分からない僕と、タイアップ商品が億を超える存在が双子って言われても誰も信じられないだろう。
正直、僕自身も全く信じられないし。
しかし、優依から見て僕は双子の弟だけど、僕から見たらどうなるんだ。
双子の”あぬ”なんて言ったらさすがに「こいつは頭がおかしいのか?」って思われそうだし。
でも、知名度の差からいけば、主は優依で、従は僕だから、そんなことが話題になることはなさそうだ。気にするだけ損なのだろう。
「優依様は尊過ぎて、もう見ているだけで泣きそうになるであります」
木房さんが半泣きで拝んでいる。同じ七使徒という間柄のはずだけれど、ここまで違うのかな。あと、木房さんは勝ち組大嫌いなはずだけど、このクラスだと許してしまうのだろうか?
「あの切れ味鋭いダンスはどこで習ったのでしょうか? 一説に伝説の韓流ダンサーから教わったと聞いたのですけれど」
四里は独占インタビューのつもりか、録音しているよ。
「いや、あれは……マイケル・ジャクソンさんから教わりました」
「マイケル・ジャクソン!?」
『私が見つけたのよ。優依ちゃんの後ろで、マイケル・ジャクソンの霊が「この子に僕の持ちうるものを全て伝えたら、歴史上最高のエンターテイナーになれるのに……」って成仏しきれずに呟いていたの。マイケルとのレッスンを始めたら、プレスリーやアレサの霊も集まってきたのよ』
優依、まさかのイタコ体質?
「アメリカでの修行は楽しかったです。マイケルさんに歌やダンスを教わって、ジミ(ヘンドリックス)さんからギターを教わって、キャサリン(ヘップバーン)から俳優のあるべき姿を教わったんです」
『日本はどうしても歌いやすい曲が評価されるから簡単な歌が多いけど、海外向けには難易度の高い歌が多いのよ。さて……』
千瑛ちゃんが、話題を切り上げる。
『そんな話はいつだってできるわ。今は明日のことが大事なの。アル・ヤタハカムをぶっ潰すために優依ちゃんには休んでもらうわね』
「うん。来る途中で聞いていたよ、千瑛ちゃん」
二人は分かりあっているようだけど、僕達は全く分かっていない。
『おやすみ、優依ちゃん』
「うん。おやすみ、千瑛ちゃん」
ともあれ、優依は寝室に向かったようだ。後には僕達が残される。
「一体、何をするつもりなの?」
『ワリドアラビアの超富豪達は、アル・ヤタハカムというエンターテインメントを通じて、世界を支配しようとしているわ。だから、彼らがそこまで価値のあるエンタメではないと世界に知らしめればいいのよ』
「どうやって?」
『明日、彼らは新国立競技場で親善試合をするわ。そこに優依ちゃんのゲリラライヴをかちあわせるのよ』
「サッカーの試合に、ゲリラライヴを!?」
『そうよ。既に周囲の道路はおさえて、関係各所の許可も得ているわ。信濃町駅から神宮球場方面に歩き出して、ハーフタイムに国立競技場周囲に到着。客も選手達も引きずり出すわよ』
「えぇっ、その試合って、世界にテレビ放映されているんだよね? そんなことになったら」
客も選手もいない後半戦?
それ、完全な放送事故になるんだけど。
『私の計画する「塩水と優依ちゃん」のためにも、真のエンターテイナーは優依ちゃんしかいないということを証明しなければいけないのよ』
そういえば言っていたね、そんな計画。
何気にワリドアラビアのやり口に怒っていたんだね、千瑛ちゃん。
でも、やり方が容赦なさすぎるよ、千瑛ちゃん。
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